王太子妃クラリスと王子たちの絆【完】

mako

文字の大きさ
41 / 85

アルフレッド執務室軟禁事件

しおりを挟む
この日、アルフレッドは朝からクラリスの執務室に軟禁されていた。

クラリスは淡々と説教を始める。

『アルフレッド様、よろしいでしょうか?令嬢たちには表の顔と裏の顔がありましてね…これを見極めるのが至難の業なのです』

アルフレッドは別に令嬢を見極める目が無いわけではない。端的に言えば、興味が無いだけである。

『誰でも一度や二度の失敗はございます』

『まず、貴族令嬢ではなく王女の場合ですが、これがまたなかなか厄介なのです。その国で絶対的権力のもと育てられていますからね…』

腕組みして考え込むクラリスを、アルフレッドは不思議そうに見つめる。
そこへテオドールが執務室に戻ってくる。

テオドールはアルフレッドに急いで礼を取るが、アルフレッドは表情ひとつ変えず顎を突き出し、テオドールをデスクに促す。

…執務にかかれ。

テオドールはアルフレッドの心の声を感じ取り、大人しく席につく。

『そうそう、良い例えがございます。殿下はご存知かどうかわかりませんが、パナン王国にエリザベスという王女がおりましてね?』

テオドールは思わず口に含んだお茶を吹き出しそうになるが、アルフレッドは顔色ひとつ変えず、クラリスの話に耳を傾ける。

『あの美貌とスタイルが放つオーラ。揃いすぎてますからね、彼女が口角を少し上げて微笑むだけで、見る者は思わず心が躍るわけです。はい、殿下は縁もゆかりも無い方ですからご安心を』

テオドールはアルフレッドの顔色をうかがう。

『寡黙…そう、この寡黙さがまた厄介なのです。王女のオーラを助長させ、無駄なことを話さないからこそ、少しでも口を開くと聞いた者は錯覚に陥るわけです。ですが、実際は頭がちょっと…いや、かなり弱いようでございますの』

テオドールの説明に、クラリスもアルフレッドも困惑。

『一方の私。一応リントン第1王女ではありますが、あの絶世の美女とは雲泥の差でございます』

『確かに…』

クラリスは少し顔をしかめ、テオドールに反論。

『王女の風格こそございませんが、しかし!私には心があります。民と共に生きる覚悟がありますの。それは見た目ではわかりませんでしょ?』

しかしテオドールは淡々と一言。

『無いな』

クラリスは悔しそうに咳払いする。

『煩い!…ゴホン。殿下、よろしいでしょうか。王女というのは、たいてい頭空っぽな世間知らずが多いものです。だから、パナン王国のエリザベス様も特別ではなく、どこの王女も大して変わりませんの。虫に刺されたと思って忘れることです』

ここまで黙って聞いていたアルフレッドが口を開く。

『それを言うなら、犬に噛まれたと思ってではないか?』

テオドールは肩を震わせ笑いを堪える。

『…そうとも言えますわね。とにかく!私が言いたいのは、失恋を癒すには次の恋ですわ、殿下』

アルフレッドは冷静に返す。

『別に私は失恋などしておらんぞ。エリザベスと話したこともほとんどないし』

クラリスは固まる。テオドールは笑いを必死に堪える。

アルフレッドはソファから立ち上がり、静かに告げる。

『クラリス、君の話は理解した。礼を言う』

にこりと手を挙げ、執務室を後にする。

クラリスは息を大きく吐き、ソファへ飛び込む。

『ひやぁ…緊張したわ~』

テオドールはため息をつき、頭を抱える。

…勘弁してくれよ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛する人は、貴方だけ

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。 天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。 公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。 平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。 やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。

[完結]私を巻き込まないで下さい

シマ
恋愛
私、イリーナ15歳。賊に襲われているのを助けられた8歳の時から、師匠と一緒に暮らしている。 魔力持ちと分かって魔法を教えて貰ったけど、何故か全然発動しなかった。 でも、魔物を倒した時に採れる魔石。石の魔力が無くなると使えなくなるけど、その魔石に魔力を注いで甦らせる事が出来た。 その力を生かして、師匠と装具や魔道具の修理の仕事をしながら、のんびり暮らしていた。 ある日、師匠を訪ねて来た、お客さんから生活が変わっていく。 え?今、話題の勇者様が兄弟子?師匠が王族?ナニそれ私、知らないよ。 平凡で普通の生活がしたいの。 私を巻き込まないで下さい! 恋愛要素は、中盤以降から出てきます 9月28日 本編完結 10月4日 番外編完結 長い間、お付き合い頂きありがとうございました。

ループした悪役令嬢は王子からの溺愛に気付かない

咲桜りおな
恋愛
 愛する夫(王太子)から愛される事もなく結婚間もなく悲運の死を迎える元公爵令嬢のモデリーン。 自分が何度も同じ人生をやり直している事に気付くも、やり直す度に上手くいかない人生にうんざりしてしまう。 どうせなら王太子と出会わない人生を送りたい……そう願って眠りに就くと、王太子との婚約前に時は巻き戻った。 それと同時にこの世界が乙女ゲームの中で、自分が悪役令嬢へ転生していた事も知る。 嫌われる運命なら王太子と婚約せず、ヒロインである自分の妹が結婚して幸せになればいい。 悪役令嬢として生きるなんてまっぴら。自分は自分の道を行く!  そう決めて五度目の人生をやり直し始めるモデリーンの物語。

『やりたくないからやらないだけ 〜自分のために働かない選択をした元貴族令嬢の静かな失踪〜』

鷹 綾
恋愛
「やりたくないから、やらないだけですわ」 婚約破棄をきっかけに、 貴族としての役割も、評価も、期待も、すべてが“面倒”になった令嬢ファーファ・ノクティス。 彼女が選んだのは、復讐でも、成り上がりでもなく―― 働かないという選択。 爵位と領地、屋敷を手放し、 領民の未来だけは守る形で名領主と契約を結んだのち、 彼女はひっそりと姿を消す。 山の奥で始まるのは、 誰にも評価されず、誰にも感謝せず、 それでも不自由のない、静かな日々。 陰謀も、追手も、劇的な再会もない。 あるのは、契約に基づいて淡々と届く物資と、 「何者にもならなくていい」という確かな安心だけ。 働かない。 争わない。 名を残さない。 それでも―― 自分の人生を、自分のために選び切る。 これは、 頑張らないことを肯定する物語。 静かに失踪した元貴族令嬢が、 誰にも縛られず生きるまでを描いた、 “何もしない”ことを貫いた、静かな完結譚。

【完】瓶底メガネの聖女様

らんか
恋愛
伯爵家の娘なのに、実母亡き後、後妻とその娘がやってきてから虐げられて育ったオリビア。 傷つけられ、生死の淵に立ったその時に、前世の記憶が蘇り、それと同時に魔力が発現した。 実家から事実上追い出された形で、家を出たオリビアは、偶然出会った人達の助けを借りて、今まで奪われ続けた、自分の大切なもの取り戻そうと奮闘する。 そんな自分にいつも寄り添ってくれるのは……。

【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした

ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。 彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。 そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。 しかし、公爵にもディアにも秘密があった。 その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。 ※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています ※表紙画像はAIで作成したものです

悪役令嬢は六度目の人生を平穏に送りたい

柴田はつみ
恋愛
ループ6回  いずれも死んでしまう でも今回こそ‥

処理中です...