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束の間の休息
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通された部屋は、西国で用意している迎賓館の中で最も上級のものであった。
当たり前。オリビア大陸で最大の力を持つ東国王太子が使う部屋なのだから。
表立って何か事を起こす事は出来ないはずなので、殿下が過ごすテリトリーには何も出来ない。
故に西国で唯一警戒を解く事ができるのがここであろう。
『リデュアンネ、何を警戒しているのだ?』
いやいやなんもないわよ!というように
『久方で懐かしんでおるだけですよ』
と誤魔化すと、殿下はソファに腰を下ろし
『そうか、それならよいのだが。私は嘘が嫌いなのは知っているな?』
王太子の顔になっている。
殿下も殿下で警戒しているのだろう。
侍女が私の着替を促し、奥の部屋へと促した。
警戒を、解いた私はコルセットを外したくて素直に付いて行ってしまった。
『‥貴女。』
私は驚いてやっと声を絞り出した。
前に居る侍女、確かミンケル子爵家のサンマンサ様。詳しくは知らないが多分合っている。
『ご存知ですか?私を。驚きました。私など目にも入っていらっしゃらないかと思っておりましたわ。』
どうして彼女がここにいる?
王宮で勤める令嬢は珍しくないが、彼女は私がいた頃には王宮に上がって居なかった。私が嫁いだ後に王宮に入ったのであれば、もっとおかしい。
新人侍女が東国王太子妃に付く事はない。
何?
っ!サマンサ様の婚約者は、あのアンドレ様だったはず。
『それはそうと、アンドレ様はお元気?』
彼女は明らかに顔色を変えた。ってか知らない訳ないだろ。これでも公爵令嬢だったのよ。
何かまずいのかしら?
『何かありましたの?アンドレ様に。』
爵位とは絶対。上級貴族からの問に答えないなんて有り得ない。というか、サマンサ様は子爵令嬢として何も躾られていないのかしら?
私が上級貴族だとしても彼女も貴族。相手との腹の探り合いにこれ程わかり易く同様する令嬢を私は見たことがない。ってまあ、あまり下級貴族令嬢と接点はなかったが。そう思うと先程のクラウディア様は流石ね‥変な所に納得してしまった。
『あなたのせいよ。あなたの仕事が遅いから‥早くやり遂げてよ。』俯きながら答える。
仕事が遅い。
王太子妃に付く侍女に成り代わる子爵令嬢。
その子爵令嬢はアンドレ様の婚約者。
そのアンドレ様は私に毒を盛れと小瓶を渡した張本人。
ここでいう仕事とは、ハインリッヒを殺れとの事だろう。
『私の仕事?何かしら?』
とぼける私をサマンサ様はあろうことか私を睨みつけている。
『何の事か知らないけれど、貴女の今の態度は不敬に当たるわよ。私は公爵令嬢ではなく東国王太子妃ということを忘れたの?』
ここはピシャリと決める所。
サマンサ様はハァハァハァと息が上がっている。
余程あとが無いのであろう。
『衛兵を呼ぶわ』
振り返る私の腕をギュッと握り引き止める。
『お前がさっさと殺らないからアンドレが。アンドレが手柄を立てなきゃ私達は!』
『私達が何なの?』
『帝国の宰相になれないのよ!』
はい、馬鹿。喋っちゃった。
それか狙いは‥
『リデュアンネ、流石だね。』
音声を撮り、ご機嫌な殿下が部屋に入って来る。
サマンサ嬢は驚いて口をパクパクさせている。
誰かエサやってくれ(笑)
『何故?』
『何故って何が?』私は見せつける様に殿下の腕に手を通した。
『お飾りが、お飾りのくせに、お飾りが‥』
混乱しているサマンサ嬢に殿下は
『お前誰に物を言っておる?一番聞きたくない言葉を連呼するなど、我が国であれば極刑だが?』
殿下が氷の表情で言い放った。
久々だわ、この表情。
サマンサ様、わかるわ。この恐ろしさ半端ないでしょう?私も震えたわ‥
当たり前。オリビア大陸で最大の力を持つ東国王太子が使う部屋なのだから。
表立って何か事を起こす事は出来ないはずなので、殿下が過ごすテリトリーには何も出来ない。
故に西国で唯一警戒を解く事ができるのがここであろう。
『リデュアンネ、何を警戒しているのだ?』
いやいやなんもないわよ!というように
『久方で懐かしんでおるだけですよ』
と誤魔化すと、殿下はソファに腰を下ろし
『そうか、それならよいのだが。私は嘘が嫌いなのは知っているな?』
王太子の顔になっている。
殿下も殿下で警戒しているのだろう。
侍女が私の着替を促し、奥の部屋へと促した。
警戒を、解いた私はコルセットを外したくて素直に付いて行ってしまった。
『‥貴女。』
私は驚いてやっと声を絞り出した。
前に居る侍女、確かミンケル子爵家のサンマンサ様。詳しくは知らないが多分合っている。
『ご存知ですか?私を。驚きました。私など目にも入っていらっしゃらないかと思っておりましたわ。』
どうして彼女がここにいる?
