52 / 85
王族エリアでの駆け引きと予期せぬ告白
しおりを挟む
「おやおや、こんな所で立ち話ですか?それならば、ゆっくりとお話ししましょう。」
ミケルの後方から、フリードリヒがフィリップスとテオドールを連れてゆっくりとこちらに向かってくるのが見える。少し離れた後方にはアルフレッドとファビウスの姿も確認できた。ミケルは振り返り、柔らかい笑みで応じる。
「これはこれはフリードリヒ殿。あっ、失礼。私はランズ王国第3王子が姫を狙っていると極秘に聞いておりましたので、こうして姫をお守りしている次第です。」
そう言うとミケルは騎士たちに一歩下がるよう合図した。一斉に剣が空を切る音が響く。
フリードリヒは隣の部屋の扉を開き、ミケルを中へ促した。
「で?今回はまたどうやって?まさか、この白昼に迷われたのですか?」
ソファへ座るよう促しつつ尋ねるフリードリヒに、ミケルは冷静に答える。
「訳あって姫を連れ戻さなくてはならなくなったのです。姫と話をしようと探していたら、たまたまあの入口と出会った、というわけです。」
…だからって王族エリアに入っていいのか?
テオドールはあからさまにミケルを睨む。
「とにかく、二度とここには入らないこと。必要なら、貴国の入国も禁じます。その代わり、姫を返して頂きたい。」
…は?姫って私のこと?
クラリスは思わず目を見張る。
「そもそも返すも何も、クラリスはガルフ王国の所有物ではないはずですが?」
「姫は、リントン姫は私の婚約者候補であったのだ。」
…確かに。
「…それならば、私もですか?」
フリードリヒは落ち着いて話す。
「そうですが、違います。我が国は段取りをきちんと取り、リントン王国に何度も話を持ちかけていました。リントン姫の婚約者を決める留学も、形式上のものだったのです。」
…そうなの?
クラリスは他人事のように頷き、耳を傾ける。
「結果、形式だけではなかったのですか?」
フリードリヒは掌をひらひらさせ、ミケルに問いかける。
「ランズ王国はリントン姫が必要なのですか?」
フリードリヒは真っ直ぐミケルを捉えた。
「…別に。」
クラリスは肩をガクッと落とす。確かに政略結婚。ランズでもガルフでも同じこと。かつてクラリスもガルフ王国に嫁ぎたいと思った時期はあったが…今となっては?
フツフツと湧き上がる怒りを抑えるクラリスを横目に、フリードリヒは言葉を続ける。
「ならば話は早い。代わりと言っては何ですが、貴国に有益な姫を充てがうことを約束します。」
立ち上がろうとするミケルをフリードリヒは制す。
「リントン姫は別にどうでもいい。でもクラリスは渡せない。彼女は私の妻だから。」
ミケルは怪訝そうにフリードリヒを見返す。
「だから政治的に我が国はリントン姫は必要ない。しかし、ガルフ王国には必要…それとクラリスがどう関係する?彼女は今やランズ王国王太子妃。誰もが知る事実だ。それでもリントン姫が必要なら、まだリントンに姫はいるのでは?」
フリードリヒがクラリスに視線を送る。
「まぁ…居るには居ますが。」
「だそうだよ?」
フリードリヒはにっこり笑う。
しばらくの沈黙の後、口を開いたのはクラリスであった。
「ミケル殿下、貴方は何を企んでおられるのですか?」
…
「そもそもおかしいではありませんか?確かに私はガルフ王国に留学しました。しかし、一度もご一緒したことはなく、殿下は私を知りもしなかったはずです。それを今になって…。
それに、今問題なのは殿下が王族エリアに無断侵入したことです。話をはぐらかすために私を利用するのはお止めください。」
「違う!」
ミケルは即座に否定する。
「逆だ。王族エリアにいたことを隠すためではなく、姫を連れ帰るためにここにいたのだ。頼む…分かってくれ。私には姫が必要なのだ。」
公開プロポーズのような言葉に、一同は驚愕する。
「違うよね?私にはじゃなく、我が国には、でしょう?」
現れたのはリントン王国王太子、ミハエルであった。
「お兄様!」
驚いたクラリスは思わず立ち上がり、声を上げる。
…リントン王国まで無断侵入するなんて。
クラリスはオロオロとフリードリヒを見た。
フリードリヒはにっこり微笑むだけだった。
ミケルの後方から、フリードリヒがフィリップスとテオドールを連れてゆっくりとこちらに向かってくるのが見える。少し離れた後方にはアルフレッドとファビウスの姿も確認できた。ミケルは振り返り、柔らかい笑みで応じる。
「これはこれはフリードリヒ殿。あっ、失礼。私はランズ王国第3王子が姫を狙っていると極秘に聞いておりましたので、こうして姫をお守りしている次第です。」
そう言うとミケルは騎士たちに一歩下がるよう合図した。一斉に剣が空を切る音が響く。
フリードリヒは隣の部屋の扉を開き、ミケルを中へ促した。
「で?今回はまたどうやって?まさか、この白昼に迷われたのですか?」
ソファへ座るよう促しつつ尋ねるフリードリヒに、ミケルは冷静に答える。
「訳あって姫を連れ戻さなくてはならなくなったのです。姫と話をしようと探していたら、たまたまあの入口と出会った、というわけです。」
…だからって王族エリアに入っていいのか?
