記憶を無くした公爵夫人【完】

mako

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夜会にて6

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アランがアーノルドに問う。


『アーノルド、お前どうしてしまった?あれ程までに有能なお前がこんな事。』


アーノルドは乾いた息を吐き

『殿下、私は昔から有能ではございませんでしたよ‥』


そう言うアーノルドに後から走ってきた令嬢の肩がぶつかる。

アランは王宮の廊下を走る令嬢に怪訝そうな表情を向けると、その令嬢はアルベルタの手を引き走り去って行った。

アランからは令嬢の顔が見えなかったが、アーノルドは令嬢を見て驚き目を見開いた。

後方を見るとレオンハルトが慌ててこちらへ来る。

アランは咄嗟に護衛騎士に前方の2人を捕える様に顎を突き出した。



螺旋階段を降り曲がると、令嬢は待たせてあった馬車にアルベルタを乗せ一緒に王宮を後にした。





『どうなっている!』

レオンハルトがアランと合流し護衛騎士に声をあげる。アランは冷静に

『レオ、落ち着け。ここでは何だから執務室で話そう。』

そう言うとアーノルドは礼を取りその場を後にしようとした所でアランは

『アーノルド、お前もだ。』

レオンハルトは驚きアランを見るがアランはそのままアーノルドを促し3人で執務室へ向かった。



『貴様、アルベルタはどこだ?』


アーノルドに詰め寄るレオンハルトをアランが制し

『アーノルドではない。』

レオンハルトが驚きアランを問い詰める。

『どういう事だ?』


アランはアーノルドを直視し

『だろう?』

アーノルドは黙って頷く。


『アーノルド、お前は兄上の側近だ。言えぬ事まで話せとは言わない。』


『はっ』

アーノルドは礼を取る。


『兄上だな?』


‥。アーノルドは答えないが、アランの顔も見ない。


『まあ、そもそも今夜の夜会はお前からアルベルタを離す為に私が独断で開催したものだ。だから招待客も上級貴族それも限られた者だけだ。


あの令嬢は外からは入れない。ならばどこから入ってきたのであろうな?』


アーノルドはアランからの視線を痛い程感じていたが顔を上げる事が出来ない。

『あの令嬢は誰だ?』

‥。

レオンハルトは苛立ちを隠せない。

『誰だと聞いている!』


アランは徐ろに溜息を吐いた。

『レオ、お前の悪い癖だぞ?アーノルドの立場になって考えてみろ。第2王子に仕えるお前とは違いアーノルドは第1王子である兄上に仕えている。

幼い頃からそれは神経をすり減らしてきたことだろう。弟として感謝している。だがな、アーノルドお前が最終的に忠誠を誓うのは兄上ではなく王国だろ?

兄上の暴走を止めるのもお前の仕事ではないのか?』


アーノルドはゆっくりと顔を上げる。


『私はいきなり侯爵家に養子に入り戸惑いながらも必死に使命を果たしてきて気づいたら殿下の側に仕える身となっていました。王太子になるべく教育を受ける殿下と共に忙しい毎日でした。

お二人を見て羨ましくもありました。心通わすお二人とは違い、殿下と私には一定の距離がございます。それでも必死になって‥。』



『そうだろうな。だからこそ、先程みたアルベルタを連れ出した令嬢に驚いたのであろう?お前のあの表情は確かに令嬢を知っている顔。そしてそれはお前の心を揺るがす相手であった。

それは兄上の側に置いている女性騎士であろう?』


アランの問い掛けにアーノルドは目を見開く。

アランはレオンハルトを見て静かに頷いた。








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