絶世の悪女と呼ばれる公爵令嬢【完】

mako

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ヨハネスの心

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ヨハネスはエミリアに呼ばれジュリアを迎えに走ると、なんとジュリアはリア王国の衛兵らに両脇を抱えられながら叫んでいる。ヨハネスはため息を落とすも驚きを見せ


『何をしておる!』


衛兵らに声をあげる。衛兵らは困惑しながらジルベルトを見る。エミリアもまた驚きを見せジルベルトを見た。


ヨハネスは何となく予想は出来るものの、ジュリアはマドリン王太子妃だ。この立場であれば致し方ない。ここは驚いてみせるが得策。


その心を先読みしたかのようにジルベルトは


『おやおや、またそんな演技をなさらなくとも良いのに…』


ジルベルトはポツリと呟くと視線をジュリアに向ける。


『お待ち兼ねのヨハネス殿下がいらっしゃいましたよ?』


悔しそうにジルベルトを睨みつけるジュリアにヨハネスは辟易としながらも


『どうしたの?』


ジュリアはヨハネスの手に立ち上がると   

『具合が悪くなったのでヨハンを呼びに行って頂いたの。』


それだけのはずではない。それならば衛兵がここには居ない。そんな事は分かっていたヨハネスだがエミリアに礼を述べるとジュリアを連れてその場を後にした。



いつからであろう。あれ程愛おしくて堪らなかったジュリアをお荷物のように感じ出したのは…。

ヨハネスは出会った頃からのジュリアの変化を巡らせながらジュリアの前をスタスタと歩いて行った。

ジュリアはヨハネスが驚く程マナーが身についてもいない。初めこそマナーなんて自然に身についているものだと思っていた。自身もそうであったようにヨハネスの周りにマナーが身について居ない者など1人も居ない。


共に生活するまでは気にもならなかったが、今では違う。王宮での振る舞いや夜会での対応。他国へ連れて行けばこれだ。


後ろのジュリアを振り返ると、不貞腐れたように仰け反って歩いている。あれが淑女と言えようか。
何故だが懐妊してからのジュリアはどんどん大きくなり面影すら無くなりつつある。

それに加えての散財も酷い。ジュリアの散財でマドリンが傾く事は無いがそれでもろくに王太子妃としての執務もできないくせに毎日毎日王宮にはどこかの店の店主が訪れにこやかに帰って行くという。


そして何よりジュリア自身が変ったのだ。変ったというよりそれが素の姿なのかもしれないが、可愛らしいジュリアから近頃はヒステリーを起こすようになってきた。体調からくるものだとヨハネスも大目に見ていたがもはや限界がきているのだ。



今回の件もエミリアが1人でヨハネスを呼びに来た時にピンときた。今宵の主役であるエミリアが1人で居るのはおかしいし何よりジュリアからの依頼だという。そして向かうは王族エリアの手前だというではないか。ジュリアの目論んで居る事がすぐに察知できない程の熱量はもはやヨハネスには無かった。


目の前のエミリアは婚約者の頃とは異なり表情豊かに慌てている。あの頃のエミリアならばジュリアの企みくらい察知したであろう。それが今、なんの警戒もしていない素のままの姿のエミリアにヨハネスは何とも言えない感情に支配された。


それでもヨハネスは王族である。目の前に手を伸ばせばエミリアがいる。王族エリアまでの道のりは人も少ない。ジュリアの下世話な考えは今のヨハネスにとっても魅力的ではあった。美しいエミリアの背中を眺めながら己の欲求を封印させた。下衆の企みに乗る程落ちぶれては居ない。



唯一、王太子としてのプライドがヨハネスを正常へと導いたのである。
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