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腐っても公爵令嬢
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『ヴィヴォワール公爵が到着されました。』
扉の向こう側からの言葉にライドは我に返りアナベルに熱い視線を送り静かに部屋を後にした。
残された2人の間にしばし流れる沈黙。
…。
…。
ミハエルは大袈裟までのため息を付くと
『君も分からない人だね。王太子妃にはなれないと言っていたにも関わらず王太子妃になるための資格は欲しいなんて。私には分からないよ。』
アナベルは小さくため息を落とすとゆっくりと起き上がった。
『殿下、殿下はこの国を出られるですか?それとも…』
その後の言葉を吐き出す事を躊躇い俯いた。
ミハエルは俯くアナベルをしばらく見つめていたもののゆっくりと立ち上がり窓辺に立ち部屋の中に風を入れた。
『君は今後身の振り方をどう考えているんだい?君の返答次第で答えが変わってくるけど。』
『私の?』
『そうだ。』
ミハエルは短く答えるとそれ以上の言葉を発しなかった。
『私は…。』
アナベルは戸惑いながらも1つ頷きミハエルの視線を真っ直ぐに受け背筋を伸ばした。
『私は公爵令嬢ですが引きこもり令嬢でしたので貴族会の不文律は分かりかねます。』
ミハエルはいつもの笑顔を浮かべると
『分かってるよ?それでこそ君だ。』
『殿下の仰るように我が家門は第3王子派ですから公爵令嬢として今のこの時世を加味すると殿下の妃の椅子を取りに行くのでしょうね。』
『だね。』
『私もそう思いますが、私の心は…貴族令嬢としてあるまじき事ですが、王太子妃に、いえライド殿下の妃になりたいと願うようになりました。』
ミハエルは柔らかい微笑みを浮かべアナベルを見つめている。このような視線をアナベルはミハエルから受けた記憶が無い。
『ですから私は王太子妃、いいえ例えそうならなくともライド殿下をお支えしたいのです。だからこそ殿下の行く末をお尋ねしたのです。』
『なるほどね。巷で言われるように私が帝国の血を盾に兄上を廃太子させても君は兄上と一緒になりたいということだね?』
アナベルは小さく微笑むとそのまま俯いた。
『そうなった場合、ライド殿下にとって公爵令嬢の私の駒としての使い道は無くなるかもしれませんけど…』
…。
ミハエルは俯くアナベルを驚いたように凝視すると
『君、大きな勘違いをしていないか?兄上は公爵令嬢の君を欲している訳じゃないだろ?』
…え?
アナベルは顔を上げ不思議そうにミハエルを見た。ミハエルはその視線を驚いたように受け、やがて呆れた眼差しをアナベルに向けた。
『君は存分鈍いんだね。いくら引きこもりでも驚いたよ。兄上はね、君が王宮へと通わなくなってから怒ってたよ。』
『途中で投げ出した結果になりましたものね。』
ミハエルは頭を掻きむしると
『だぁ~違うだろ!そうじゃない。君がどうして王宮へ通わなくなったかなんて兄上はすぐに分かったんだよ。兄上の足を引っ張る輩を気にしてる事なんてこの私にだってわかるよ。でもそれってそんな輩の力如きに兄上が陥れられる事を危惧してるって事。裏を返せばその程度の力としか見て無いって事だろ?兄上を。』
アナベルは目を見開き大きく首を振った。
『違います!』
『違わないよ!少なくとも兄上は君にそんな事を思わせる己の至らなさだと嘆いておられたよ。そんな事はないのに。この国の安寧は一重に長年の兄上の努力の賜物なのにだ。それなのに君はは媚薬で侵されながらも純血純血ってうなされているんだ。兄上からしたらそれほどまでに私の妃になりたいが為の君を目の前にして愛している女を解す事も出来ず…。』
ミハエルは顔を顰めながらアナベルの前までくると真顔になった。
『そうしてもう1つ。君は巷の噂に流され過ぎて大切な事を忘れているよ。』
『え?』
『君はこの国の公爵家の一人娘だ。その令嬢が王太子妃を狙って何がおかしい?派閥などくだらないものに囚われている貴族らと何ら変わりないよ』
アナベルは頭を金づちで打ち付けられた気がした。
…そうだ。私は腐っても引きこもっても公爵令嬢なんだわ。
『私、王太子妃になりたいです!なります!』
いきなり水を得た魚のように生き生きとしだしたアナベルにミハエルはすかさず口を開く。
