王太子妃クラリスと王子たちの絆【完】

mako

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王族夜会の観察者たち

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フィリップスの悩みとは裏腹に、王子たちが揃っていることにはメリットもあった。風通しが良いため、意思の疎通もスムーズで、物事が滞りなく進むのである。

この日は、明日に迫った他国王族を迎える夜会の最終確認に余念のない王子たち。リストを並べ、最終的にフリードリヒの一言で会の内容は決まった。

「では、これでいこう。よろしく頼む。」

アルフレッドとヨハネス、そして彼らに従う側近たちは大きく頷き、王太子執務室を後にした。

夜会は盛大に執り行われ、クラリスも挨拶を終えると、テオドールがそっと声をかける。

「そろそろですか?」

普段ならクラリスはこのあたりで会場を後にする。しかし今宵は――

「う~ん、もう少し居ようかしら。」

少し疲れたのか、クラリスは壁際に背を向け、花のように静かに立って会場を見渡した。肩を並べるテオドールも、正面にいるアルテマ王国王太子を観察しながら、ぽつりと呟く。

「王子様ね…。見た目だけって感じですが…ってか、あれこそペラッペラだけど…」

クラリスは驚きと共にテオドールを見上げた。

…何で知ってる?

アルテマ王国王太子とは、クラリスがランズ王国に来る前に留学していた国の一人である。軽くフィリップスには話したが、国名まで話すことはなかったはず。

「…あ、あれは寡黙な王太子の方か…こちらは確かにオーラが半端ない。流石、氷の王子と呼ばれるだけあるな。」

…?

話してもいない婚約者候補を次々と言い当てるテオドールを、クラリスは怪訝そうに見上げる。

「ねえ、わたくしの歴史についての本でも発売されてるの?」

テオドールはニヤリと笑い、クラリスを見下ろした。

…ったく嫌味な男ね。相変わらず。

二人で人間観察をしていると、クラリスは視線をまっすぐ前に据え、口を開いた。

「テオ、視線を感じるわ。」

テオドールも前方に目線を送る。

「いつからですか?」

「確信したのはさっきよ。でも間違いない。」

テオドールは少し考え、静かに決断する。

「今宵はこれまでにいたしましょう。王族エリアまでお送りします。」

フリードリヒに目配せし、テオドールはクラリスを王族エリアまで送り届ける。

「後はこちらにお任せ下さい。」

扉を開けた衛兵を通し、クラリスを送り出すと踵を返して去った。

王族エリアに入ったクラリスは、ふっと息を吐き、私室へ戻ろうと歩き出す。しかし長い廊下のテラスで、先ほど会場でテオドールが観察していた氷の王子、ガルフ王国王太子――ミケルが夜風に当たって立っていた。

…え?なんで?

クラリスは一瞬立ち止まり、驚きながら声をかける。

「殿下、ここで何を?」

ミケルは静かに振り返り、口角をわずかに上げた。

「姫、久方ぶりですね。」

…?久方ぶりって…話したことありましたっけ?

「姫、私は貴女の婚約者候補であったはずですが?」

確かにその通り。クラリスは軽く驚き、ミケルを見上げる。

「何がいけなかった?どこがランズ王国王太子に引けを取っていた?」

氷の王子は淡々と、復習するかのように問いかけてくる。

…えっと?

混乱する頭を整理するように息を吐き、クラリスは辺りを見渡す。

「殿下、ここは王族エリアです。貴方もその意味がお分かりでしょう?さぁ、早く見つかる前に出て下さい。」

目の前のミケルをここから追い出すことだけに集中する。

一人になったクラリスは、初めて聞いたミケルの問いかけに改めて首を傾げる。

…今頃どうした?

疲れた体を引きずりながら、クラリスは私室へ戻って行った。
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