記憶を無くした公爵夫人【完】

私としたことが！

レオンハルトはあれからあまり出掛ける事も少なくなり夜は公爵邸で休むようになっていた。


そんなある日の午後。
公爵邸に来客があったとの事。


アルベルタは螺旋階段を降りていくと、エントランスには夜会でお目にかかった赤い髪の令嬢が艶やかな真っ赤なドレスに負けない位真っ赤になって騒いでいた。


『貴女ね！レオンハルト様を監禁してるのは！最近全く会いにもきてくれないと思ったら！』


アルベルタは驚きすぐに使用人を呼ぶ。


『あら大変。すぐにクズ‥じゃなくて旦那をお呼びになってさしあげて！』


しばらくするとレオンハルトが螺旋階段を滑り降りる様に降りてきて

『アンネ！』

驚くレオンハルトにアンネと言う令嬢が

『レオンハルト様！』

すぐに駆け寄り飛びついた。

アルベルタは急いで私室に戻りナターシャを呼んだ。


『ナターシャ！すぐに出掛けますわよ！』

ナターシャは

『どちらに行かれるのですか？』


‥。

『どちらにしましょう？』

頭を巡らせるアルベルタに

『行く宛もなくお出かけになられるのですか？』



アルベルタは顎に手を当て考える。

『だって旦那様のご令嬢がお見えになってるのよ？ほら、形ばかりとはいえお邪魔でしょう？』


ナターシャはイラっとしながら

『何故、奥様が出てかなければならないのですか？出ていくのはクズ達ですわ！』


憤るナターシャを宥めるように

『私としたことが‥この所クズの様子がおかしかったでしょう？何だか元気もなくて。彼女に会えて居なかったからだわ！妻として気が付かなくて申し訳ないもの。さあ、街までお出かけしましょうよ！』


そう言うと急いで着替えエントランスに向かうとちょうどレオンハルトと赤い髪の令嬢が居た。
アルベルタはナターシャを急がせ


『失礼しました。すぐに出掛けますので、ごゆっくり』


赤い髪の令嬢に声を掛けた。


レオンハルトはアルベルタを見ると


『そのドレスで出掛けるのか？』

アルベルタは首を傾げ


『おかしいですか？ナターシャが選んでくれたので間違いはないと思いますが‥』



‥


レオンハルトは小さな声で


『その、背中が開きすぎておらぬか？』


アルベルタは笑いながら


『あら、あなたのご令嬢の方はこれよりも胸が開いておりますわ！』


レオンハルトとアルベルタが令嬢の胸元を見ると
令嬢は自慢気に豊満な胸を押し出した。


アルベルタがナターシャを連れて馬車に乗り込もうとした時、レオンハルトはナターシャに声を掛けた。


『ナターシャ、客人がお帰りだ。』

ナターシャは驚きながらも赤い髪の令嬢を外までご案内をする。


馬車に乗り込みそこねたアルベルタはキョトンとその場に残された。


レオンハルトはアルベルタを睨み、

『私が呼んだ訳では無い。』

そう言うとまた螺旋階段を今度はゆっくりと上がって行った。