王太子妃クラリスと王子たちの絆【完】

mako

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王太子と地下室の危機

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ヨハネスが出迎えにエントランスまで来ると、アルフレッドは仁王立ちでこちらを見据えていた。

「どうしたの、兄上。きちんと執務はしておりますから、どうぞご安心ください!」

にこやかに声をかけるヨハネスを、アルフレッドは無言でじっと見つめ返す。

「まぁ、ここでは何ですから…中でお茶でもいかがですか?それとも視察の途中ですか?」

外に控える騎士の人数をちらりと確認するヨハネスに、アルフレッドはすぐに核心を突いた。

「王太子妃はどこだ?」

ヨハネスは目を丸くして首を傾げる。

「姉上もこちらにおいでですか?」

アルフレッドは間髪入れず言葉を重ねる。

「どこだ?どこにやった?」

周囲を見渡し、ヨハネスの側近を鋭く睨む。表情豊かな側近たちは、その視線に一瞬身を固める。

「ほぉ、知っておる表情だな。ならば言わせてやろうか?」

アルフレッドは剣を手に取り、緊張感を漂わせる。

「お待ちください!いくら王子でもやり過ぎではありませんか?私も王子として見逃すわけには…大切な側近ですから」

ヨハネスはアルフレッドを制し、真剣な眼差しで問いかけた。

「ならばお前が答えよ。王太子妃をどうする気だ?自分の行いが分かっているのか?」

「だから、先程から言ってますが…知りません!言い掛かりならお帰りください!」

アルフレッドは小さく息を吐き、掌から小さな花びらを差し出した。

「これは…?」

「今週、クラリスに贈った花です」

ヨハネスは鼻で笑い、驚き交じりに言う。

「は?兄上は姉上に花を贈ってるのですか?」

アルフレッドは少しバツの悪そうに言葉を濁す。

「そんな事はよい」

ヨハネスは興味深そうに顔を寄せた。

「それで?その花びらで?そんな馬鹿な…侍従らも花を飾ってますし、私は興味もありませんけど?」

アルフレッドは眉間に皺を寄せ、低く告げる。

「この花は店で手に入るものではない。だから、ここにいる者が持つことはできぬ」

語りながら外の騎士らを室内に入れると、彼らは一斉に流れ込む。

「待て!」

ヨハネスの声に騎士たちは一瞬立ち止まり、アルフレッドを見た。

「この者たちは、私の一言でここを捜索することができる」

「そんな勝手は許されません!」

アルフレッドは冷たい視線をヨハネスに向け、言い放つ。

「これは王太子の命令だ。ここでの指揮は私に一任されておる」

ヨハネスは目を見開き、驚きで声を失う。

「アル兄は兄上の命令に従うのか?」

アルフレッドは不思議そうにヨハネスを見て言う。

「何も不思議なことはないだろ。王太子に仕えるのは私だけではない、お前も同じだ。この国の者すべて、同じだ」

「よいのですか?兄上に何から何まで奪われてきた人生で…兄上はこの国の第一王子なのですよ?」

アルフレッドは少し寂しげに答える。

「ヨハネス…。フリードリヒはこの国の正統な王太子だ。正妃の生んだ王子。それが、この国で王太子である条件だ。生まれた以上、それがすべてだ。私はフリードリヒを恨んだことはない。むしろ、フリードリヒの方が私を恨んでいたかもしれぬ」

「そんな事はございません、兄上」

後方からフリードリヒが姿を現し、騎士たちの列を開けながら近づく。

「兄上!」

ヨハネスは目を見開き、観念したかのように座り込む。

フリードリヒは側近に向かい、穏やかだが王太子としての厳格な声で命じた。

「クラリスのもとへ案内せよ」

側近たちは一瞬も迷わず答える。

ヨハネスは遠くを見つめ、呟いた。

「…もう無理だよ」

アルフレッドはヨハネスの肩を揺すり、正気に戻させる。

「何をしたのだ、ヨハネス!」

「南国の媚薬を飲ませ、地下室の鉄格子にテオドールと入れている」

その言葉に、アルフレッドとフリードリヒは顔を見合わせる。即座に側近たちと共に二人のもとへ急いだ。
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