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公爵令嬢アナベルの涙
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どれだけ億劫でも理不尽でも王太子命により教育係を拝命した以上、公爵令嬢のアナベルはそれを拒否する事は出来なかった。
王宮で悠々自適な生活を送るエレナに主流派は混乱し反主流派はここぞとばかりにエレナを担ぎ出していた。そうすると次第に貴族の中では側妃の話題が嫌でも挙がってきた時に、いつも王宮でエレナと共に過ごしているアナベルに注目が集まるのに時間は掛からなかった。
エレナは次第に王宮での要求がエスカレートしていた。アナベルからの教育も何かにつけて早目に切り上げるようになっていた。だからといってアナベルが早く公爵邸に戻れる訳ではない。一応職務として、拝命している為にお給金が出ている。その為エレナがお友達を招待してお茶会を開いてようが王宮に留まって居なければならなかった。
もっぱらガゼボテラスで1人お茶会だ。
遠くで聞こえる品位の無い笑い声に頭を抱えながら現状を嘆いていると
『アナベル嬢!』
…出たよ。こいつは暇か?
アナベルはミハエルに膝を折ると
『だからいいから!ってまた暇を持て余してるのかな?』
ニヤニヤとアナベルを覗き込んだ。
…お前もな!
とは言えないアナベルは苦笑いで答えた。
『君も大変だね~。噂は耳に入ってるだろ?』
『噂?』
アナベルは顔を上げてミハエルを見た。
『エレナ嬢が王太子妃になれば…側妃が立てられる。』
『でしょうね。』
『大役じゃないか!まぁ今と状況は変わらないか。』
『お話しが見えませんわ。』
ミハエルはアナベルをじっと見つめるのでアナベルはこそばゆくなり視線をそらした。
『君しか居ないだろ?』
『はぁ?』
ミハエルは立ち上がるアナベルの腕を掴むと
『いやいや噂だよ。』
アナベルは大きく息を吐いて再び席に付いた。
『そんなのどうせゴシップネタが大好きな暇な貴族の暇つぶしですわ。』
『…あながちそうもと限らないよ?』
アナベルは眉間にシワを寄せ頭を巡らす。
…だって私は一応公爵令嬢だし…
『どうして男爵令嬢が王太子妃で側妃が公爵令嬢なの?って考えてるでしょう?』
図星を突かれたアナベルはぎょっと目を見開くとミハエルは尚も
『いやいやそう考えも不思議じゃない。逆なら分かるけどね。っていうかそんなに側妃は嫌?』
『…嫌とかではなくて。』
次の言葉が出てこないアナベルにミハエルはこう語る。
『今だってそうさ。』
『今?…王妃様は隣国の公爵家から嫁がれたと聞き及んでおります。』
『そうだね。そして私の母と兄であるランドルフの母君も我が国侯爵家から王族に入っている。』
…通常だわ。
『だけどね、私の母は帝国皇后陛下の母を持つ。いわゆる皇女であった。だから母は帝国の血を引く、そしてこの私もね。』
…!
