たまたま王太子妃になっただけ【完】

mako

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アナリス大帝国夜会

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オリヴィアがジュリランから嫁いで初めての夜会が開催される日の朝、オリヴィアは朝からスザナ率いる侍女らに囲まれまたもお人形の様に皇后陛下として作り上げられている。


既に帝国誕生の際、アナリス国王は隠居されているので両親は皇宮を離れている。その分オリヴィアに付く侍女の数も一気に増えオリヴィアは困惑していた。


一流の腕が集結しているのである。当たり前であるがオリヴィアは皇后としての威厳も即席ではあるが作り上げられ美しく仕上がりをみせた。


『まぁ…』


オリヴィアは鏡の前の自分に驚くもスザナは


『妃殿下、口がポカンと開く癖はなりませんよ 』

…ごめんなさい。

俯いたオリヴィアに尚も


『背筋を伸ばして!』



…スザナ、貴女最近厳しいわね。


オリヴィアはスザナを苦笑いで見つめた。



準備が整うとオリヴィアはレオナルドに引き渡され控え室に向かうもレオナルドは


『殿下はまだのようですので、どうされます?』


『どうとは?』



レオナルドは時計を確認すると


『妃殿下は元が美しいので時間が余りに余っていますからね、庭でも散歩されます?』


そんな事をサラリと言うレオナルドに驚きながらも


『そうね、そうしたいわ。』


オリヴィアは小さく笑った。


庭も素晴らしく着飾り、これから執り行われる夜会の大きさを物語っている。


『妃殿下、妃殿下に仕える者は皆妃殿下の素晴らしい所を存じております。控え目でありながら優しく賢明でしかもユーモアまで兼ね備えていらっしゃる。』



…どうしたの?レオナルド。

キョトンとするオリヴィアに


『その表情も魅力的ですが本日の夜会は帝国貴族が挙って集まります。その美点が足を引っ張る事もございます。それはひいては殿下の足も引っ張りかねません。だからこそスザナも本日は本気で貴女を皇后として作り上げたのです。ご理解ください。』


普段の少し軽いレオナルドが真面目に語る内容にオリヴィアの心は小さく音を立てている。

『…はい。』


レオナルドはオリヴィアを怪訝そうに見ると


『分かったわ!』


にっこり笑うオリヴィアに納得の表情で頷いた。


正門からは多くの貴族の馬車が入って来ているのが見える。広い玄関口には色とりどりのドレスが咲き誇る。賑やかな様子にオリヴィアは


『アナリスは本当に自由な国なのね。』


レオナルドは少し考え


『自由とは義務を果たしたものに与えられる物というのはお忘れなく。あの者たちの中にはそれを果たしていない者もおりますがそれは必ず殿下の知る所となりすぐに消えていきますからね。』  

…。



『ご安心ください。殿下は独裁というわけではありませんからね?この国を守るため、この国の下々の民を守る為です。それを治める貴族らが私利私欲に走れば国の行く先は想像できますでしょう?』



『多くの特権を持つ貴族には厳しいという事ですね?』



レオナルドはこれまた納得の表情で頷いた。





会場に皇帝夫妻が入場がアナウンスされると賑やかな会場が静まり返る。

アレクセイはオリヴィアを見つめると


『完璧だね。』


その言葉に反応する前に大きな扉は開かれた。音楽と共に割れんばかりの拍手喝采を浴びる2人は高くなっている壇上に挙がり拍手に応える。アレクセイは皇帝として言葉を述べた。


オリヴィアはその様子を見つめながら会場に目を向けると見たことも無い光景に息を飲んだ。王族として1段高い所から見下ろす事は経験があるものの、このような多くの貴族の前で…オリヴィアはレオナルドの言葉を胸に自分に仕える者たちの為にも背筋を伸ばして見下ろした。



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