反主流派の公爵令嬢ですが何か?【完】

mako

文字の大きさ
65 / 70

襲来2

しおりを挟む
アナベルはミハエルと2人になると呆れ果てた眼差しでミハエルを見た。

『ミハエル様、我が国第3王子殿下と崇め奉られた元王子であり、今や皇子ともあろうお方がお一人で早馬なんぞでやって来るとはどういうおつもりですの?』


言えた義理では無いアナベルからの言葉にこれまたミハエルは驚いたように

『びっくりするよ!君の口から出る言葉かね?全く。誰が好き好んでこんな所に来るんだよ。今回はね兄上からの直に受けた命だからね?ってか何やってんだよ。帝国の妃殿下という自覚はあんのかね?』


アナベルは見張りを警戒しながら声を落とすと

『ミハエル様…。』


アナベルの心配を他所にミハエルはより声を張り上げ


『旧帝国に馴染みが深いようだけど、この私の顔を見てもただの遣いだと思い込んでいた所を見るとね、力が知れてるよね?一応帝国の血を引く私だ。まさかいつまでも地べたで跪いてるなんて自分が自分で驚いてるよ(笑)』


広間を監視しているであろうカサンドラ王国への牽制である。

アナベルは筒抜けの会話に配慮し敢えてマリーナの話には言及しなかったがその想いはミハエルも同じであった。




『ねえ、ミハエル様は馬術に優れておりましたっけ?』


突然の話題にミハエルは眉間にシワを刻むと


『いきなり何?べつに特別得意ではないけど?普通じゃないの?競った事などないからね。』


『でもライド殿下はかなり遅れをとってますわ。』


ミハエルはソファから崩れ落ちそうになりながら
アナベルを睨みつけると


『あのね?ってか君は本当にバカなのか?利口であったり無知であったりどちらが君なんだよ。兄上はね、早馬ではないし私よりも護衛も多く連れてるからね?』

よくわからないアナベルはふ~んとでもいうような表情で辺りを見渡した。


…マリーナ大丈夫かしら?

ミハエルは改めてびっくりした様子でアナベルを見つめていた。


…勘弁してくれよ。本当に。


2人各々、頭を巡らせているとカサンドラ王国外相である男が足早にやって来ると


『皇太子殿下がお越しになりました。』


そう言うと2人は広間よりも格段と豪華な謁見の間へと案内された。



扉が開かれるとアナベルは久方ぶりの夫に顔が綻んだ。


…お元気そうね♡

一方のライドは表情を崩す事なく用意されている豪華な椅子に腰を下ろしていた。


『これはこれはライド殿下!お待たせしました。』


声高らかに現れるはカイン・カサンドラ。先ほどまでとは異なり正装に近いフォーマルな装いでライドの前に腰を下ろした。


『ご無沙汰…では無いな。』


ライドはポツリと呟いた。


それはそう。帝国交流会で会談したのはほんの数ヶ月前。

『この度は大変失礼をいたしました。何でも、皇太子妃アナベル様が帝国での暮らしに辟易とし亡命をの意思があるとの情報で我が国も動いておりました。もちろん大切に保護させて頂いておりましたが…』


先ほどまでの話とはえらい違いである。アナベルは眉間にシワを寄せカインを見つめた。


『マリーナは?マリーナはどうされました?』


カインはとぼけたように


『マリーナ?…あ、妃殿下に仕えておりましたあの侍女の事でしょうか?あの者は我が国へ偽の証言をしており反逆とみなし…ってまぁこれは我が国の事ですから、今は関係ないですがね(笑)』


『反逆!そんなバカな。彼女はカサンドラ王国に忠誠を誓う立派な令嬢ですわ!』


『お褒め頂き光栄の極み。ですがそれは妃殿下にとって、では?ここはカサンドラ王国ですからね。貴女が我が国の…例えば王太子妃などのお立場ならば貴女の意見にも耳を傾けますが。今の貴女は帝国皇太子妃というお立場。このような小国の内政にまで頭を悩ませる事はありませんよ。』


カインは視線をライドに向けるとにっこりと微笑んだ。ライドもその視線を微笑んで受け取った。


…怖いんだけど?


ミハエルは2人に交互に視線を送っていた。


『マリーナは。マリーナは私のせいで?』


カインはさぁ?とでも言うように首を傾げると意味有りげに首を擦った。

…!


アナベルは大きな瞳が熱くなり潤んできたのを感じた。


…マリーナ、マリーナ。私が調子に乗って仲良くなろうとしたから。私が…私のせいで。


『カイン殿。マリーナという娘とその家族をここに呼んでくれぬか?』







一斉にライドへ視線が集まる。


『殿下、まさか内政干渉ですか?』


ライドは王太子スマイルで培った笑顔を振りまくと


『貴殿も大袈裟な。その娘は内政干渉に値する程の力を持っているのかな?ただの伯爵家の次女であろう?』






驚きの視線を嬉しそうに浴びながらライドは尚も


『帝国にカサンドラの人間が潜入しているようにここにだって私の手の先がね?逆も然りって事。ってまぁ今回の件の発端は我妻の責も否めない。だから大事にしたくはないんだけど?』


大事。仮にも帝国皇太子が言う大事にとは。カインは苦虫を噛みつぶしたような表情で側近に耳打ちすると側近は急いでその場を後にした。

静まり返る部屋、振り子時計のカチカチと針を打つ音だけが美しく響く。その静寂を破ったのはライドであった。


『にしても貴殿はアナベルを昔の天使のままだと思ってるのかい?』


…?

