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公爵邸

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エミリアが公爵邸に戻ると玄関にはゾロリと使用人が並ぶ。慣れた様に笑顔で応えるエミリアに執事のテオドールが苦言を呈す。


『お嬢様、本来ならばその笑顔は公爵邸の外で振り撒かれるべきなのですよ?』


エミリアの後にピッタリ張り付くテオドールに

『私は心に無い笑顔は振り撒かない主義なの』

そう言うと又も使用人に笑顔を向ける。もちろん使用人らは笑顔で応える。そのお陰でこの屋敷はいつも明るく活気に溢れている。


しかしその様子も世間は知らない。

ヒルツベルト公爵家は少し変わっている。公爵は宰相であり国王陛下の側近である。公爵夫人は社交界にはあまり姿を現さず慈善事業の団体を運営しているのだ。そして公爵令息であるエミリアの兄は父親の譲りの切れ者で知られその名を王国だけでなく大陸にまで轟かせている。

そんな環境の為、家族が顔を合わせる事などほどん無くそんな環境で育てられたが故に笑わない令嬢と揶揄されるようになったのである。

しかしその揶揄される事にもこのヒルツベルト一家はもろともせず毅然とその地に立っているのである。



『で?殿下は何と?』


テオドールが怪訝そうに問うと


『八つ当たりよ。ってねえ、絶世と来れば続くのは?』


『美女でしょう。』

何の気無しに答えるテオドールに

『そうよね?殿下が私を絶世のって言うから』


テオドールは驚いた様に

『ようやく思い出しましたか、あのさるも。』

エミリアはニヤリと笑うとすこし勿体付けて


『絶世の悪女ですって(笑)』


テオドールはガクンと崩れ落ちた。
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