王宮で勤める令嬢は珍しくないが、彼女は私がいた頃には王宮に上がって居なかった。私が嫁いだ後に王宮に入ったのであれば、もっとおかしい。
新人侍女が東国王太子妃に付く事はない。
何?
っ!サマンサ様の婚約者は、あのアンドレ様だったはず。
『それはそうと、アンドレ様はお元気?』
彼女は明らかに顔色を変えた。ってか知らない訳ないだろ。これでも公爵令嬢だったのよ。
何かまずいのかしら?
『何かありましたの?アンドレ様に。』
爵位とは絶対。上級貴族からの問に答えないなんて有り得ない。というか、サマンサ様は子爵令嬢として何も躾られていないのかしら?
私が上級貴族だとしても彼女も貴族。相手との腹の探り合いにこれ程わかり易く同様する令嬢を私は見たことがない。ってまあ、あまり下級貴族令嬢と接点はなかったが。そう思うと先程のクラウディア様は流石ね‥変な所に納得してしまった。
『あなたのせいよ。あなたの仕事が遅いから‥早くやり遂げてよ。』俯きながら答える。
仕事が遅い。
王太子妃に付く侍女に成り代わる子爵令嬢。
その子爵令嬢はアンドレ様の婚約者。
そのアンドレ様は私に毒を盛れと小瓶を渡した張本人。
ここでいう仕事とは、ハインリッヒを殺れとの事だろう。
『私の仕事?何かしら?』
とぼける私をサマンサ様はあろうことか私を睨みつけている。
『何の事か知らないけれど、貴女の今の態度は不敬に当たるわよ。私は公爵令嬢ではなく東国王太子妃ということを忘れたの?』
ここはピシャリと決める所。
サマンサ様はハァハァハァと息が上がっている。
余程あとが無いのであろう。
『衛兵を呼ぶわ』
振り返る私の腕をギュッと握り引き止める。
『お前がさっさと殺らないからアンドレが。アンドレが手柄を立てなきゃ私達は!』
『私達が何なの?』
『帝国の宰相になれないのよ!』
はい、馬鹿。喋っちゃった。
それか狙いは‥
『リデュアンネ、流石だね。』
音声を撮り、ご機嫌な殿下が部屋に入って来る。
サマンサ嬢は驚いて口をパクパクさせている。
誰かエサやってくれ(笑)
『何故?』
『何故って何が?』私は見せつける様に殿下の腕に手を通した。
『お飾りが、お飾りのくせに、お飾りが‥』
混乱しているサマンサ嬢に殿下は
『お前誰に物を言っておる?一番聞きたくない言葉を連呼するなど、我が国であれば極刑だが?』
殿下が氷の表情で言い放った。
久々だわ、この表情。
サマンサ様、わかるわ。この恐ろしさ半端ないでしょう?私も震えたわ‥
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