愛するということ【完】

mako

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日常

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何とか無事に披露宴を兼ねた夜会が幕を閉じると控え室でエレノアは満面の笑みで侍女らと談笑していた。


ぐったり疲れ果てたウィリアムとテオドールはエレノアを呆然と見つめている。


『殿下、ひとまず今回の夜会で殿下との時間はおしまいですね?』


ホッとするような悲しいような複雑な面持ちでウィリアムは声もなく頷いた。


『では、明日からは私は執務を終えたら自由時間ですよね?』

有無を言わさぬ王女の貫禄にテオドールは

『どうぞ、ご自由に…』


エレノアは満足気に頷くとスキップを踏みながら部屋を後にした。

    


『テオ、何なんだ?いったい…』

放心状態のままウィリアムはテオドールに視線を流す。

『まあ、あんなでも公の場では完璧な姿でおられますので…小言の1つも言えませんね。』

ウィリアムは大きく伸びをすると、

『まあ、こちらに何か要求することも無いし特に言う事もないが、にしてもあの体力?気力?は只者ではないぞ。』

一人呟くように言葉を発しウィリアムも私室へと戻って行った。



翌日からはヴェルヘルト大王国の日常が戻りウィリアムも相変わらず執務に没頭する日々を送っていた。


一方のエレノアも充実した時間を送っている。


『ハロルド、この予算だけど計算が合わないわ』

数字の羅列を厳しい表情で睨みながら側近であるハロルドに声を掛けた。


ハロルド・ローレンス。テオドールと並ぶウィリアムの側近の一人であったがこの度王太子妃付けとなりエレノアの元にやってきたのだ。


『妃殿下、そんな訳ありませんが?』

ハロルドが手渡された書類を何枚も確認すると

『本当ですね…』

眉間にシワを寄せながら考え込んでいる。


『ハロルド…眉間のシワ!そんなに深く刻んでは取れなくなるわよ?』

エレノアはハロルドにお茶を淹れソファに促す。


『とにかく数字の誤差は例え小さくても見逃せないわ。事の経緯を報告させて。』

エレノアはゆっくりとお茶を飲んでいると


『妃殿下、楽しそうですね?』

不思議そうに問うハロルドに

『だって楽しいもの。実際。』

エレノアは大きな瞳をキラキラと輝かせ大きく伸びをした。


目の前には、数字の羅列を目で追うハロルド。

『ねえ、ハロルド。』

…。

『ハロルド!』


『は?…っと失礼。何でしょう?』


ハロルドは仕方なく顔を上げる。


『ねえ、ところで第2王子はどうされているの?』


『…。』


『王宮にはいらっしゃるのかしら?』


『どうされました?何かごさいましたか?』


エレノアは首を左右に曲げながら

『どうもされないけど、お会いしたことが無いから。執務はしていらっしゃらないの?』


…。


エレノアはニヤリと笑うと


『なに?秘事なの?』


ハロルドはため息を1つ落とすと


『まあ、いずれ分かる事ですから話しますが…』


うんうんと頷くエレノアに第2王子ハインリッヒの話を始めた。


真剣に耳を傾けていたエレノアが突如声をあげる。


『まあ!では私の恩人かしら?』


ハロルドは怪訝そうに

『は?聞いておられました?』


『だってそうでしょう?ハインリッヒ様が多くの女性を侍らしておられるおかげで私は世継ぎを気にせず今の生活が保証されているわけですもの!』


…。大丈夫か?頭。


ハロルドは一人歓喜をあげるエレノアを不思議そうに眺めていた。


…やれやれ。なんだってこんな事になったんだ?


いきなり仕えるようになった主を不安そうにいつまでも眺めていると



『やだ、ハロルド。照れるじゃない(笑)』



…おいおい、勘弁してくれよ。




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