愛するということ【完】

makojou

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ヴェルヘルト新たな日常

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パーテーションで仕切られた執務室。
片方にはウィリアムとテオドール。
もう片方にはエレノアとハインリッヒとハロルド。


エリートがズラリと並ぶ執務室には誰も近寄り難い雰囲気というかオーラが扉の外まで広がっている。


ハインリッヒは執務室に自分用のデスクを用意しエレノアと並んでいる。


…どっちの妃かわからんぞ…


ハロルドは2人を眺めている。



『エレノア、この予算について良いか?』

パーテーションの向こう側からエレノアを呼ぶウィリアムにエレノアは急いでウィリアムのデスクに向かう。




『姫、これは?』

ウィリアムのデスクに居るエレノアをハインリッヒが呼ぶと急いで戻るエレノア。



『エレノア!』


『姫!』



エレノアは執務室の中を行ったり来たりの大忙しである。



…何やってんだよ


テオドールは使い物にならない主を見つめてため息をついた。



執務も終わりエレノアにとってのご褒美。図書館の時間である。


『姫、さあ、図書館へ行こう』

エレノアを促すと


『殿下も図書館へ?』

首を傾げるエレノアに

『そうさ、私は長く執務から離れていたからね。知らない事があってはならないし学びは有って損はない。』


パーテーション1つで仕切られた執務室。もちろんウィリアムやテオドールにも筒抜けである。


『エレノア!』

ウィリアムの呼びかけにエレノアは

『何かありますか?』

急いでウィリアムの元へ駆け寄る。

堪らずハインリッヒは

『兄上、姫の今日の執務は終わりました。自由までも奪うおつもりですか?』


『まさか、そんな事はしないよ?エレノア、随分と前に噴水の計算式に苦戦していたろ?先日図書館で物理の面白い本を見つけたのだ。どうだ?学んでみるか?』


エレノアは目を輝かせ


『殿下が教えて下さるの?』

ウィリアムは優しく微笑むとハインリッヒが


『姫、それらは私の方が得意分野だからついでに教えてあげるよ。』

『いや、人に教えるのは得意不得意ではない。相手に伝える力が必要だからね。それにあの広い図書館でまたわかりにくい場所にあるんだ。ほら行こう?』

ウィリアムがエレノアを促す。


…何やってんだよ、この兄弟はよ。

テオドールが頭を抱え眺めている。


『ならば一緒に参りましょう!』


『『…。』』


エレノアの一言によりエレノアと仲良し兄弟との3人で図書館のテーブルに並ぶ事になるのである。



『大丈夫か?あいつら。』

ハロルドが王太子テリトリーのソファに腰を下ろした。


『知らねえよ。』

テオドールは主の居ないデスクを睨む。


『兄弟揃ってよくもまあ、何ていうんだろうな。』


ハロルドはお茶を淹れながらテオドールを見るとテオドールはソファに沈み天井を見上げている。



『でも妃殿下も妃殿下だよな。あれ天然?計算?』


ハロルドの問に被せるように


『天然だよ。計算の訳あるか!そんな女じゃないわ!』

テオドールが起き上がる。



『あれ?お前、いつから飼い慣らされてんの?』 

テオドールがいつもハロルドに投げかけていたセリフである。


『…。プライベートの妃殿下を知ればお前もわかる。』


テオドールが呟くと


『いやいや、俺の方が妃殿下と居る時間は長いしな?』



『時間じゃないよ、濃度だよ。』


『いやいや、じゃあお前、妃殿下の好きな茶葉知ってるか?』


…茶葉?

テオドールは我に返り


『止めよう。バカ兄弟が伝染してきてるぞ?』


ハロルドも少し考え


『だな。』


2人はお互いのデスクに戻ると、エリートらしく執務を秒殺していた。







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