『だからこういうケースも無いでは無い。特に今回は必要となってくるよね?だって我がトゥモルデン王国の王妃があのサルでは面目が保てないだろう?王妃といえば国のトップに並び立つ即ち国母であるよ?外交面からしても先ず無理だし相手国にも失礼だろ?だからさ、ぐうの音も出ない人材が必要なのさ。』
『ならば何故私なのですか?擦り付けるつもりはございませんが、それならば我が国、主流派である王族の血を分けた公爵令嬢がいらっしゃいますわ。』
『マリアンナ嬢?』
黙りこくるアナベルにミハエルは口角を少し上げ
『だから兄上が望まないって言っただろ?(笑)』
『そ、そんな事で?』
『先ずもって彼女を側妃と立てたなら我が国で反発が起こる。だけどその反発よりも大きなメリットがあれば問題ないけれど、彼女では他国から得られる物がその反発に比べて小さいんだよ。
だからわわざわざ切り札にもならない彼女を我が国の反発を招いてまでこのカードを切る必要がないだろ?』
…カードって。こいつクズだわ。
『だったらこの国で殿下の仰る切り札など誰もなり得ませんわ。』
ここでまたミハエルはニヤリと笑いながら
『それがある。』
『…?』
『君の母君はどこの国から嫁がれた?』
目を見開くアナベルはミハエルを真っ直ぐ見据えて口を開く。
『確かに母はリルム王国王室から嫁いで参りましたが王女といえど、殿下もご存知の通り吹けば飛ぶ程の小さな国ですわ。』
『うん、そうだね。我が国の公爵家の方が大きい位だ。だけどね?ならば何故その吹けば飛ぶ程の小国が今も尚もどこの属国にもならずに独立国家として成り立っているんだろうね。』
『…。』
『聖女』
アナベルは小さく笑い目の前の冷めきったカップを手に取った。
『そんなおとぎ話のような話を殿下は信じていらっしゃるのですか?』
『いいや。だけどねこれまで長い年月、何度もリルム王国を手に入れようとした国がある。でもそのどれもが失敗に終わってる。戦力もないリルムにだよ?』
『…。』
『攻め入る国は皆、引き返すしか無かったという。ある時は流行り病におかされ、ある時は天災に襲われ、そしてある時も…いつも王宮まで剣を持ち込む事が出来なかったという。
それにリルム王国は温暖で資源に恵まれいる。帝国はじめ大陸の多くの国はリルムの資源を輸入している。そのリルムを独り占めしようもんなら他国から袋叩きにあうよね?
そんな国の王室の血を引く君は我が国に取って外交の大きな切り札となるだろう?』
『切り札って…。』
『所詮我々はこの国の駒だからね。』
『駒…。』
アナベルの大きな瞳が潤んでくるのを見たミハエルは驚いたように見つめながらも
『生憎私は、女性の涙に弱くはないんだ。』
アナベルは涙を零すまいとは必死で耐えながら
『涙ではございませんわ。埃っぽいですわね。』
そう言いと静かに立ち上がり最上級のカーテシーを披露し踵を返して王宮を後にした。その姿を見送りながらミハエルは今まで感じた事の無い心の痛みとそして得体の知れない感情に苛まれた。
『参ったな…』
ミハエルは長い指を髪の毛に這わせワシャワシャと掻き天を仰いだ。
王宮で悠々自適な生活を送るエレナに主流派は混乱し反主流派はここぞとばかりにエレナを担ぎ出していた。そうすると次第に貴族の中では側妃の話題が嫌でも挙がってきた時に、いつも王宮でエレナと共に過ごしているアナベルに注目が集まるのに時間は掛からなかった。
エレナは次第に王宮での要求がエスカレートしていた。アナベルからの教育も何かにつけて早目に切り上げるようになっていた。だからといってアナベルが早く公爵邸に戻れる訳ではない。一応職務として、拝命している為にお給金が出ている。その為エレナがお友達を招待してお茶会を開いてようが王宮に留まって居なければならなかった。
もっぱらガゼボテラスで1人お茶会だ。
遠くで聞こえる品位の無い笑い声に頭を抱えながら現状を嘆いていると
『アナベル嬢!』
…出たよ。こいつは暇か?
アナベルはミハエルに膝を折ると
『だからいいから!ってまた暇を持て余してるのかな?』
ニヤニヤとアナベルを覗き込んだ。
…お前もな!
