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捕らわれる令嬢

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『アンドレ・ブロイの婚約者というのか?お前は。アンドレ・ブロイがアルフレッド殿下の側近の1人だとは聞いているが、婚約者は、確か候爵令嬢だと聞いているが?』

目を見開いたサマンサ嬢は、

『あれは家同士の政略結婚を前提にしたものです‥それに元々は私が婚約者でした。』

なるほど、私が西国にいた頃は確か、彼女はアンドレ様の婚約者だった。その後アンドレ様がアルフレッド殿下に近づく事に成功し、より釣り合いの取れる候爵令嬢に乗り換えたというわけか‥


それにしてもサマンサ嬢は貴族令嬢としての躾を受けていないわ。王族の問いに目も合わせず答えるなんて。

『前提が覆る事がこれからあるというのか‥?』

殿下はわざとらしく呆れてみせた。

『仮にだ、仮にアルフレッド殿下がゆくゆく帝国を治める事になったとしよう。そして何だか知らぬがアンドレ・ブロイが功績を上げて宰相になったなら、それこそ候爵令嬢よりもっとメリットある令嬢と一緒になるのが賢明だと思うが?』

そもそもアンドレ様が宰相にはなれないだろうが。アルフレッド殿下には幼い頃からの側近が3人いる。新参者の彼がそれを覆す程の力がある男には見えなかったわ。

『アンドレが力を持てば、政略結婚ではなく、真実の愛を貫けるわ!』

やっと顔を上げたサマンサ様が声を上げる。

『真実の愛を、このような危険な場所に忍び込ませる男なのか?アンドレ・ブロイは。私には簡単に動く令嬢を見繕ったとしか思えんがな』

サマンサ嬢は真っ赤になりワナワナと震えだした。
この子危ないわ‥
そこへさらなる追い打ちを掛けるように

『申し訳ないが、アンドレ・ブロイは宰相になる事はない。それなのにお前は、ここで捕えられ極刑か‥何とも不公平だな。』

『そっそんな、私はただ‥』

『ただ何だ?ただ我妻を脅しただけと申すか?』

冷たく言い放った殿下にサマンサ嬢は 

『待って下さい!違うんです!』

『何が違うのだ!』殿下は珍しくイライラし声を上げた。

本来ならこんなやり取りをするまでもなく、捕えられて処刑が妥当だろう。しかしそれをしなかったのはサマンサ嬢が東国の駒になる素質があると見込んだからである。

『例え誤解であったとしても、この音声にはお前が俺を殺れと迫っている声が入っているぞ。これではどうしようもない。』


あらららら、すっかり殿下のペースだわ。アンドレ様は駒の選別を間違えてしまったのね。
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