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心のざわつき
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アナベルが執務を終えて王族エリアにある私室に戻る時、ちょうどそのエリアから出でくるマリアンナの姿をとらえた。思わず柱の陰にアナベルは息を潜めてマリアンナがそこから出ていく後ろ姿を目で追った。
…マリアンナ様?
慣れたように廊下の真ん中を背筋を伸ばして歩く様は圧巻であった。衛兵らも躊躇いなく頭を垂れていた。アナベルは胸騒ぎを覚え私室へと戻って行った。
あれほどライドとお似合いだと、ライドの妃になるのはこの方以外はあり得ないと思っていたアナベルではあるが、今ライドの隣に並び立つは自分である。この心のざわめきの正体は何なのかアナベルは疲れた体を癒しながら湯浴みの中ゆっくりと瞳を閉じた。
翌朝、皇太子妃の執務にてライド、ミハエル、ランドルフが、揃って顔を合わせていた。執務の進捗の確認でこれも日常行なわれている。至って変わらぬ3人を見つめながらアナベルは窓から外を見下ろした。
…!
アナベルの視界にはあのエレナ・シャニオンとカサンドラ王太子が話し込んでいるのをとらえた。
2人が知り合いなのは分かるが何やら様子がおかしい。一見して仲睦まじい様子ではあるが…何がどうおかしいのかは分からないが何か違和感を覚えたアナベルはそのまま視線を留め置いた。
『どうかした?アナベル。』
後方からのライドの言葉に振り向いたアナベルは静かに首を横に振った。何事も無かったかのようにライドは元の会話に入っていくとアナベルは小さくため息をついた。
アナベルはライドと2人になると、いつものように緩やかに流れる時のようにお互いスラスラと執務を片付けていく。川の流れに違わぬように。
ふとアナベルは顔を見上げライドに視線を向けた。傍から見れば、仲の良い夫婦と映るのだろう。これほど真摯に執務を熟しているし、妻としてのアナベルにも配慮があり、家臣からの忠誠も厚い。
…。
傲慢さは微塵もない。
暴君でもない。
脳内お花畑でもない。
女癖が悪いわけでもない。
器が小さい訳でもない。
無い、無い、無いのオンパレードだが…。
アナベルは執務に励むライドを眺めながら小さく呟いた。
…だけど心も無いのよね。
正確には心が無いのではなく、心が見えないのである。アナベルは小さくため息をついた。
…こんな無い物だらけでは、つまらない小説にもなりゃしないわ。
かつての夢見る夢子の王子様はいつしかサイボーグのようになってしまっていた事にアナベルは悲しそうに視線を戻した。
…マリアンナ様?
慣れたように廊下の真ん中を背筋を伸ばして歩く様は圧巻であった。衛兵らも躊躇いなく頭を垂れていた。アナベルは胸騒ぎを覚え私室へと戻って行った。
あれほどライドとお似合いだと、ライドの妃になるのはこの方以外はあり得ないと思っていたアナベルではあるが、今ライドの隣に並び立つは自分である。この心のざわめきの正体は何なのかアナベルは疲れた体を癒しながら湯浴みの中ゆっくりと瞳を閉じた。
翌朝、皇太子妃の執務にてライド、ミハエル、ランドルフが、揃って顔を合わせていた。執務の進捗の確認でこれも日常行なわれている。至って変わらぬ3人を見つめながらアナベルは窓から外を見下ろした。
…!
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2人が知り合いなのは分かるが何やら様子がおかしい。一見して仲睦まじい様子ではあるが…何がどうおかしいのかは分からないが何か違和感を覚えたアナベルはそのまま視線を留め置いた。
『どうかした?アナベル。』
後方からのライドの言葉に振り向いたアナベルは静かに首を横に振った。何事も無かったかのようにライドは元の会話に入っていくとアナベルは小さくため息をついた。
アナベルはライドと2人になると、いつものように緩やかに流れる時のようにお互いスラスラと執務を片付けていく。川の流れに違わぬように。
ふとアナベルは顔を見上げライドに視線を向けた。傍から見れば、仲の良い夫婦と映るのだろう。これほど真摯に執務を熟しているし、妻としてのアナベルにも配慮があり、家臣からの忠誠も厚い。
…。
傲慢さは微塵もない。
暴君でもない。
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女癖が悪いわけでもない。
器が小さい訳でもない。
無い、無い、無いのオンパレードだが…。
アナベルは執務に励むライドを眺めながら小さく呟いた。
…だけど心も無いのよね。
正確には心が無いのではなく、心が見えないのである。アナベルは小さくため息をついた。
…こんな無い物だらけでは、つまらない小説にもなりゃしないわ。
かつての夢見る夢子の王子様はいつしかサイボーグのようになってしまっていた事にアナベルは悲しそうに視線を戻した。
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