反主流派の公爵令嬢ですが何か？【完】

王宮での日常

アナベルはあれから王太子妃教育ではなく、エレナの教師として王宮に上がっていた際に王太子の執務を手伝っていた功績？を認められ正式に王宮からの依頼を受け登城するようになっていた。

初めこそ気乗りしないアナベルであったが、以前も感じていたように執務は嫌いではなく寧ろ性に合っている。


『アナベル嬢、おはよう。今日は私が午前中に視察があるから留守にするんだ。だから君の仕事が増えてしまって申し訳ないんだけど…』


眉を下げ申し訳なさそうに話すライドにアナベルは積上げられた書類に目をやると腕まくりをしながら

『殿下、この位なんて事ごさませんわ。それよりも気を付けてお出かけ下さい。』


それだけ言うとデスクにかじりつくアナベルを微笑みながらライドは見つめていた。

『では私はそろそろ出かけるから、程々にやってくれて構わないからね。』　

アナベルは格闘する書類を睨みつけながら

『はい！いってらっしゃいませ！』　


目線も合わせる事なくも発せられた言葉に苦笑いを浮かべライドは執務室を後にした。



怒涛のような時間を過ごし一息ついた頃にはもうお昼であった。片付けられた書類を満足気に眺めるアナベルに侍従がお茶を持って入ってきた。


『アナベル様、お昼はいかがなさいますか？』


アナベルは少し考え

『そうね、今日は殿下もいらっしゃらない事だしこのままここで頂くわ。何か軽い物でもご用意頂けますか？後少しだから片付けちゃいたいの。』


侍従も嬉しそうに

『流石でございますね。ではこちらへご用意いたしますね。』


アナベルは笑顔で頷きまたも書類と格闘を始めた。しばらくするとノックと共に扉が開かれるとランチを運ぶミハエルがテーブルに自らサンドイッチとスープをセットしている。


『あの、何をなさっておられるのですか？』

アナベルは目を凝らしてミハエルを凝視するとミハエルは平然とテーブルに食事を並べながら


『見て分からない？テーブルにセッティングしているんだ。』

『そんな事は猫でも分かりますわ？何故殿下がセッティングをされておられるのかを問うておりますの！』


ミハエルは美しく並べられた食事に満足そうに頷くと


『本当君は一言多いよね。猫では分からないだろうけど？さぁ食べよう！』


アナベルはテーブルに美しく並べられた食事に誘われミハエルの前に腰をおろした。


『…殿下。このような所でお食事されなくても殿下の分はきちんとご用意されておりますわ。』

ミハエルは小さなサンドイッチを一口で頬張ると
嬉しそうにスープを口に運んだ。


『たまにはいいじゃない？こういうのも。ところでさ、王宮でも君の評判はうなぎ登りさ。引きこもり令嬢のレッテルなどすぐに払拭され今では王太子妃候補ナンバーワンとも言われているよ。』


今までのアナベルならばすぐさま反論する所であるがミハエルの前でこれまた嬉しそうにサンドイッチを頬張るアナベルはにこやかに食事を楽しんでいる。


『覚悟は決まったんだね？』

どことなく元気のないミハエルの言葉にアナベルは不思議そうに答えた。


『殿下はそれをお望みでしたよね？我が派閥から何とかっておっしゃっていらしたわ？』


『…そうだけど。君だって兄上の事を脳内お花畑だって怒ってたよね？』


アナベルは思い出したかのように笑うと


『アハハ、そうでしたわね。』

楽しそうにクスクスと笑った。