反主流派の公爵令嬢ですが何か？【完】

出来る男

『ミハエル、お前はいつまでここに居座るつもりだ？』


部屋に戻ってきたライドはソファで寛ぐミハエルに対して笑顔で問うた。ミハエルはぎょっとした眼差しでライドを見ると


…は？昨日の今日で1人にしておくなと言ったのは兄上ですが？


アナベルの横に腰を下ろしたライドは嬉しそうにアナベルを覗き込む。


『気分はどう？体調は？』


…心配することなんて無いっての！すっかり元通りだよ、あんたの妃になるお方はよ。

ミハエルは鬱陶しそうに２人を見ながら


『そんな事より公爵はどうされました？まさか娘を私の妃にとでも言って無かったでしょうね？』


相変わらずご満悦なライドは大袈裟なまでに驚き


『公爵がそんな事を言うわけなかろう？アナベルを心配してわざわざ来て下さったのだ。』


…よく言うよ。昨夜は公爵が来るのを嘆いておられましたよね？


『で？その公爵は？今回の件については？』


『待て待て、そう焦るな、ミハエル。』


…いやいや必要な事だけ聞いたらすぐに退散させてもらいたいよ。ったく。


『公爵にはお帰り頂いたよ。』


『『は？』』


仲良くハモるアナベルとミハエルにライドはこれまた嬉しそうに笑うと

『ハハハ仲が良くて結構。』


…いやいやそうじゃなくてな？


『公爵はアナベル嬢を迎えにきたのでは？』


隣で頷くアナベルにライドは優しく微笑むと


『こんな時に公爵邸に戻すなんて危ないだろう？だからこのままここを使って貰おうと思って。』

ライドは嬉しそうに部屋を見渡し頷いた。


『そんな訳には参りませんわ。』


『どうして？君は私の婚約者なんだから遠慮することなんて無いんだよ？』

アナベルはまたも真っ赤になり俯くと代わりにミハエルが口を開いた。


『気持ちは分からないでもないけど、すこし性急過ぎない？まだ正式に婚約したわけでもないんだし、この部屋は兄上の部屋の隣だろ？またどっかから漏れるたら面倒だよ。』


アナベルは驚いたように部屋を眺めると、ミハエルの言う通り部屋の奥にもう１つの扉がある。その扉は王太子であるライドの部屋と繋がっているのであろう。


…あれが。噂に聞く愛をつなぐ扉…。



『アナベル嬢、私と結婚してくれるよね？』


ライドはいきなりミハエルの前で公開プロポーズをするとアナベルは驚き固まった。

『兄上！それこそ性急です。私も居るのですよ！』


弟の苦言も無視しアナベルを見つめるとアナベルはニッコリと微笑みながら首を縦におろした。


…いやいやお前もな？おかしくないか？


『２人の気持ちはごちそうさまだけどね？ほら段取りってものがあるよ。何事もね？』


ライドはミハエルに視線を流すとニッコリと微笑んだ。


…何？その笑顔が怖いんだけど？


『ミハエル、私は仕事が早いと言うことをお前が知らない訳ないだろう？公爵にも、そして父上にも話は通して来た。』


…！


『公爵は納得したのですか？』


『逆に納得しない方がおかしいだろ？』


『話したのですか？』


『いや、何も。』


…ならば何故？


ミハエルの心の声を読み切ったかのようにライドは首を傾け微笑んだ。


…怖ぇ。



『さぁミハエル、私は婚約者と話しがしたいんだ。お前はいつからそんなに野暮になったのだ？』


…こっちこそ、居たくて居たわけじゃないからね？


ミハエルは脳内お花畑の２人を軽く睨見つけると足早に部屋を後にした。