公爵令嬢の出来る事【完】

mako

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他人への攻撃

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――その始まりには、一応の“大義名分”があった。

第八妃チェチーリアの勝手な行動。
それは、宮廷の秩序や皇室の威厳に対する“戒め”として非難されるべきだという、もっともらしい理屈がつけられていた。

だが、それも今は昔。
いつしかそれは、鬱屈とした感情の捌け口となり、他の妃たちによる“憂さ晴らし”へと変わっていったのだった。

本音を言えば、どの妃も心は限界に近かった。

表面上は優雅に振る舞っていても、実際には“飼い殺し”のような日々。
輿入れこそ果たしたものの、皇帝からの寵愛を得られるわけでもなく、未来も見えずに時間ばかりが過ぎていく。
その焦燥と不安を飲み込みながら、彼女たちは涼しい顔で微笑むしかなかったのだ。

そんな中、突如として現れた“動く妃”――チェチーリア。

何の躊躇もなく宮廷の外へ出て、民と会い、慈善活動を始める。
皇帝の寵愛を求めるでもなく、謎めいた微笑を浮かべながら己の理想を語る姿は、あまりに異質だった。

そして、だからこそ格好の標的となった。

誰もが夢見るのはただ一つ――皇帝の子を宿すこと。
それは単なる愛ではなく、自国の血をルーゼンベルク帝国の後継者に注ぎ込むという、極めて現実的な政治的目的だった。

チェチーリアだけが例外だった。
彼女は、そうした競争の枠の外にいるように見えた。

だからこそ、妃たちは心のどこかで思っていた。
「彼女は本気ではない」「本当に皇帝の妃になる気があるのか」と。

だが、ふたを開けてみれば、誰一人として後継者を身ごもることはできていない。
皇帝との関係は、あまりにも遠く、形式的で、冷ややかだ。
いわゆる“白い結婚”――情の伴わぬ政略の象徴。

誰もがそのことに気づきながら、誰も口に出せない。
互いに探り合い、微笑みを貼り付けた仮面の下で、ただただ時を費やしてきた。

そんな膠着状態の中、ただ一人“異なる道”を歩もうとするチェチーリアが現れた。

妃たちの心の奥に燻っていた不満と不安は、彼女という“異端”に触れた瞬間、爆発したのだった。

そして今、火は燻りながら、静かに宮廷を包み込もうとしているのであった。


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