春告げ鳥

春告げ鳥が鳴く季節、わたしは一人の男性と出会った。彼の穏やかな笑顔と声には、いつも春告げ鳥の鳴き声が重なっていた。その春、彼は戦争へ向かい、「笑って待っていてね」と言い残して去る。振り返らなかった背中を、わたしは今も忘れられない。呼び止めなかった後悔を胸に、わたしは毎年、春告げ鳥の声を聞きながら待ち続けた。
年月が流れ、体は衰え、終わりが近いことを静かに悟るようになる。今年の春、いつもより早く春告げ鳥が鳴き、窓の外に彼の姿が現れる。若い頃のまま、照れたように笑い、迎えに来たのだと自然に理解できた。待つことは苦ではなく、人生そのものだった。約束どおり笑って待ち続けたわたしは、春告げ鳥の声に背中を押され、再会の笑顔へと歩み出す。今年の春告げ鳥は、少し早く、それでちょうどよかった。

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