反主流派の公爵令嬢ですが何か?【完】

mako

文字の大きさ
12 / 70

キレるアナベル

しおりを挟む
アナベルは毎日登城している。日に日に増す不安からアナベルもたいそう疲れを溜め込んでいた。


『アナベル様。領地についてや産業についてましてや外国の言葉なんて必要あります?』


…いや寧ろ必要でしかないでしょうに。



王太子妃になればこんなものでは済まないであろう。貴族令嬢が先ず習うトゥモルデン王国の歴史も知らぬエレナが不憫に思えてきた。


『エレナ様?貴女の為にこのような時間を設けられておりますのよ?もう少し身を入れて頂かないといけませんわ。』


『でも、代わりにやってくれる人が居るのでしょう?あっ!アナベル様が代わりにやってくれればよろしいのでは?わざわざ私に教えて頂かなくてもその方が効率的だわ。ね?』


…やってくれる。何を?代わりに?


恐らく王太子妃の事を言っているのであろう。既にそこまで話しが進んでいるのかと絶望感を覚えるアナベルは目の前の冷めきったお茶を口に含んだ。



『どう?進んでいるかい?』


颯爽と現れたライドにアナベルは殺意を覚えた。


…自分が拾ってきた野良猫だろうが?責任持て!

と言いたいけれど言えないアナベルは強張った笑顔をわざとらしくライドに送った。



『ライド様!励ましに来てくださったのですね!アナベル様はとても親切に教えて下さいますので沢山お勉強してますのよ。うふふ。』


『それは偉いね。』


黄金の王子様スマイルをエレナに送ると2人は笑顔で見つめ合っている。


…よそでやってくれ


『我が国の歴史や領地のついて、カーテシーも実は奥が、深いのですよ!』


『そうかそんな事まで。あまり詰め込まないようにしなきゃね。』


アナベルは人が変わったようなエレナの姿に届き固まってしまった。


…怖いわ、この子。


満足したのかライドはアナベルに

『これからも頼むね。』


と満面の笑みを送るとエレナに手を振り部屋を後にした。



ふぅ~と大きく伸びをしたエレナはピョンピョンと靴を脱ぎ捨てソファに沈んだ。


初めて見る光景にアナベルはまたも絶句した。


…凄いわ、何した今?


脱ぎ捨てられた靴を眺めながらアナベルは頭を抱えた。


『はぁ~疲れた。今日はもうよろしいわ。私この後お友達を呼んでいるの。王宮なんてみんな来たことないから楽しみにしているのです。だから招待したのよ。』


『招待?』


『はい、ご令嬢でも王宮に来たことない人は憧れみたいなの。貴女もそうでしょう?今、私の先生だから毎日王宮に来られるんだから』


…いや、来たくてきてんじゃないし


遠く離れた男爵家から通うのは大変とかで王宮に住み込みで教育を受けているエレナであるが、もはや我が家の如く慣れ親しんでいるではないか。

これも全てライドの脳内お花畑に起因するのだ。
怒りが爆発する前にアナベルはエレナの部屋、ではなくてエレナが滞在しているだけの部屋を後にした。



…駄目だ、おかしくなりそうだわ!




『アナベル嬢!』


アナベルは、もはや声だけで声の主が分かるまでになったミハエルの声にさらなる悲壮感が襲ってくるのが分かった。


…よりによって今?


アナベルは強張った笑顔で振り向いた。


『ありゃりゃ相当酷い顔してるね。』


…ほっとけよ!


『まだ時間はあるだろ?こっちこっち!』


連れられてこられたのは中庭のガゼボテラス。



『殿下、私お茶を飲んでる気分ではございませんが?』


『わかってるよ、お茶だけじゃなく外国から届いたケーキも用意させてるから待ってて。』


…ケーキ?外国?ま、まぁ少しだけなら。


アナベルは今か今かとケーキを待った。


『で?酷いだろ?あのサル。』


『私は私に出来る範囲でやるだけですから。』


『その割にはキレそうだったけど?』


『キレてません。』


『そう?』


ケーキが到着するまでにもはやキレそうなアナベルに尚も


『あのサル。俺にまでシッポ振ってんの!笑えるよな!』


アナベルはケーキを待つ視線をミハエルに向けると


『はぁ?』


心の声をそのままに発したアナベルに


『だから俺にキレてどうするよ?』


『キレてないし!』


『キレてるよ。』 


アナベルの怒りは最もだ。真実の愛とやらで巻き込まれて何の因果か教育係りを拝命している。それが真実の愛では無いのであれば自分は何しにここに通い詰めているのであろうか?