…?


不思議そうに視線を交わすアナベルとミハエルのとなりでカインは驚いたようにライドに視線を置いた。


『旧帝国での交流会。そりゃ各国から王子や王女。上級貴族の令息や令嬢も沢山集まるよね?私もその1人だけど貴殿もそうだ。そしてアナベルもね。

あの当時はお気に入りの女の子に1輪のお花を贈るのが流行ってたよね~。日々時間に追われる後継者として育てられる我らにとって癒しでもあるからね、君の気持ちもよくわかる。その想いを持ち続けるのは素敵な事だけど、後継者として日々追われる中でその想いは少しずつ消えていくものなんだ。』


『それは違う!それならばその想いはそれだけのものだっただけの話。アナベル嬢聞いた?これが殿下の気持ちなんだ。所詮その程度の想いだったっ事。』


『子どもの頃の想いなんて風が吹けば吹っ飛ぶさ。我々はもっと考えなきゃならない事が沢山あるだろう?幼き天使を想い続けるなんてある意味贅沢なんだよ。』


『ならば何故?そんな事を仰りながらその天使を娶ったのは貴方だ。リルムの血を公爵令嬢としての肩書が後ろ盾として必要だったからだ。』


ライドは小さくため息を落とす


『君の考えは飛躍しすぎてるよ。アナベルだって同じさ。幼き頃確かに君はアナベルに求婚したのかもしれない。だけど少なくとも私もしたんだよ?他にも居たかも知れない、流行ってたもん。でさ?アナベルはその相手が誰だか覚えてなんて居ないさ。そうゆう王子様が居た。とキュンキュンはしていたけどね?そんなもんだろ?普通。』



カインはゆっくりと、アナベルへ視線を流した。















しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

働かないつもりでしたのに、気づけば全部うまくいっていました ――自由に生きる貴族夫人と溺愛旦那様』

鷹 綾
恋愛
前世では、仕事に追われるだけの人生を送り、恋も自由も知らないまま終わった私。 だからこそ転生後に誓った―― 「今度こそ、働かずに優雅に生きる!」 と。 気づけば貴族夫人、しかも結婚相手は冷静沈着な名門貴族リチャード様。 「君は何もしなくていい。自由に過ごしてくれ」 ――理想的すぎる条件に、これは勝ち確人生だと思ったのに。 なぜか気づけば、 ・屋敷の管理を改善して使用人の待遇が激変 ・夫の仕事を手伝ったら経理改革が大成功 ・興味本位で教えた簿記と珠算が商業界に革命を起こす ・商人ギルドの顧問にまで祭り上げられる始末 「あれ? 私、働かない予定でしたよね???」 自分から出世街道を爆走するつもりはなかったはずなのに、 “やりたいことをやっていただけ”で、世界のほうが勝手に変わっていく。 一方、そんな彼女を静かに見守り続けていた夫・リチャードは、 実は昔から彼女を想い続けていた溺愛系旦那様で――。 「君が選ぶなら、私はずっとそばにいる」 働かないつもりだった貴族夫人が、 自由・仕事・愛情のすべてを“自分で選ぶ”人生に辿り着く物語。 これは、 何もしないはずだったのに、幸せだけは全部手に入れてしまった女性の物語。

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

【短編】記憶を失っていても

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
 7年以上前の記憶のない平民出身のラチェルは、6年前に娘のハリエットを生んでからグリオス国のアンギュロスの森付近の修道院で働きながら暮らしていた。  そんなある日ハリエットは見たことのない白銀色の大樹を見つけたと、母ラチェルに話すのだが……。  これは記憶の全てを失ったラチェル──シェシュティナが全てを取り戻すまでのお話。 ※氷雨そら先生、キムラましゅろう先生のシークレットベビー企画開催作品です( ´艸`)

裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。

夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。 辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。 側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。 ※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。

【完結】孤高の皇帝は冷酷なはずなのに、王妃には甘過ぎです。

朝日みらい
恋愛
異国からやってきた第3王女のアリシアは、帝国の冷徹な皇帝カイゼルの元に王妃として迎えられた。しかし、冷酷な皇帝と呼ばれるカイゼルは周囲に心を許さず、心を閉ざしていた。しかし、アリシアのひたむきさと笑顔が、次第にカイゼルの心を溶かしていき――。

イリス、今度はあなたの味方

さくたろう
恋愛
 20歳で死んでしまったとある彼女は、前世でどハマりした小説、「ローザリアの聖女」の登場人物に生まれ変わってしまっていた。それもなんと、偽の聖女として処刑される予定の不遇令嬢イリスとして。  今度こそ長生きしたいイリスは、ラスボス予定の血の繋がらない兄ディミトリオスと死ぬ運命の両親を守るため、偽の聖女となって処刑される未来を防ぐべく奮闘する。 ※小説家になろう様にも掲載しています。

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

処理中です...