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動き出したカサンドラ王太子
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帝国での交流会として大陸中の王国が挙って集結する季節となりその始まりは宮殿での夜会となる。これまた綺羅びやかな会場にアナベルはクラクラとしている。
…目眩がしてきたわ。
元来引きこもり令嬢だ。派手な場所は苦手なのだ。それでも皇太子妃としてライドと並び立つアナベルは珍しく真っ赤なドレスを身に纏い威厳を醸し出している。
『おや珍しい出で立ちだね。』
相変わらず、憎まれ口を叩くミハエルを横目にアナベルは軽く睨みを利かせた。
壇上にはトゥモルデン帝国両陛下が揃って各国通しの交流を見守っている。既に執務はライドに全て引き続き、帝国の象徴としてだけ君臨している彼らは穏やかな表情である。
アナベルもまたその穏やかな表情に心が満たされるのを覚えていた。
この日は流石のミハエルもランドルフも社交に勤しんでいる。流石は王族らの集まりであるダンスも比較的ゆったりとした曲が選曲され男女の社交も進んでいるようだ。
一仕事終えたアナベルはグラスを手に取り、口を潤す。
『妃殿下、一曲お願いできますか?』
…まぢで?散々舞いましたが?
怪訝そうに振り返るとそこには穏やかな笑みを浮かべる、カイン・カサンドラが手を差し出していた。
『お疲れでございますか?』
アナベルはグラスを置くとにこやかに微笑み差し出され手に手を重ねた。
流れる音楽にこれまた流れるように入っていくカインにアナベルは少し驚きをみせた。なぜなら
カイン・カサンドラのダンスの腕前がアナベルにでさえ分かる程素晴らしいものであった。恐らく添えられた手の指先まで神経を使いそれでいて軽やかだ。ホールドされた腰に添える手の力はまるで綿のように軽い。いやらしさを微塵も感じないその力量にアナベルは思わずカインを見上げた。
アナベルを射抜くその視線はダンスとは異なりかなり強力である。
…。
『アナベル様。貴女はもっと世間を見られたほうが良い。』
世間知らずは否めないアナベルではあるが、今は立場上、はいそうですかとは言えない。
『…。』
『貴女の事だ。もうカサンドラ王国については調査済みでしょうけど、我が国では他国と異なり働く女性の地位は高い。』
カインは会場で同じように舞う王女らに視線を流しながら尚も
『着飾る事しか頭に無く、暇を持て余すなんて勿体ないですからね?貴女ならば我が国の一線でご活躍出来るでしょうに。』
…えっと?
カインの思惑が分からず思考停止のアナベルではあるがカインは饒舌に語る。
『貴女は引きこもり時代に培われた知識を生かしていらっしゃる。』
…引きこもり時代って
『ですがそれだけで貴女は幸せなのですか?国の為に国の役に立つだけの人生など勿体ない。貴女の知識や血筋だけを利用する環境に身を置く事など無いでしょう?』
…何言ってんだ?
アナベルはカインを見上げ真面目に答えた。
『仰る真意は分かりかねますが、私は元よりトゥモルデン王国の公爵令嬢でしてよ?忠誠を誓う国の役に立つのは当然ではないのですか?』
カインは口角を上げ微笑むと予想通りの答えに満足気に
『なるほど、流石はトゥモルデン皇太子妃の答えですね。ですがね?我が国いや、大陸南部の国々ではそのような古い考えなどもう存在しないのですよ。』
『古い?』
『ええ、そんな考えは私の産まれるずっと前の話ですよ。今こそ力のある者は老若男女関係なく活躍できる国こそが生き残り繁栄を遂げてゆくのです。』
アナベルは生まれて初めて説かれる話に呆然としたまま最後のターンを終えカインの腕から離れカーテシーを披露し頭を垂れた。
…目眩がしてきたわ。
元来引きこもり令嬢だ。派手な場所は苦手なのだ。それでも皇太子妃としてライドと並び立つアナベルは珍しく真っ赤なドレスを身に纏い威厳を醸し出している。
『おや珍しい出で立ちだね。』
相変わらず、憎まれ口を叩くミハエルを横目にアナベルは軽く睨みを利かせた。
壇上にはトゥモルデン帝国両陛下が揃って各国通しの交流を見守っている。既に執務はライドに全て引き続き、帝国の象徴としてだけ君臨している彼らは穏やかな表情である。
アナベルもまたその穏やかな表情に心が満たされるのを覚えていた。
この日は流石のミハエルもランドルフも社交に勤しんでいる。流石は王族らの集まりであるダンスも比較的ゆったりとした曲が選曲され男女の社交も進んでいるようだ。
一仕事終えたアナベルはグラスを手に取り、口を潤す。
『妃殿下、一曲お願いできますか?』
…まぢで?散々舞いましたが?
怪訝そうに振り返るとそこには穏やかな笑みを浮かべる、カイン・カサンドラが手を差し出していた。
『お疲れでございますか?』
アナベルはグラスを置くとにこやかに微笑み差し出され手に手を重ねた。
流れる音楽にこれまた流れるように入っていくカインにアナベルは少し驚きをみせた。なぜなら
カイン・カサンドラのダンスの腕前がアナベルにでさえ分かる程素晴らしいものであった。恐らく添えられた手の指先まで神経を使いそれでいて軽やかだ。ホールドされた腰に添える手の力はまるで綿のように軽い。いやらしさを微塵も感じないその力量にアナベルは思わずカインを見上げた。
アナベルを射抜くその視線はダンスとは異なりかなり強力である。
…。
『アナベル様。貴女はもっと世間を見られたほうが良い。』
世間知らずは否めないアナベルではあるが、今は立場上、はいそうですかとは言えない。
『…。』
『貴女の事だ。もうカサンドラ王国については調査済みでしょうけど、我が国では他国と異なり働く女性の地位は高い。』
カインは会場で同じように舞う王女らに視線を流しながら尚も
『着飾る事しか頭に無く、暇を持て余すなんて勿体ないですからね?貴女ならば我が国の一線でご活躍出来るでしょうに。』
…えっと?
カインの思惑が分からず思考停止のアナベルではあるがカインは饒舌に語る。
『貴女は引きこもり時代に培われた知識を生かしていらっしゃる。』
…引きこもり時代って
『ですがそれだけで貴女は幸せなのですか?国の為に国の役に立つだけの人生など勿体ない。貴女の知識や血筋だけを利用する環境に身を置く事など無いでしょう?』
…何言ってんだ?
アナベルはカインを見上げ真面目に答えた。
『仰る真意は分かりかねますが、私は元よりトゥモルデン王国の公爵令嬢でしてよ?忠誠を誓う国の役に立つのは当然ではないのですか?』
カインは口角を上げ微笑むと予想通りの答えに満足気に
『なるほど、流石はトゥモルデン皇太子妃の答えですね。ですがね?我が国いや、大陸南部の国々ではそのような古い考えなどもう存在しないのですよ。』
『古い?』
『ええ、そんな考えは私の産まれるずっと前の話ですよ。今こそ力のある者は老若男女関係なく活躍できる国こそが生き残り繁栄を遂げてゆくのです。』
アナベルは生まれて初めて説かれる話に呆然としたまま最後のターンを終えカインの腕から離れカーテシーを披露し頭を垂れた。
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