反主流派の公爵令嬢ですが何か？【完】

驚きの展開

アナベルは申し訳なさそうに顔を上げるとそこにはトゥモルデン王国王太子のオーラを隠しにこやかに微笑むライドがアナベルに優しい微笑みを送っていた。

『私の妃となる令嬢は遥か昔から決まっていたんだ。』


アナベルは目の前のライドをまじまじと見た。アナベルの知るライドは絵姿の中でこちらを見る姿。もしくは遠くから見た事がある程度しか知り得ないアナベル。勿論それは公爵令嬢として恥ずべき事。しかし今はキラキラと眩しい笑顔に吸い込まれそうになりながら息を飲んでいた。

…決まっていた？なるほどエレナ様ほどではなくとも王太子妃だけで執務が出来ないお方ということか。


アナベルは公爵令嬢として覚悟を決めた、あの夜からの想いに相違は無い。王宮での生活は側妃として使えるかどうかを見極める為だったのだ。

『では私は側妃としての役割は果たせそうだとご判断頂けだと言うことですね？』


アナベルの言葉に目の前の兄弟は、仲良く固まった。

『ミハエル様も仰ったように、私にはもうお話しして頂けるのですよね？それで王太子妃となられるお方はどなたですの？』


今度は仲良く顔を見合わせ首を捻っていた2人であるがライドの方が口を開いた。


『私は側妃を娶る予定はないよ？』


今度はアナベルが固まる。

…いやいや、待て待て。ならばあの王宮生活は何やったんですか？


アナベルは怪訝そうにライドを見た。


2人の間に流れる湿った空気を察したミハエルはニヤリと口角を上げ立ち上がるとデキャンタに入れられた水をコップに注いだ。


『兄上、彼女は大きな勘違いをしているようだ。』


ライドも同じく頷き

『私もそう思う。アナベル嬢、私の妃になるは君だよ？』


何故か目の前の2人のやり取りに不快感を覚えたアナベルは口調を強く

『ですからそれは存じておりますわ！私が妃と…妃？へっ？』


口をポカンと開けたまま今度はアナベルが硬直した。ミハエルはまたも己の口に手を当て

『口！口が開いてる！仮にも君はこの国の公爵令嬢だよ！』


ミハエルの言葉はまたもアナベルに届く事はなくアナベルは瞬きだけを繰り返していると


『驚くのも無理はないよ。ね？アナベル嬢。』


ね？ではない。

…。


『君、さっきは側妃の覚悟は有ると言ってたじゃないか。側妃も正妃もやる事は変わらないから君なら大丈夫だよ。』


ミハエルが第3王子の表情を纏い詰める。


…いやいや側妃と王太子妃とではえらい違いではないか？


『お待ち下さい。私はヴィヴォワール家でございます。その…一応と言いますか…』


言いにくそうにミハエルに視線を流すと


『何？第3王子派って事？君、話聞いてた？』


何故がミハエルはアナベルに手厳しい。


『アナベル嬢、私はずっと昔から決めてたよ？だって約束したじゃない？』


…約束って何？いやいやそれ私じゃないし、ってか私は引きこもり令嬢でしたからね？


『恐れながら殿下、どなたかとお間違えかと。私はご存知の通り社交界には殆ど出ておりません。』


『うん、知ってるよ。君が社交界に出ていたらこの話はもっと早くに進んでいたかもしれないけどね？だって他所の誰かに持ってかれちゃったら大変だもん。逆に私には好都合だったんだ。君の引きこもり。』


引きこもりを肯定されるのは初めての事だが…


『何故、私なのでしょうか？これは王命という事でしょうか？』


ライドは驚いたように目を見開くと

『そんな仰々しい事言わないでくれよ。』

…その仰々しい事をなさろうとしていらっしゃいますが？


アナベルは目の前の王太子を不思議そうに見つめた。