とは言えないアナベルは苦笑いで答えた。
『君も大変だね~。噂は耳に入ってるだろ?』
『噂?』
アナベルは顔を上げてミハエルを見た。
『エレナ嬢が王太子妃になれば…側妃が立てられる。』
『でしょうね。』
『大役じゃないか!まぁ今と状況は変わらないか。』
『お話しが見えませんわ。』
ミハエルはアナベルをじっと見つめるのでアナベルはこそばゆくなり視線をそらした。
『君しか居ないだろ?』
『はぁ?』
ミハエルは立ち上がるアナベルの腕を掴むと
『いやいや噂だよ。』
アナベルは大きく息を吐いて再び席に付いた。
『そんなのどうせゴシップネタが大好きな暇な貴族の暇つぶしですわ。』
『…あながちそうもと限らないよ?』
アナベルは眉間にシワを寄せ頭を巡らす。
…だって私は一応公爵令嬢だし…
『どうして男爵令嬢が王太子妃で側妃が公爵令嬢なの?って考えてるでしょう?』
図星を突かれたアナベルはぎょっと目を見開くとミハエルは尚も
『いやいやそう考えも不思議じゃない。逆なら分かるけどね。っていうかそんなに側妃は嫌?』
『…嫌とかではなくて。』
次の言葉が出てこないアナベルにミハエルはこう語る。
『今だってそうさ。』
『今?…王妃様は隣国の公爵家から嫁がれたと聞き及んでおります。』
『そうだね。そして私の母と兄であるランドルフの母君も我が国侯爵家から王族に入っている。』
…通常だわ。
『だけどね、私の母は帝国皇后陛下の母を持つ。いわゆる皇女であった。だから母は帝国の血を引く、そしてこの私もね。』
…!
『だからこういうケースも無いでは無い。特に今回は必要となってくるよね?だって我がトゥモルデン王国の王妃があのサルでは面目が保てないだろう?王妃といえば国のトップに並び立つ即ち国母であるよ?外交面からしても先ず無理だし相手国にも失礼だろ?だからさ、ぐうの音も出ない人材が必要なのさ。』
『ならば何故私なのですか?擦り付けるつもりはございませんが、それならば我が国、主流派である王族の血を分けた公爵令嬢がいらっしゃいますわ。』
『マリアンナ嬢?』
黙りこくるアナベルにミハエルは口角を少し上げ
『だから兄上が望まないって言っただろ?(笑)』
『そ、そんな事で?』
『先ずもって彼女を側妃と立てたなら我が国で反発が起こる。だけどその反発よりも大きなメリットがあれば問題ないけれど、彼女では他国から得られる物がその反発に比べて小さいんだよ。
だからわわざわざ切り札にもならない彼女を我が国の反発を招いてまでこのカードを切る必要がないだろ?』
…カードって。こいつクズだわ。
『だったらこの国で殿下の仰る切り札など誰もなり得ませんわ。』
ここでまたミハエルはニヤリと笑いながら
『それがある。』
『…?』
『君の母君はどこの国から嫁がれた?』
目を見開くアナベルはミハエルを真っ直ぐ見据えて口を開く。
『確かに母はリルム王国王室から嫁いで参りましたが王女といえど、殿下もご存知の通り吹けば飛ぶ程の小さな国ですわ。』
『うん、そうだね。我が国の公爵家の方が大きい位だ。だけどね?ならば何故その吹けば飛ぶ程の小国が今も尚もどこの属国にもならずに独立国家として成り立っているんだろうね。』
『…。』
『聖女』
アナベルは小さく笑い目の前の冷めきったカップを手に取った。
『そんなおとぎ話のような話を殿下は信じていらっしゃるのですか?』
『いいや。だけどねこれまで長い年月、何度もリルム王国を手に入れようとした国がある。でもそのどれもが失敗に終わってる。戦力もないリルムにだよ?』
『…。』
『攻め入る国は皆、引き返すしか無かったという。ある時は流行り病におかされ、ある時は天災に襲われ、そしてある時も…いつも王宮まで剣を持ち込む事が出来なかったという。
それにリルム王国は温暖で資源に恵まれいる。帝国はじめ大陸の多くの国はリルムの資源を輸入している。そのリルムを独り占めしようもんなら他国から袋叩きにあうよね?
そんな国の王室の血を引く君は我が国に取って外交の大きな切り札となるだろう?』
『切り札って…。』
『所詮我々はこの国の駒だからね。』
『駒…。』
アナベルの大きな瞳が潤んでくるのを見たミハエルは驚いたように見つめながらも
『生憎私は、女性の涙に弱くはないんだ。』
アナベルは涙を零すまいとは必死で耐えながら
『涙ではございませんわ。埃っぽいですわね。』
そう言いと静かに立ち上がり最上級のカーテシーを披露し踵を返して王宮を後にした。その姿を見送りながらミハエルは今まで感じた事の無い心の痛みとそして得体の知れない感情に苛まれた。
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