たまたま王太子妃になっただけ【完】

アナリス大帝国の日常

『何ですか？私の顔に何かついてますか？』


執務に追われるレオナルドが怪訝そうに顔を上げるとオリヴィアは急いでデスクに顔を落とす。


…何だよ？




『妃殿下、いい加減にしてください。』

レオナルドの言葉にオリヴィアはまたも視線をデスクに落とすがレオナルドが立ち上がると


『分かった分かったから。』


オリヴィアは眉を下げてレオナルドを見上げる。


『どうしました？まさか私に恋でも？』

冗談を交え問うと


『そんな馬鹿な事あるかわけないわ！』


…そこまで否定しなくてもいいからね？妃殿下よ。


『では？』



モジモジするオリヴィアを前にレオナルドはため息を一つ。


『妃殿下、妃殿下は皇后陛下の仮面を装着していない素のままになられますと、本当ヘタレになりますね？』



『だってヘタレですもの…』


…ですものって可愛くねえか？


『で？』


…。レオナルドの顔が険しくなるのを確認すると


『だ、だから、その。ほらイザベラ様が前に仰っておられたでしょう？』


『何を？』


『だ、だからフィリップ様とはそうゆう関係では無かったと…』


うつむき上目遣いでレオナルドをチラリと見上げるオリヴィア。


…ヤバい、可愛すぎる。


『そうでしたか？』


『そうでしたか？では無いわ！貴女は子づくりしていなかったって言ってたじゃない！』


…あぁ、あれか。


『ですね。それが？』


困った様な表情になりオリヴィアは


『そんな間髪入れずに答えなくても…』


『で？何がお聞きになりたいのですか？これでは日が暮れてしまいますが？』



…。

『だから子づくりする夫婦と子づくりしない夫婦の違いは何かしら？フィリップ様はその…』


『はあ？』


レオナルドはもはや側近という事を忘れている。


『ご、ごめんなさい。いいの。忘れて。』


焦るオリヴィアにレオナルドはニヤリと笑うと


『貴方！貴方の考えている事は違うわよ？何だか変な誤解をしている気がするもの。いいの。忘れて。本当お願いだから。』


レオナルドはオリヴィアの問を正確に理解は出来ているものの、出来ていないフリをしてオリヴィアの反応を楽しんでいた。


…まぁ、このくらいは約得という事で（笑）



レオナルドは真っ赤に頬を染める主を微笑ましく見守った。