たまたま王太子妃になっただけ【完】

mako

文字の大きさ
24 / 62

渦巻く野望

しおりを挟む
オリヴィアは生まれながら王族である。誰かを陥れたり蹴落とす必要の無い環境に居たのだ。


目の前で繰り広げられる優雅な一幕。にこやかに微笑み談笑する貴婦人たち。美しく着飾る令嬢たち。紳士に振る舞う殿方。あちこちで繰り広げられる社交にオリヴィアは心の中は複雑であった。


アレクセイがフィリップを連れ壇上を降りるのを確認すると後ろのレオナルドに顔を向ける。レオナルドは軽く頷くとオリヴィアもまた会場の輪の中へ降りて行く。


アレクセイが輪の中に入ると着飾る令嬢たちにたちまち囲まれ、無駄に笑顔を振りまいている。これがアレクセイのポーカーフェイスである。


オリヴィアは思わず

『怖っ』

と首を振ると後ろのレオナルドが小さく睨みつけた。オリヴィアはレオナルドに思わず舌を出した。レオナルドは驚き目を見開くも呆れた様に頷いた。

一通りの社交を終えたオリヴィアはひと息付くためにバルコニーに出ようとしたものの、以前アレクセイにえらくお叱りを受けた事を思い出した。


…。


オリヴィアはレオナルドに

『アナリスではバルコニーに出ては行けないのよね?』


レオナルドは思わず


『はあ?』


となるものの一つ咳払いをし

『何故ですか?バルコニーには貴婦人方も出ていらっしゃいますが?』


バルコニーに視線を送る。オリヴィアはアレクセイに叱られた過去をレオナルドに話すと



…。

レオナルドは呆れた様に


『妃殿下マヂですか?』


オリヴィアは聞き慣れないレオナルドの素のままの言葉に首を傾げると


『失礼。とにかく大丈夫ですよ。ここはアナリスですからね。また状況も違います!詳しくはまたしっかり耳の穴かっぽじってお話ししますから。』



…かっぽじって?

オリヴィアは得体の知れない生き物を見るかの様にレオナルドを見ると首をひねってバルコニーに出た。


澄んだ空気が美味しい!
オリヴィアは素のままのオリヴィアになり笑顔をレオナルドに向けた。


…ヤバい。可愛すぎるな。


レオナルドはキョロキョロと辺りを見渡しこの表情を誰にも見せてはならぬとアレクセイに命を受けたかのように焦りをみせた。



『オリヴィア』

この夜会でオリヴィアをオリヴィアと呼ぶのはこの2人。

オリヴィアは振り返ると久々の対面となるラインハルトとステファニーが立っていた。レオナルドは少し離れて控えた。

オリヴィアはすっと息を吸い込み


『ご無沙汰しております。お楽しみ頂いておりますか?』

凛と背筋を伸ばし微笑むとラインハルトは頷いた。

『元気そうで何よりだ。父上も喜んでおられる。』


…陛下が?まさか…。


オリヴィアは苦笑いをしながらステファニーに視線を移すと


『オリヴィア、ッて貴女!』

ステファニーは急にオリヴィアに驚きを見せた。
オリヴィアは不思議そうにステファニーを見ると


『貴女だったのね?王女であろう者が盗みを働くなど、お兄様見てオリヴィアの首元を。』


ラインハルトも目を見開いた。


オリヴィアは理由がわからず


『何を仰っしゃるのですか?盗みなど私は誓ってしておりませんが?』


『では貴女のそのネックレスはどうしたの?』

睨みつけるステファニーにオリヴィアは首から下げたネックレスを触れ


『これはここに嫁ぐ際、お母様より譲り受けた物ですが?』


『そんな馬鹿な事は無いわ!それはねジュリラン大王国の秘宝、それも特級品。ジュリラン正妃でも持ち得ていない物を何故貴女の母親、しかも力の無い側室如きが持っているのよ!』


…。そうなの?ジュリランの秘宝ってまさか?


