2 / 23
王太子の密会と忠実な側近
しおりを挟む王太子の幼なじみでありながら、常に一線を引いてきたファビウスは、モルディアン王国の公爵令息である。品行方正で、公爵家の嫡子としての責務を完璧に果たしてきた。
「ハインツ! こっちこっち!」
楽しげに手招きする娘の後を、王太子ハインツが駆け足で追っていく。その背中を、ファビウスは複雑な面持ちで追いかけた。主であるモルディアン王国王太子ハインツは、どういうわけか今、町娘のマリアと森の丘で屋台の串を頬張り、幸せそうに笑い合っている。
貴族たちの反発を受け、こうして人目を忍び、王宮から遠く離れた森までやって来ているのだ。まさに密会――。
ファビウスが訝しげに二人を見守っていると、マリアはケラケラと笑いながらハインツの腕の中で小動物のようにはしゃいでいる。一方のハインツも、日頃の疲れを癒やすかのようにマリアを抱き込み、くるくると回る。二人は心底楽しそうだ。だが、ちっとも楽しくないのは、それを見守るファビウスただ一人。
先ほどまで国の予算を真剣に検討していた主が、今は町娘との密会に興じている。
「…ふぅ」
ファビウスは深く息をついた。今はただ、この時間が過ぎ去るのを待つしかない。丘の上から見下ろすと、遠くに王宮がそびえ立っている。その王宮の主が、こんなところで町娘と――。貴族だけでなく、国王や王妃にこの密会が知られでもしたら、ファビウスとて無事では済まされないだろう。
「…ふぅ」
再度、ため息がこぼれる。貴族令嬢たちに囲まれるハインツが、たまには異質な魅力を持つ町娘に惹かれる気持ちも分からなくはない。だが、それはあくまで「たまに」で良いのだ。ここに真実の愛などあるはずがない。
その事実に気づかず、浮かれているハインツを、ファビウスはもどかしい思いで見守り続けるしかなかった。
12
あなたにおすすめの小説
最強の私と最弱のあなた。
束原ミヤコ
恋愛
シャーロット・ロストワンは美しいけれど傲慢で恐ろしいと評判の公爵令嬢だった。
十六歳の誕生日、シャーロットは婚約者であるセルジュ・ローゼン王太子殿下から、性格が悪いことを理由に婚約破棄を言い渡される。
「私の価値が分からない男なんてこちらから願い下げ」だとセルジュに言い放ち、王宮から公爵家に戻るシャーロット。
その途中で馬車が悪漢たちに襲われて、シャーロットは侍従たちを守り、刃を受けて死んでしまった。
死んでしまったシャーロットに、天使は言った。
「君は傲慢だが、最後にひとつ良いことをした。だから一度だけチャンスをあげよう。君の助けを求めている者がいる」
そうしてシャーロットは、今まで自分がいた世界とは違う全く別の世界の、『女学生、白沢果林』として生きることになった。
それは仕方ないとして、シャーロットにはどうしても許せない問題があった。
白沢果林とはちょっぴりふとましい少女なのである。
シャーロットは決意する。まずは、痩せるしかないと。
オネエな幼馴染と男嫌いな私
麻竹
恋愛
男嫌いな侯爵家の御令嬢にはオネエの幼馴染がいました。しかし実は侯爵令嬢が男嫌いになったのは、この幼馴染のせいでした。物心つく頃から一緒にいた幼馴染は事ある毎に侯爵令嬢に嫌がらせをしてきます。その悪戯も洒落にならないような悪戯ばかりで毎日命がけ。そのせいで男嫌いになってしまった侯爵令嬢。「あいつのせいで男が苦手になったのに、なんであいつはオカマになってるのよ!!」と大人になって、あっさりオカマになってしまった幼馴染に憤慨する侯爵令嬢。そんな侯爵令嬢に今日も幼馴染はちょっかいをかけに来るのでした。
春告げ鳥
朝山みどり
恋愛
春告げ鳥が鳴く季節、わたしは一人の男性と出会った。彼の穏やかな笑顔と声には、いつも春告げ鳥の鳴き声が重なっていた。その春、彼は戦争へ向かい、「笑って待っていてね」と言い残して去る。振り返らなかった背中を、わたしは今も忘れられない。呼び止めなかった後悔を胸に、わたしは毎年、春告げ鳥の声を聞きながら待ち続けた。
年月が流れ、体は衰え、終わりが近いことを静かに悟るようになる。今年の春、いつもより早く春告げ鳥が鳴き、窓の外に彼の姿が現れる。若い頃のまま、照れたように笑い、迎えに来たのだと自然に理解できた。待つことは苦ではなく、人生そのものだった。約束どおり笑って待ち続けたわたしは、春告げ鳥の声に背中を押され、再会の笑顔へと歩み出す。今年の春告げ鳥は、少し早く、それでちょうどよかった。
なろうにも投稿しております。
【完結】私のことを、愛して
yanako
恋愛
【重要】
双子の名前を間違えて書いていました。
正しくは、姉(主人公)アニー。妹アリーです。
――――――――――
私には、双子の妹がいる。
私たちは、一卵性双生児。
双子は縁起が悪いからと、私たちはそれぞれ父方と、母方の祖父母に引き取られた。
違う環境で育った、同じ容姿の私たち。
15歳になり、私たちは実の親と一緒に暮らすことになった。
私の好きな人はお嬢様の婚約者
ぐう
恋愛
私は貧しい子爵家の娘でございます。
侯爵令嬢のお嬢様のメイドをして学園に通っております。
そんな私の好きな人はお嬢様の婚約者。
誰にも言えない秘密でございます。
この一生の秘密を墓場まで持っていくつもりです。
お嬢様婚約者様どうかお幸せに。
前編、中編、後編の三話の予定でしたが、終わりませんでした。
登場人物それぞれのエピローグを付け加えます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる