たまたま王太子妃になっただけ【完】

mako

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盗人の正体

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ステファニーは落ち着きを取り戻すと真っ直ぐオリヴィアを見据えた。


『では、皇后陛下。貴女は我が国から秘宝を持ち出されたという事にどのように責を取られるのですか?』


『そちらに付きましては一度お母様に確認してからという事でよろしいでしょうか?』


敢えてラインハルトに問うオリヴィア。


ラインハルトは後ろのレオナルドに視線を流しながらオリヴィアには小さく頷いた。


『お兄様!』


憤りを見せるステファニーに


『確認は無用だ。』

控え室にフィリップが入ってくるや否や顔を顰めている。


『貴方!盗み聞きとは恥を知りなさい!』


ステファニーは過去の夫であるフィリップに声を上げた。


『盗み聞きも何も、貴女の声は外にまで漏れておりますがね?王族がそれも秘事を話すにその声量とは考え難いであるが?』

相変わらずの無表情で淡々と語るフィリップの後ろにはアレクセイが呆れた様に髪をかきあげながら

『ラインハルト殿。今宵の宴にわざわざ面倒を…』

ため息を付きソファに腰を下ろした。


『失礼をいたしました。』


ラインハルトはバツの悪そうに頭を下げた。


『とにかく、その秘宝は我が国の物です。』


ステファニーが話を戻すと


『これは紛れもなく皇后陛下の母上の私物ですよ。』


フィリップの言葉に


『何故貴方がそんな事が分かるのよ!部外者は黙っていて下さい。』

…。


『それを妃殿下の母上に贈ったのは、今は亡き私の父上だ。』


!!!


一同の視線がフィリップを捉えると尚も


『父上がまだ妻帯する前に皇后陛下の母上と父上は近しい仲であったのだという。だがフランツ帝国皇帝である父上は他国の伯爵令嬢を娶る事は出来ない。他国上位貴族でも無い皇后陛下の母上を帝国皇帝が娶れば国内だけでなく他国王族からも反発が予想される。』


納得するかのように黙りこくる一同。


『そ、そんな事。』

ステファニーは少し考え込むとすぐに


『オリヴィア、貴女の母は我が国の国王であるお父様を裏切ってたって事になるわ!』


『だから妻帯する前と言ったであろう?』


フィリップの言葉をスルーしたステファニーは


『伯爵令嬢であった貴女の母が側妃となるにはそれなりの時間が必要だわ。貴女の母はフランツ帝国皇帝と近しい間であったのに。その時期が前後していたとしても熱の冷めやらぬ内に…なんて事なの。親が親なら娘も娘よ。』

ステファニーは話を逸脱させているのは明白であった。

…。

困惑するオリヴィアに

『オリヴィア、君が頭を悩ます事ではないよ。とにかく君と母上の嫌疑が晴れて良かった。で?ラインハルト殿。この責任は取ってもらうよ?』

青くなるラインハルトは放心している。

『皇后陛下の母上の名誉の為に言う。帝国から戻るとジュリラン大王国の国王自らが母上を求め母上は家族の為にそれを受けた。

ジュリラン国王は我が父上との経緯も承知の上で娶ったのだ。だから国王か帝国に入ると我が父は国王に母上の近況を必ず問うていた。それは私が皇太子となっても尚も続いていたからね。』


懐かしそうに目を細めながら話すフィリップ。


…表情があるわ。


オリヴィアはそこに驚くとフィリップを見つめた。


アレクセイはラインハルトに

『さあ、どうする?貴女の国は帝国皇后陛下を盗っ人として騒ぎを起こしたのだ。』


『国としてなどは…』

焦るラインハルト。

『騒ぎなど起こしておりませんわ!』

憤るステファニー。

『我が国皇后陛下の側近が気を利かしたおかげでこの程度で済みましたけど、あのままあそこでコレをやられていたら取り返しがつかなくなっていたよね?』

アレクセイの言葉にオリヴィアは嬉しそうにレオナルドを見るとレオナルドは顎で前を向けと念を送った。オリヴィアは又も舌を出して戯けてみせた。


…やれやれ、何だか強くなってきてねえか?


レオナルドの心の中で呟いた。


押し黙る2人を前にアレクセイは


『我々も暇ではない。揃ってここに雲隠れしている訳にもいかないから、まぁよく話し合って後で聞かせてくれればいいよ。』


そう言うとアレクセイはフィリップを連れて部屋を後にした。



静まり返る控え室。

ラインハルトはオリヴィアに


『此度はご迷惑をお掛けし申し訳ありません。』


オリヴィアは慌てて


『お兄様。やめて下さい。疑いが晴れれば私はそれで良いです。その責として一つお約束頂きたい事がございます。』

『何なりと。』

ラインハルトは頭を垂れた。


オリヴィアは小さく息を吐くと

『ジュリラン王女は乱世の末の、下剋上を見下している節が見受けられます。確かに下剋上後はとてもデリケートな部分もありましょう。ですが今回に限っては見ての通り何の問題もございません。何故だがお分かりですか?』


ステファニーは

『そんなのは建前でしょう?私がフィリップ様なら死んだ方がマシですわ。』

毅然と話すもラインハルトは一つ頷くと

『双方が優秀だからでしょう。皇帝はフィリップ殿に敬意を示し、フィリップ殿もまたそれに応えておられる。特に皇帝が立場変わりに見下す素振りがあれば降格する者はその方への忠誠を持つ事ができません。フィリップ殿は安心して皇帝に襷を渡したという所でしょうか?』


ラインハルトの言葉にオリヴィアは嬉しそうに微笑むと


『流石はお兄様ですわ。』

そう言うとまた皇后陛下の表情に戻り


『以後、ジュリラン王女にその態度を改めるよう厳重注意をお願いいたします。もしそれが破られるのであれば我が国とジュリラン大王国との国交は以後無いと思って頂いて結構です。』


声を発しようとするステファニーを抑えるとラインハルトはオリヴィアに最上級の礼を取り頭を垂れた。


その様子を扉の向こうで聞いていた渦中の2人は照れくさそうに顔を見合わせ会場に戻って行った。



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