そう、ジュリランは鉱山からさまざまな金銀財宝が出る為、それが財源の大元となっているのだ。


『妃殿下、場所を移されては?』


レオナルドの言葉に頷くと4人は会場を出て控え室に入った。


『レオナルドと言ったかしら?貴方は優秀ね。妃殿下の羞恥を察知して人目を避けるなんて。』

ステファニーはニヤリと不敵な笑みを浮かべると


『いいえ、私は妃殿下のご兄弟を案じたまでですが?』


ステファニーはあからさまに顔を歪めると


『まあ、いいわ。さぁオリヴィア返しなさい。っていうかお兄様。このような者を他国に嫁がせるは我が国の恥。ネックレス同様オリヴィアも連れて帰りましょう。』


ラインハルトは驚きながらもステファニーの言葉に頭を悩ませた。


『もう一度申し上げますがこちらはお母様より譲り受けた物で私が盗みを働いたのでありません。』


『貴女でも貴女の母親でも関係ないの。それは小国であれば手に入る位の価値ある物よ?』


ステファニーの言葉に卒倒しそうになるオリヴィア。


…小国が買えるってこれが?まさか。


『大袈裟な、それらの物は我が国でもございます。それ位の物でそんなに必死になられる程ジュリラン大王国は財政難なのですか?』


レオナルドの言葉に尚も驚くオリヴィア。

…これが?


ステファニーは真っ赤になり

『貴方!弁えなさいよ。たかだか帝国貴族が仮にも他国の王族に。国際問題になるわよ?』

放心していたオリヴィアが


『お姉様こそ言葉を弁えて下さい。彼は帝国貴族である前に帝国皇后の側近ですわ?かれの意は私の意でもありますわ!』

ステファニーのボルテージが上がる。


『貴女何様のつもり?この私に対してそんな口を叩いてどうなるか分かってるの?』


『恐れながら王女。貴女こそ大丈夫ですか?彼女は貴女の妹ではありますが今やアナリス大帝国の皇后陛下。属国の一王女が気安くお話しになるのも本来ならば無礼なのです。ご理解頂いておりますか?』


レオナルドはステファニーとは言いながらラインハルトに視線を置いた。



『ステファニー、落ち着きなさい。』


ラインハルトに促されステファニーはソファに腰を下ろした。オリヴィアは小さく息を吐くとその前に腰を下ろした。


…やれやれだわ。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

あなたの愛が正しいわ

来須みかん
恋愛
旧題:あなたの愛が正しいわ~夫が私の悪口を言っていたので理想の妻になってあげたのに、どうしてそんな顔をするの?~  夫と一緒に訪れた夜会で、夫が男友達に私の悪口を言っているのを聞いてしまった。そのことをきっかけに、私は夫の理想の妻になることを決める。それまで夫を心の底から愛して尽くしていたけど、それがうっとうしかったそうだ。夫に付きまとうのをやめた私は、生まれ変わったように清々しい気分になっていた。  一方、夫は妻の変化に戸惑い、誤解があったことに気がつき、自分の今までの酷い態度を謝ったが、妻は美しい笑みを浮かべてこういった。 「いいえ、間違っていたのは私のほう。あなたの愛が正しいわ」

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

悪役令嬢まさかの『家出』

にとこん。
恋愛
王国の侯爵令嬢ルゥナ=フェリシェは、些細なすれ違いから突発的に家出をする。本人にとっては軽いお散歩のつもりだったが、方向音痴の彼女はそのまま隣国の帝国に迷い込み、なぜか牢獄に収監される羽目に。しかし無自覚な怪力と天然ぶりで脱獄してしまい、道に迷うたびに騒動を巻き起こす。 一方、婚約破棄を告げようとした王子レオニスは、当日にルゥナが失踪したことで騒然。王宮も侯爵家も大混乱となり、レオニス自身が捜索に出るが、恐らく最後まで彼女とは一度も出会えない。 ルゥナは道に迷っただけなのに、なぜか人助けを繰り返し、帝国の各地で英雄視されていく。そして気づけば彼女を慕う男たちが集まり始め、逆ハーレムの中心に。だが本人は一切自覚がなく、むしろ全員の好意に対して煙たがっている。 帰るつもりもなく、目的もなく、ただ好奇心のままに彷徨う“無害で最強な天然令嬢”による、帝国大騒動ギャグ恋愛コメディ、ここに開幕!

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

処理中です...