テオドールはあからさまにミケルを睨む。
「とにかく、二度とここには入らないこと。必要なら、貴国の入国も禁じます。その代わり、姫を返して頂きたい。」
…は?姫って私のこと?
クラリスは思わず目を見張る。
「そもそも返すも何も、クラリスはガルフ王国の所有物ではないはずですが?」
「姫は、リントン姫は私の婚約者候補であったのだ。」
…確かに。
「…それならば、私もですか?」
フリードリヒは落ち着いて話す。
「そうですが、違います。我が国は段取りをきちんと取り、リントン王国に何度も話を持ちかけていました。リントン姫の婚約者を決める留学も、形式上のものだったのです。」
…そうなの?
クラリスは他人事のように頷き、耳を傾ける。
「結果、形式だけではなかったのですか?」
フリードリヒは掌をひらひらさせ、ミケルに問いかける。
「ランズ王国はリントン姫が必要なのですか?」
フリードリヒは真っ直ぐミケルを捉えた。
「…別に。」
クラリスは肩をガクッと落とす。確かに政略結婚。ランズでもガルフでも同じこと。かつてクラリスもガルフ王国に嫁ぎたいと思った時期はあったが…今となっては?
フツフツと湧き上がる怒りを抑えるクラリスを横目に、フリードリヒは言葉を続ける。
「ならば話は早い。代わりと言っては何ですが、貴国に有益な姫を充てがうことを約束します。」
立ち上がろうとするミケルをフリードリヒは制す。
「リントン姫は別にどうでもいい。でもクラリスは渡せない。彼女は私の妻だから。」
ミケルは怪訝そうにフリードリヒを見返す。
「だから政治的に我が国はリントン姫は必要ない。しかし、ガルフ王国には必要…それとクラリスがどう関係する?彼女は今やランズ王国王太子妃。誰もが知る事実だ。それでもリントン姫が必要なら、まだリントンに姫はいるのでは?」
フリードリヒがクラリスに視線を送る。
「まぁ…居るには居ますが。」
「だそうだよ?」
フリードリヒはにっこり笑う。
しばらくの沈黙の後、口を開いたのはクラリスであった。
「ミケル殿下、貴方は何を企んでおられるのですか?」
…
「そもそもおかしいではありませんか?確かに私はガルフ王国に留学しました。しかし、一度もご一緒したことはなく、殿下は私を知りもしなかったはずです。それを今になって…。
それに、今問題なのは殿下が王族エリアに無断侵入したことです。話をはぐらかすために私を利用するのはお止めください。」
「違う!」
ミケルは即座に否定する。
「逆だ。王族エリアにいたことを隠すためではなく、姫を連れ帰るためにここにいたのだ。頼む…分かってくれ。私には姫が必要なのだ。」
公開プロポーズのような言葉に、一同は驚愕する。
「違うよね?私にはじゃなく、我が国には、でしょう?」
現れたのはリントン王国王太子、ミハエルであった。
「お兄様!」
驚いたクラリスは思わず立ち上がり、声を上げる。
…リントン王国まで無断侵入するなんて。
クラリスはオロオロとフリードリヒを見た。
フリードリヒはにっこり微笑むだけだった。
5
あなたにおすすめの小説
愛する人は、貴方だけ
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。
天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。
公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。
平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。
やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。
ループした悪役令嬢は王子からの溺愛に気付かない
咲桜りおな
恋愛
愛する夫(王太子)から愛される事もなく結婚間もなく悲運の死を迎える元公爵令嬢のモデリーン。
自分が何度も同じ人生をやり直している事に気付くも、やり直す度に上手くいかない人生にうんざりしてしまう。
どうせなら王太子と出会わない人生を送りたい……そう願って眠りに就くと、王太子との婚約前に時は巻き戻った。
それと同時にこの世界が乙女ゲームの中で、自分が悪役令嬢へ転生していた事も知る。
嫌われる運命なら王太子と婚約せず、ヒロインである自分の妹が結婚して幸せになればいい。
悪役令嬢として生きるなんてまっぴら。自分は自分の道を行く!
