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アンドラと王太子妃のひととき
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執務室もひとつにまとまり、ランズ王国王子チームは一致団結していた。
この日は国王陛下も参加する執務会議。王太子をはじめ、王子たちも揃って出席している。もちろん側近たちも同行するが、ヨハネスの側近アンドラだけはお留守番だ。
理由は簡単。アンドラは伯爵家の出身。この会議には上位貴族のみが立ち入りを許されており、ヨハネスに仕えるアンドラの代わりに、テオドールがピンチヒッターとして出向いていたのだ。
普段賑やかな執務室も、今日は久々の静寂。アンドラはひたすら書類と格闘している。
…
クラリスはペンを置き、穏やかに声をかけた。
「ねえアンドラ、お茶にしない?」
アンドラは、初めてクラリスと二人きりで会話するせいか、少し緊張している様子だ。
クラリスはアンドラをソファに促し、お茶と菓子が出されるのを楽しみに待つ。
…
アンドラは目の前の王太子妃の自然な姿に、ほんの少し笑みを漏らした。
「ところでアンドラ。貴方はフィリップスやファビウスにはあまり感じないけど、テオだけには何だか壁みたいなものを感じるのは何故?」
アンドラはクラリスの不安げな表情を和らげるように微笑む。
「それは私だけではなく、この国の貴族なら誰しも、テオドール殿を憧れて止まないからです」
クラリスは驚き、声を漏らす。
「フィリップスやファビウスではなく、テオに?」
「はい」
…
「それは、筆頭公爵家の嫡男だから?」
アンドラはまたも微笑む。
「それだけではありません。彼はその爵位さえ必要ないほどに優れております」
…
「武術はもちろん、学問も優れ、何よりあのお人柄。我が国の外交は、テオドール殿のお力で保たれているようなものです」
クラリスは怪訝そうに眉をひそめる。
「そんな大袈裟な」
「いいえ、大袈裟ではありません。信じられないのなら、他の者に聞いてみれば分かります」
アンドラはにこやかに答えた。
…
クラリスはつまらなさそうに窓辺を見てから、思い立ったようにアンドラに視線を向ける。
「ねえ、アンドラ。貴女には婚約者はいるの?」
「そりゃあ、一応、いますよ」
クラリスは少し考え込み、問い返す。
「居るには居るって、どういうこと?政略結婚?」
「私は伯爵家の次男坊。いつかは家を出る身ですからね。貴族令嬢から見れば、私の価値はほとんどありません。政略結婚なんて存在しませんよ」
「じゃあ、真実の愛?」
アンドラは思わずお茶を吹き出しそうになりながらも、苦笑いで答える。
「し、真実かどうかは分かりません。ただ、昔からの腐れ縁のようなものです」
クラリスは納得するように頷き、さらに質問を続けた。
「ねえ…婚約者は普段、貴方のことを何て呼んでいるの?」
アンドラは不思議そうに見つめる。
「だから、婚約者は貴方を何て呼んでいるのかって聞いているの!」
アンドラは首を傾げる。
「…アンディですかね?」
…
黙りこくるクラリスに、アンドラはまた首を傾げる。
…さっきまでの勢いはどこ行った?
「私はね、殿下を『殿下』と呼んでいます」
「そうですね、いつもそう呼ばれていますね」
クラリスは睨みつける。
「ねえ、貴女の婚約者はアンディと呼ぶのに、私は殿下と敬称で呼んでるのよ?おかしくない?」
…
アンドラは少し口角を上げて答える。
「妃殿下は殿下をお名前で呼びたいということですね?」
クラリスはムスッとしながら答えた。
「別に呼びたいとかじゃないけど…」
…いや、それ以外に何がある?
アンドラは目を細め、クラリスを見つめる。
…可愛いんだけど?
その時、執務室の扉が開き、フリードリヒが顔を出す。
「アンドラ、少しよいか?」
アンドラはすぐに立ち上がり、急いでフリードリヒの元へ走る。
「アンディ!分かってると思うけど…」
思わず呼び止めたクラリスに、アンドラは答える。
「承知しております!」
…言わないよ、こんな事。
アンドラは苦笑いを浮かべ、扉の外で待つフリードリヒと合流し、隣の広間へ向かった。
…つうか、なに?
アンドラは急に不安になり、主であるヨハネスを探すが…
…こんな時に限って、見当たらない。
この日は国王陛下も参加する執務会議。王太子をはじめ、王子たちも揃って出席している。もちろん側近たちも同行するが、ヨハネスの側近アンドラだけはお留守番だ。
理由は簡単。アンドラは伯爵家の出身。この会議には上位貴族のみが立ち入りを許されており、ヨハネスに仕えるアンドラの代わりに、テオドールがピンチヒッターとして出向いていたのだ。
普段賑やかな執務室も、今日は久々の静寂。アンドラはひたすら書類と格闘している。
…
クラリスはペンを置き、穏やかに声をかけた。
「ねえアンドラ、お茶にしない?」
アンドラは、初めてクラリスと二人きりで会話するせいか、少し緊張している様子だ。
クラリスはアンドラをソファに促し、お茶と菓子が出されるのを楽しみに待つ。
…
アンドラは目の前の王太子妃の自然な姿に、ほんの少し笑みを漏らした。
「ところでアンドラ。貴方はフィリップスやファビウスにはあまり感じないけど、テオだけには何だか壁みたいなものを感じるのは何故?」
アンドラはクラリスの不安げな表情を和らげるように微笑む。
「それは私だけではなく、この国の貴族なら誰しも、テオドール殿を憧れて止まないからです」
クラリスは驚き、声を漏らす。
「フィリップスやファビウスではなく、テオに?」
「はい」
…
「それは、筆頭公爵家の嫡男だから?」
アンドラはまたも微笑む。
「それだけではありません。彼はその爵位さえ必要ないほどに優れております」
…
「武術はもちろん、学問も優れ、何よりあのお人柄。我が国の外交は、テオドール殿のお力で保たれているようなものです」
クラリスは怪訝そうに眉をひそめる。
「そんな大袈裟な」
「いいえ、大袈裟ではありません。信じられないのなら、他の者に聞いてみれば分かります」
アンドラはにこやかに答えた。
…
クラリスはつまらなさそうに窓辺を見てから、思い立ったようにアンドラに視線を向ける。
「ねえ、アンドラ。貴女には婚約者はいるの?」
「そりゃあ、一応、いますよ」
クラリスは少し考え込み、問い返す。
「居るには居るって、どういうこと?政略結婚?」
「私は伯爵家の次男坊。いつかは家を出る身ですからね。貴族令嬢から見れば、私の価値はほとんどありません。政略結婚なんて存在しませんよ」
「じゃあ、真実の愛?」
アンドラは思わずお茶を吹き出しそうになりながらも、苦笑いで答える。
「し、真実かどうかは分かりません。ただ、昔からの腐れ縁のようなものです」
クラリスは納得するように頷き、さらに質問を続けた。
「ねえ…婚約者は普段、貴方のことを何て呼んでいるの?」
アンドラは不思議そうに見つめる。
「だから、婚約者は貴方を何て呼んでいるのかって聞いているの!」
アンドラは首を傾げる。
「…アンディですかね?」
…
黙りこくるクラリスに、アンドラはまた首を傾げる。
…さっきまでの勢いはどこ行った?
「私はね、殿下を『殿下』と呼んでいます」
「そうですね、いつもそう呼ばれていますね」
クラリスは睨みつける。
「ねえ、貴女の婚約者はアンディと呼ぶのに、私は殿下と敬称で呼んでるのよ?おかしくない?」
…
アンドラは少し口角を上げて答える。
「妃殿下は殿下をお名前で呼びたいということですね?」
クラリスはムスッとしながら答えた。
「別に呼びたいとかじゃないけど…」
…いや、それ以外に何がある?
アンドラは目を細め、クラリスを見つめる。
…可愛いんだけど?
その時、執務室の扉が開き、フリードリヒが顔を出す。
「アンドラ、少しよいか?」
アンドラはすぐに立ち上がり、急いでフリードリヒの元へ走る。
「アンディ!分かってると思うけど…」
思わず呼び止めたクラリスに、アンドラは答える。
「承知しております!」
…言わないよ、こんな事。
アンドラは苦笑いを浮かべ、扉の外で待つフリードリヒと合流し、隣の広間へ向かった。
…つうか、なに?
アンドラは急に不安になり、主であるヨハネスを探すが…
…こんな時に限って、見当たらない。
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