反主流派の公爵令嬢ですが何か?【完】

mako

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失態

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アナベルが乗る公爵家の馬車は先ほど具合を悪くした令嬢にユリウスが貸しアナベルは王宮の馬車で公爵邸に戻らなければならない。王宮の馬車が待機している所まで来るとアナベルを待っていたかのように扉が開かれるとアナベルは俯きながら乗り込んだ。しばらくしても動く気配の無い馬車にアナベルが窓の外を見ると使用人が申し訳なさそうに扉を開いた。

『申し訳ありません。正面は帰路につく馬車で混み合っておりますので裏側から出る許可が下りるのを待っている所でございます。』

遠くの様子を伺いながら頭を下げる使用人にアナベルは逆に申し訳なくなり小さく頭を下げた。


正面からの出口は爵位の高い馬車から王宮を出る為に皆、順番待ちをしているのだ。普段ならば早々に王宮を出るアナベルだが今宵は珍しく馬車で待機中だ。申し訳なく思った使用人は果実水を片手に扉を開け

『よろしればどうぞ。ただいま裏口から出る事が許可されましたのですぐに出ます。』

流石は王宮の使用人だ。無駄な事は話さずそれでいて柔らかい表情だ。アナベルは安堵感からすぐに果実水を口に含み重い瞼を閉じた。





目が覚めるとアナベルは頭を巡らせた。


…えっと?


確か王宮馬車で王宮を出た。混雑しているから裏口から外に出たのを覚えている。そして睡魔に誘われるまま瞼を閉じた。さすれば目が覚めるのは自宅である公爵邸でなければならない。


しかし、アナベルが居るのは馬車でもなく、公爵邸でもない。


…どこ?


ぐるりと見渡すと、お世辞にも趣味がいいとは言えない派手な部屋だ。アナベルも見たこともない形式の部屋の造り。恐らく貴族の屋敷ではない事は分かる。

分かるはいいが何故自分がここに居るのだろうか?それが分からなければ始まらない。


あれからどれくらい経ったのかも分からずアナベルは目の前にある見覚えの有る果実水を一気に飲み干した。


…あぁ生き返ったわ。それにしても感じの良い使用人だったわね。


馬車で受け取った果実水の瓶を眺めながらそんな事を考えていたアナベルだが次第に身体が熱に帯びてくるのを感じた。これまで感じた事の無い感覚にアナベルは息遣い荒く己の身体を案じた。


…ハァ~ハァ~何これ。どうした私。

落ち着かせようと心を沈ませるも身体の熱はどんどんとこもっていく。目が虚ろになり視界が定まらないアナベルは思考回路が停止してしまっていた時部屋の左端にある木のドアが乱暴に開かれた。


『やぁ待たせたね!』


待ってもいないアナベルは目の前にニヤニヤと近づいてくる男に危機感を覚え後ろに下がるも息は荒いままだ。

『アナベル嬢、噂には聞いていたけどそれ以上だよ。でもこんな事をしているなんて勿体ないなぁ。ってことはアナベル嬢は王太子妃には最初からなれなかった訳だね。そりゃぁそうか第3王子派だもんね、君のところは。』


アナベルは訳の分からない事を言う目の前の男に力の限り声を上げた。


『どこの誰か存じませんが助けて下さいませんか?なんか、なんかおかしいのです!熱くて!』


男はアナベルが自分を知らない事に立腹したのかアナベルの顎を持ち上げると


『何?そういう設定なの?ってかさいくら公爵令嬢っていってもさ、伯爵令息なんぞ知らねえよってのはあんまりじゃないの?見ず知らずの男と媚薬で楽しもうとしてるくせにさ!』


男は自らもその媚薬と称する果実水を飲もうとしたがアナベルは咄嗟にそれを奪い取り床に叩きつけると瓶は激しく割れ散った。


『お前!いい加減にしろよ!どういうつもりか知らないけどなこんな所まで来てやったのに何だよその態度!』


男は上着を脱ぎ捨て、アナベルを抱き寄せると


『どうせ純血でなければ君の価値は無いんだ。だからこんな事してんだろ?そんな素振りはいいからほら?』


アナベルは拒絶の涙が流れるも身体は男の愛撫を心待ちにしているかのように熱を帯びてきている。潤んだ瞳に荒い息遣いに男はますます興奮を覚え遂にはアナベルをベットに押し倒し一気にドレスを剥がしていく。


…嫌!


声にならないアナベルは心と身体がバラバラで壊れてしまいそうになる時にけたたましい音をたて屋敷に飛び込んで来たのはまさかのライドであった。

乱暴に現れたライドに男は心の底から


『殿下!どうされましたか?』

本当にライドを案じているその男に


『どうされたか?だと。お前は何をしているか分かっているのか?』

既に確保されているアナベルを横目に


『え?殿下も?え?』


混乱している男を見てライドは護衛に顎を突き出した。


…連れてけ!


男は半裸のまま捕らえられ訳もわからず連れて行かれると部屋にはアナベルとライドが残された。ライドはアナベルに近づくとアナベルは声も出す事も出来ず首を横に振りながら剥がされたドレスを胸に当てながら涙を流し、それでいて息は荒い。


…来ないで!


必死に訴えるアナベルの思い虚しくライドはアナベルを抱き込んだ。

アナベルは必死に尚も首だけを横に振り解毒するのをひたすら待つ。真っ赤に悶えながら涙を流し首を振るアナベルにライドを突き放した。

『大丈夫、大丈夫だから。恐らくこの媚薬の効力は数時間だ。今私が楽にしてあげるから』

あれこれ頭を巡らせるライドの視界には
どんどん熱を帯び、息遣いは激しくなり悶え続けるアナベルにライドは堪らず再び抱き込み唇を塞ぐとアナベルをホールドしアナベルを解そうとするも、どこにそんな力があったのかと思われる程の力でアナベルはライドを突き放した。


『私に触れられるのがそんなに嫌なの?』


ライドは悲しげにアナベルを見るもアナベルは首を横にひたすら振り続けている。その様子をただ見守るしかないライドは唇を噛み締め近くにあった椅子を蹴り倒した。


アナベルは自身で耐えながら呟いた。

『ハァ、ハァ、純血じゃなければならないから…』


…?


ライドはそのおぞましい光景をただひたすら見守るしか無かった。






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