そう決めて五度目の人生をやり直し始めるモデリーンの物語。
【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
【完結】婚約を解消されたら、自由と笑い声と隣国王子がついてきました
ふじの
恋愛
「君を傷つけたくはない。だから、これは“円満な婚約解消”とする。」
公爵家に居場所のないリシェルはどうにか婚約者の王太子レオナルトとの関係を築こうと心を砕いてきた。しかし義母や義妹によって、その婚約者の立場さえを奪われたリシェル。居場所をなくしたはずの彼女に手を差し伸べたのは、隣国の第二王子アレクだった。
留学先のアレクの国で自分らしさを取り戻したリシェルは、アレクへの想いを自覚し、二人の距離が縮まってきた。しかしその矢先、ユリウスやレティシアというライバルの登場や政治的思惑に振り回されてすれ違ってしまう。結ばれる未来のために、リシェルとアレクは奔走する。
※ヒロインが危機的状況に陥りますが、ハッピーエンドです。
【完結】
隠された第四皇女
山田ランチ
恋愛
ギルベアト帝国。
帝国では忌み嫌われる魔女達が集う娼館で働くウィノラは、魔女の中でも稀有な癒やしの力を持っていた。ある時、皇宮から内密に呼び出しがかかり、赴いた先に居たのは三度目の出産で今にも命尽きそうな第二側妃のリナだった。しかし癒やしの力を使って助けたリナからは何故か拒絶されてしまう。逃げるように皇宮を出る途中、ライナーという貴族男性に助けてもらう。それから3年後、とある命令を受けてウィノラは再び皇宮に赴く事になる。
皇帝の命令で魔女を捕らえる動きが活発になっていく中、エミル王国との戦争が勃発。そしてウィノラが娼館に隠された秘密が明らかとなっていく。
ヒュー娼館の人々
ウィノラ(娼館で育った第四皇女)
アデリータ(女将、ウィノラの育ての親)
マイノ(アデリータの弟で護衛長)
ディアンヌ、ロラ(娼婦)
デルマ、イリーゼ(高級娼婦)
皇宮の人々
ライナー・フックス(公爵家嫡男)
バラード・クラウゼ(伯爵、ライナーの友人、デルマの恋人)
ルシャード・ツーファール(ギルベアト皇帝)
ガリオン・ツーファール(第一皇子、アイテル軍団の第一師団団長)
リーヴィス・ツーファール(第三皇子、騎士団所属)
オーティス・ツーファール(第四皇子、幻の皇女の弟)
エデル・ツーファール(第五皇子、幻の皇女の弟)
セリア・エミル(第二皇女、現エミル王国王妃)
ローデリカ・ツーファール(第三皇女、ガリオンの妹、死亡)
幻の皇女(第四皇女、死産?)
アナイス・ツーファール(第五皇女、ライナーの婚約者候補)
ロタリオ(ライナーの従者)
ウィリアム(伯爵家三男、アイテル軍団の第一師団副団長)
レナード・ハーン(子爵令息)
リナ(第二側妃、幻の皇女の母。魔女)
ローザ(リナの侍女、魔女)
※フェッチ
力ある魔女の力が具現化したもの。その形は様々で魔女の性格や能力によって変化する。生き物のように視えていても力が形を成したもの。魔女が死亡、もしくは能力を失った時点で消滅する。
ある程度の力がある者達にしかフェッチは視えず、それ以外では気配や感覚でのみ感じる者もいる。
公爵令嬢は嫁き遅れていらっしゃる
夏菜しの
恋愛
十七歳の時、生涯初めての恋をした。
燃え上がるような想いに胸を焦がされ、彼だけを見つめて、彼だけを追った。
しかし意中の相手は、別の女を選びわたしに振り向く事は無かった。
あれから六回目の夜会シーズンが始まろうとしている。
気になる男性も居ないまま、気づけば、崖っぷち。
コンコン。
今日もお父様がお見合い写真を手にやってくる。
さてと、どうしようかしら?
※姉妹作品の『攻略対象ですがルートに入ってきませんでした』の別の話になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる