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チェチーリア・アルストメリア
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チェチーリア・アルストメリアが婚約解消の場においても毅然とした態度を崩さなかったのは、王太子妃という立場にも、エルウィンという男にも、もとより固執していなかったからだ。
彼女が見つめていたのは、個人の感情や幸福ではない。
公爵家の令嬢として、王国の未来を見据える者として、ただ一途に、自らの務めを果たしてきた――それだけのことだった。
もちろん、最初から割り切れていたわけではない。
幼い頃から“王太子妃になるための教育”を受け、それが自らの役目だと教えられれば、心は自然とその未来に馴染んでゆく。
エルウィンに対しても、淡い憧れのような感情はあった。けれど、それはいつか手放す日が来ても構わない程度のものだった。
チェチーリアにとって、最も大切だったのは「誰の前に立っても恥じぬ自分でいること」だ。
王太子の婚約者として恥じぬふるまいを、王宮の誰よりも高い基準で求められていたその日々は、彼女の心と身体に厳しい鍛錬をもたらした。
だがそれを苦しいと思ったことは一度もない。
なぜなら彼女は、公爵家に生まれたことを誇りに思っていたからだ。
「この身は、私だけのものではありませんわ」
それが、彼女が折に触れて胸の内で繰り返す言葉だった。
感情に流されて務めを投げ出すことは、周囲の信頼を裏切ることに他ならない。
そうした信念が、チェチーリアという女性を形作っていた。
だからこそ、エルウィンが別の令嬢を選び、婚約解消を申し出たときも、彼女は乱されなかった。
驚きも、憤りもなかった。ただ一瞬、胸の奥が冷たくなっただけ。
それは悲しみではなく――静かな“悟り”だった。
「ようやく、役目を終えられるのですね」
そう思った自分に、むしろ微かな安堵を覚えた。
王太子妃という称号を持たずとも、淑女としての誇りは何ら変わらない。
チェチーリア・アルストメリアは、公爵家の娘であり、王国の未来を支える一柱として、自分にできることをこれからも探し続けていくだろう。
“個”の幸福を追わないのではない。
それがすべてではないことを、彼女は知っているだけだ。
そして、たとえ誰が手を放しても――
彼女自身だけは、決して自分を見捨てない。
それこそが、彼女が最後まで凛とした姿でその場を去れた理由だった。
彼女が見つめていたのは、個人の感情や幸福ではない。
公爵家の令嬢として、王国の未来を見据える者として、ただ一途に、自らの務めを果たしてきた――それだけのことだった。
もちろん、最初から割り切れていたわけではない。
幼い頃から“王太子妃になるための教育”を受け、それが自らの役目だと教えられれば、心は自然とその未来に馴染んでゆく。
エルウィンに対しても、淡い憧れのような感情はあった。けれど、それはいつか手放す日が来ても構わない程度のものだった。
チェチーリアにとって、最も大切だったのは「誰の前に立っても恥じぬ自分でいること」だ。
王太子の婚約者として恥じぬふるまいを、王宮の誰よりも高い基準で求められていたその日々は、彼女の心と身体に厳しい鍛錬をもたらした。
だがそれを苦しいと思ったことは一度もない。
なぜなら彼女は、公爵家に生まれたことを誇りに思っていたからだ。
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それが、彼女が折に触れて胸の内で繰り返す言葉だった。
感情に流されて務めを投げ出すことは、周囲の信頼を裏切ることに他ならない。
そうした信念が、チェチーリアという女性を形作っていた。
だからこそ、エルウィンが別の令嬢を選び、婚約解消を申し出たときも、彼女は乱されなかった。
驚きも、憤りもなかった。ただ一瞬、胸の奥が冷たくなっただけ。
それは悲しみではなく――静かな“悟り”だった。
「ようやく、役目を終えられるのですね」
そう思った自分に、むしろ微かな安堵を覚えた。
王太子妃という称号を持たずとも、淑女としての誇りは何ら変わらない。
チェチーリア・アルストメリアは、公爵家の娘であり、王国の未来を支える一柱として、自分にできることをこれからも探し続けていくだろう。
“個”の幸福を追わないのではない。
それがすべてではないことを、彼女は知っているだけだ。
そして、たとえ誰が手を放しても――
彼女自身だけは、決して自分を見捨てない。
それこそが、彼女が最後まで凛とした姿でその場を去れた理由だった。
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