最愛の人の幸せが私の幸せ【完】

mako

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欲望という名の花

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一方そのころ、王宮の裏庭にて。

マリアは豪奢な布地で仕立てられたドレスを試着し、鏡の前でくるりと回っていた。

「ふふ……まさか、こんなにうまく行くなんて」

彼女は心底楽しそうに笑っていた。

「王子様が、本当に私を“側妃”にしようとしてくれるなんて……あの貴族たちを出し抜いて、王宮に上がれる日が来るなんて、夢みたい」

その視線の先には、王宮中枢への鍵――「王太子妃・リディアンネ」の存在。

「でもまあ、あの公爵令嬢。真面目すぎて利用しやすいタイプよね。“名ばかりの婚約者”なんて、ほんと笑っちゃう」

彼女の笑みは、どこまでも打算的だった。

(けど……いずれは“名ばかり”じゃなくなるのよ。正室の座も、全部――奪ってやる)

その野望を、誰もまだ知らない。

さて、静かに始まった三者三様の共犯関係。

王太子は“本命”マリアのためにリディアンネを必要とし、リディアンネは“推しの隣”という理想の場に身を置き、マリアは“側妃”から正室の座を虎視眈々と狙う――。

その微妙な均衡は、やがて何かのきっかけで大きく崩れはじめる。

それが「誰の裏切り」であるのか、まだ誰も知らない――。

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