『あのね、そんな事私に言われてもね…兄上に言ってくれよ。』
ミハエルは目の前の公爵令嬢に優しく微笑んだ。
扉の向こう側からの言葉にライドは我に返りアナベルに熱い視線を送り静かに部屋を後にした。
残された2人の間にしばし流れる沈黙。
…。
…。
ミハエルは大袈裟までのため息を付くと
『君も分からない人だね。王太子妃にはなれないと言っていたにも関わらず王太子妃になるための資格は欲しいなんて。私には分からないよ。』
アナベルは小さくため息を落とすとゆっくりと起き上がった。
『殿下、殿下はこの国を出られるですか?それとも…』
その後の言葉を吐き出す事を躊躇い俯いた。
ミハエルは俯くアナベルをしばらく見つめていたもののゆっくりと立ち上がり窓辺に立ち部屋の中に風を入れた。
『君は今後身の振り方をどう考えているんだい?君の返答次第で答えが変わってくるけど。』
『私の?』
『そうだ。』
ミハエルは短く答えるとそれ以上の言葉を発しなかった。
『私は…。』
アナベルは戸惑いながらも1つ頷きミハエルの視線を真っ直ぐに受け背筋を伸ばした。
『私は公爵令嬢ですが引きこもり令嬢でしたので貴族会の不文律は分かりかねます。』
ミハエルはいつもの笑顔を浮かべると
『分かってるよ?それでこそ君だ。』
『殿下の仰るように我が家門は第3王子派ですから公爵令嬢として今のこの時世を加味すると殿下の妃の椅子を取りに行くのでしょうね。』
『だね。』
『私もそう思いますが、私の心は…貴族令嬢としてあるまじき事ですが、王太子妃に、いえライド殿下の妃になりたいと願うようになりました。』
ミハエルは柔らかい微笑みを浮かべアナベルを見つめている。このような視線をアナベルはミハエルから受けた記憶が無い。
『ですから私は王太子妃、いいえ例えそうならなくともライド殿下をお支えしたいのです。だからこそ殿下の行く末をお尋ねしたのです。』
『なるほどね。巷で言われるように私が帝国の血を盾に兄上を廃太子させても君は兄上と一緒になりたいということだね?』
アナベルは小さく微笑むとそのまま俯いた。
『そうなった場合、ライド殿下にとって公爵令嬢の私の駒としての使い道は無くなるかもしれませんけど…』
…。
ミハエルは俯くアナベルを驚いたように凝視すると
『君、大きな勘違いをしていないか?兄上は公爵令嬢の君を欲している訳じゃないだろ?』
…え?
アナベルは顔を上げ不思議そうにミハエルを見た。ミハエルはその視線を驚いたように受け、やがて呆れた眼差しをアナベルに向けた。
『君は存分鈍いんだね。いくら引きこもりでも驚いたよ。兄上はね、君が王宮へと通わなくなってから怒ってたよ。』
『途中で投げ出した結果になりましたものね。』
ミハエルは頭を掻きむしると
『だぁ~違うだろ!そうじゃない。君がどうして王宮へ通わなくなったかなんて兄上はすぐに分かったんだよ。兄上の足を引っ張る輩を気にしてる事なんてこの私にだってわかるよ。でもそれってそんな輩の力如きに兄上が陥れられる事を危惧してるって事。裏を返せばその程度の力としか見て無いって事だろ?兄上を。』
アナベルは目を見開き大きく首を振った。
『違います!』
『違わないよ!少なくとも兄上は君にそんな事を思わせる己の至らなさだと嘆いておられたよ。そんな事はないのに。この国の安寧は一重に長年の兄上の努力の賜物なのにだ。それなのに君はは媚薬で侵されながらも純血純血ってうなされているんだ。兄上からしたらそれほどまでに私の妃になりたいが為の君を目の前にして愛している女を解す事も出来ず…。』
ミハエルは顔を顰めながらアナベルの前までくると真顔になった。
『そうしてもう1つ。君は巷の噂に流され過ぎて大切な事を忘れているよ。』
『え?』
『君はこの国の公爵家の一人娘だ。その令嬢が王太子妃を狙って何がおかしい?派閥などくだらないものに囚われている貴族らと何ら変わりないよ』
アナベルは頭を金づちで打ち付けられた気がした。
…そうだ。私は腐っても引きこもっても公爵令嬢なんだわ。
『私、王太子妃になりたいです!なります!』
いきなり水を得た魚のように生き生きとしだしたアナベルにミハエルはすかさず口を開く。
『あのね、そんな事私に言われてもね…兄上に言ってくれよ。』
ミハエルは目の前の公爵令嬢に優しく微笑んだ。
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