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ファビウスの戸惑い
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一方そのころ、ファビウスは書庫で偶然リディアンネと出くわしていた。
彼女は数冊の書物を丁寧に積み、机に座っていた。
「……ファビウス様。もしかして、お邪魔でしたか?」
「いえ……こちらこそ。こんな静かな空間に、貴女がいてくださるとは思わず」
ふとした沈黙の後、ファビウスが小さく呟いた。
「リディアンネ様……貴女は、辛くはないのですか?」
リディアンネは、ふっと微笑んだ。
「辛い? 何がでしょう?」
「形式だけの婚約。王太子が他の女性に心を寄せていること。それでも、貴女は……微笑んでいられる」
「……私は“推しの隣”にいられる。それだけで、十分幸せですわ」
その言葉に、ファビウスはなぜか胸が痛んだ。
(どうして……この人はこんなにも自分を犠牲にできるのだろう)
気づけば彼の中に、名状しがたい感情が芽生え始めていた。
(……私はこの人を、守りたくなっている?)
そう思った瞬間、王宮の外から聞こえるマリアの笑い声が、やけに遠く響いた。
彼女は数冊の書物を丁寧に積み、机に座っていた。
「……ファビウス様。もしかして、お邪魔でしたか?」
「いえ……こちらこそ。こんな静かな空間に、貴女がいてくださるとは思わず」
ふとした沈黙の後、ファビウスが小さく呟いた。
「リディアンネ様……貴女は、辛くはないのですか?」
リディアンネは、ふっと微笑んだ。
「辛い? 何がでしょう?」
「形式だけの婚約。王太子が他の女性に心を寄せていること。それでも、貴女は……微笑んでいられる」
「……私は“推しの隣”にいられる。それだけで、十分幸せですわ」
その言葉に、ファビウスはなぜか胸が痛んだ。
(どうして……この人はこんなにも自分を犠牲にできるのだろう)
気づけば彼の中に、名状しがたい感情が芽生え始めていた。
(……私はこの人を、守りたくなっている?)
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