王太子妃になろうという令嬢が他の王子に色目を使うとは言語道断。夢見る令嬢のアナベルからすれば許し難い行為。


アナベルはケーキを到着を待つ前に席を立った。


『ねえ!待って!』

『このままではまた私は不敬を働きそうでございます。私の為にどうか放免下さい!』

それだけ言うとアナベルは王宮を後にした。


…やってられないわ!  
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

完璧すぎると言われ婚約破棄された令嬢、冷徹公爵と白い結婚したら選ばれ続けました

鷹 綾
恋愛
「君は完璧すぎて、可愛げがない」  その理不尽な理由で、王都の名門令嬢エリーカは婚約を破棄された。  努力も実績も、すべてを否定された――はずだった。  だが彼女は、嘆かなかった。  なぜなら婚約破棄は、自由の始まりだったから。  行き場を失ったエリーカを迎え入れたのは、  “冷徹”と噂される隣国の公爵アンクレイブ。  条件はただ一つ――白い結婚。  感情を交えない、合理的な契約。  それが最善のはずだった。  しかし、エリーカの有能さは次第に国を変え、  彼女自身もまた「役割」ではなく「選択」で生きるようになる。  気づけば、冷徹だった公爵は彼女を誰よりも尊重し、  誰よりも守り、誰よりも――選び続けていた。  一方、彼女を捨てた元婚約者と王都は、  エリーカを失ったことで、静かに崩れていく。  婚約破棄ざまぁ×白い結婚×溺愛。  完璧すぎる令嬢が、“選ばれる側”から“選ぶ側”へ。  これは、復讐ではなく、  選ばれ続ける未来を手に入れた物語。 ---

悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜

咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。 もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。 一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…? ※これはかなり人を選ぶ作品です。 感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。 それでも大丈夫って方は、ぜひ。

婚約破棄されたので隣国に逃げたら、溺愛公爵に囲い込まれました

鍛高譚
恋愛
婚約破棄の濡れ衣を着せられ、すべてを失った侯爵令嬢フェリシア。 絶望の果てに辿りついた隣国で、彼女の人生は思わぬ方向へ動き始める。 「君はもう一人じゃない。私の護る場所へおいで」 手を差し伸べたのは、冷徹と噂される隣国公爵――だがその本性は、驚くほど甘くて優しかった。 新天地での穏やかな日々、仲間との出会い、胸を焦がす恋。 そして、フェリシアを失った母国は、次第に自らの愚かさに気づいていく……。 過去に傷ついた令嬢が、 隣国で“執着系の溺愛”を浴びながら、本当の幸せと居場所を見つけていく物語。 ――「婚約破棄」は終わりではなく、始まりだった。

竜帝に捨てられ病気で死んで転生したのに、生まれ変わっても竜帝に気に入られそうです

みゅー
恋愛
シーディは前世の記憶を持っていた。前世では奉公に出された家で竜帝に気に入られ寵姫となるが、竜帝は豪族と婚約すると噂され同時にシーディの部屋へ通うことが減っていった。そんな時に病気になり、シーディは後宮を出ると一人寂しく息を引き取った。 時は流れ、シーディはある村外れの貧しいながらも優しい両親の元に生まれ変わっていた。そんなある日村に竜帝が訪れ、竜帝に見つかるがシーディの生まれ変わりだと気づかれずにすむ。 数日後、運命の乙女を探すためにの同じ年、同じ日に生まれた数人の乙女たちが後宮に召集され、シーディも後宮に呼ばれてしまう。 自分が運命の乙女ではないとわかっているシーディは、とにかく何事もなく村へ帰ることだけを目標に過ごすが……。 はたして本当にシーディは運命の乙女ではないのか、今度の人生で幸せをつかむことができるのか。 短編:竜帝の花嫁 誰にも愛されずに死んだと思ってたのに、生まれ変わったら溺愛されてました を長編にしたものです。

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?

灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。 しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?

【完結】 笑わない、かわいげがない、胸がないの『ないないない令嬢』、国外追放を言い渡される~私を追い出せば国が大変なことになりますよ?~

夏芽空
恋愛
「笑わない! かわいげがない! 胸がない! 三つのないを持つ、『ないないない令嬢』のオフェリア! 君との婚約を破棄する!」 婚約者の第一王子はオフェリアに婚約破棄を言い渡した上に、さらには国外追放するとまで言ってきた。 「私は構いませんが、この国が困ることになりますよ?」 オフェリアは国で唯一の特別な力を持っている。 傷を癒したり、作物を実らせたり、邪悪な心を持つ魔物から国を守ったりと、力には様々な種類がある。 オフェリアがいなくなれば、その力も消えてしまう。 国は困ることになるだろう。 だから親切心で言ってあげたのだが、第一王子は聞く耳を持たなかった。 警告を無視して、オフェリアを国外追放した。 国を出たオフェリアは、隣国で魔術師団の団長と出会う。 ひょんなことから彼の下で働くことになり、絆を深めていく。 一方、オフェリアを追放した国は、第一王子の愚かな選択のせいで崩壊していくのだった……。

処理中です...