貴方に嫌われたくなくて【完】

mako

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本当の姿

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リディアンネとは天と地とも違う、元令嬢は驚き固まる一同を横目に満足気に息を吐いた。

リディアンネはまたもその沈黙を破る。


『アルフォンス様、腑に落ちましたわ。貴方もお辛かった事でしょうね。こうした殿下への屈折した感情に縛られ、真実の愛を見ぬように生きて来られた訳ですもの。』


何故か元令嬢はリディアンネに笑顔を送り嬉しそうに微笑んだ。


『貴方の本当に大切なお方はずっと苦しんでおられた事でしょう。貴方は私が宮へ上がるのを嫌がっておらるました。ようやくわかりました。

そのお方に私と会わせたく無かった。何故ならそのお方が悲しまれるから。そのお方もまたいつも私を悲しそうに見ていらしたわ。そのお方からの視線をいつも不思議に思ってましたの。』


リディアンネの話を聞きながら、アルフォンスはリディアンネが全てを悟っていることを確信したようだ。


『ねえ、誰の事を言ってるの?』


元令嬢は怪訝そうに問う。
リディアンネはアルフォンスを注視しながら


『第6皇女、マーガレット様ですわ。』





アルフォンスは静かに瞳を閉じるも隣の令嬢はキャンキャンと吠えるように


『何を勝手な事を言ってるのよ!貴女、本当はアルフォンス様を手放したくないのね?だからって!』


甲高い声に堪らず顔が歪む皇帝が


『アルフォンス、本当か?マーガレットとそのような仲なのか?』


『だから違うって言っているでしょう!』


元令嬢は真っ赤になって吠えているが当のアルフォンスは皇帝を真っ直ぐに見て


『申し訳ありません。』


『何故謝る?』


『ちょっと!アルフォンス様!』


所々に入ってくる元令嬢にユリウスは


『悪いが君の話は聞いていないよ。余計にややこしくなるから黙っていてくれるかな?』


甲高い声に頭を抱えている。


…まぁ、そうなるわよね。


リディアンネは同じく頭を抱え込んだ。


元令嬢は仮面を身に纏う事を忘れたように


『いい?生まれてくる子どもはアルフォンス様の子よ?それはどういう事かわかる?』


…。

一同の視線は集結し口火を切るのはリディアンネ。


『例え貴女がアルフォンス様の側妃となろうとも、その生まれてくる子どもは大公家の子どもとしては認められないわよ?』


…。


頷く一同に対して


『は?何を言ってるの?貴女がアルフォンス様との子どもが出来なかったからってそんな事言っても無駄よ!』


もはや敬意の欠片もない。リディアンネは言葉を選ぶように

『例えば離縁をした妻はその後1年は婚姻出来ないのは何故だかわかりますよね?』


『殿方はすぐに出来るわ!』


答えになっていない…。



『ですから例えばすぐに婚姻して子を成したらどちらのお子か分からない子が誕生することになりますわよね?』


『私は未婚だわ!』


…。話しが噛み合わない。

見兼ねたユリウスは吐き捨てるかのように


『だから君のお腹の子どもがアルフォンスの子どもかどうかなんて確証がないであろう?』

ユリウスの言葉に元令嬢は劣化の如く怒りを露わにすると


『なんて無礼な!この子はアルフォンス様のお子よ?ねえ、アルフォンス様。』


まずはユリウスに対して無礼だと言い放った令嬢にリディアンネは驚き目を見開く。


アルフォンスは令嬢を見ることもなく、未だかつて見たことの無かった妻の理路整然と話す姿に驚きを隠せずにいた。


『君は離縁後の妻とは比べものにならない程、父親の存在が分からないではないのか?』


…。


ユリウスの言葉の意味が理解出来ない元令嬢は眉間にシワを刻みユリウスを睨みつけている。


ユリウスは面倒くさそうに天を仰ぐと


『アルフォンス、これを連れ出しても構わないよね?』


令嬢に顎を突き出したユリウスにも元令嬢は驚いたように声を上げた。


『貴方何様なの!』


ユリウスは皇太子である。



『皇帝陛下はとても温厚なお方なのですね?』


リディアンネは美しく微笑むと元令嬢に


『失礼ながら貴女没落貴族。今や平民となられた身。それ自体は貴女に落度はないわ。だけれど皆、自分の置かれた立場を理解しそこで生きていくしかないの。それは皇族や王族とて同じ。


そして貴女の生きる、この帝国の統率者であられる皇帝陛下を前にご自分の振る舞いを恥じるべきだわ。私が育った国でしたら貴女、既に首は無いわよ?』



穏やかに恐ろしい事を話すリディアンネに元令嬢はもちろんアルフォンスも驚いている。


『残酷でも傲慢でもなく、それが国を守る為ですから。秩序の乱れは小さいうちに摘む。これは鉄則ですわ。』


リディアンネの言葉を聞いた皇后は微笑を浮かべると


『地下牢へ連れて行きなさい。』


静かに言い放ち暴れる元令嬢は衛兵に連れられ部屋を出て行った。静まり返る広間。しばらく誰も口を開かず静寂なひとときが流れていた。









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