公爵令嬢の出来る事【完】

mako

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新たなる戦い

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数日後、宮廷の一室で話題はあのリンゴ泥棒の少年のことだった。

「第八妃殿下の対応は確かに“優しい”が…」
老臣が眉をひそめる。

「あれで本当に救われたと思うのかね?」

「一時の感傷に過ぎぬ。問題は根深いのだ」



 

その晩、フリードリヒはチェチーリアを呼びつけた。

「君の行動は確かに賞讃に値する。だが、それが何になる?」

冷たく突き放すように言い放つと尚も

「リンゴを買い与えただけで、あの少年の運命が変わるか?答えは否だ」

 

チェチーリアは動揺を隠せず、言葉を探す。

「ですが・・・」

 

フリードリヒは鋭く見据えた。

「思いだけでは何も変わらぬ。現実は甘くない」

「皇帝の妃として、君には責任がある」

「己の感情で済ますのは甘えだ。君が本気で救うつもりなら、仕組みを動かせ」

 

その言葉は冷たく重かったが、チェチーリアの胸に深く響いた。

 

フリードリヒは振り返り、無言で部屋を出ていった。




フリードリヒの冷たい言葉は、チェチーリアの胸に重くのしかかった。
しかし、それが彼女の心を折ることはなかった。

「ただ優しくするだけでは足りない」

その言葉が、彼女の中で確かな覚悟を生んだ。

 

翌日、チェチーリアはまず孤児院を再訪した。
そこには、彼女が初めて見た貧しさと、希望の光が交錯していた。

「この子たちが未来を切り開くためには、もっと根本的な支援が必要だわ」

 

彼女は宮廷に戻ると、侍従や信頼できる側近たちを集めた。
「孤児院の支援に加え、教育制度の拡充、市場の衛生改善や労働環境の整備も考えましょう」

「財源の確保には、富裕層への課税見直しや寄付制度の活用を」

側近たちは驚きつつも、その情熱に心を動かされた。

 


日々の視察を続けながら、チェチーリアは計画書を練り、財政担当に提案を出した。
彼女の動きは少しずつ宮廷内でも注目され始めた。

 

その姿を遠くから見つめるフリードリヒ。
彼はまだ多くを語らなかったが、わずかに目を細めていた。


こうして、チェチーリアの「優しさ」は確かな「行動」へと変わっていった。
彼女の挑戦は、まだ始まったばかりである。
チェチーリアの孤児院支援の噂は、あっという間に宮廷中に広がった。

しかし、その評価は賛否両論を越え、妃たちの嫉妬と嫌悪を巻き起こす火種となっていた。
 

「第八妃の小娘、まるで自分が救世主みたいな顔をして」

「孤児院の子どもたちなんて、所詮は民の下層。そんな者に手を差し伸べたところで、何の得になる?」

 

ある妃は執拗にチェチーリアの計画を貶めるため、噂話に陰謀を混ぜ込んだ。

「孤児院に送った支援物資の一部が、実はどこかに消えているとか……」

「あの子がまともに管理できているはずもないわ」

 

別の妃は宮廷の重鎮たちに密かに接触し、チェチーリア排除の策を練り始めた。

「若造の理想論に付き合っている余裕はない。妃としての立場を弁えさせるべきだ」

 

そんな中、チェチーリアは冷たい視線や陰口に耐えながらも、自分の信念を曲げることはなかったのある。




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