人質王太子妃【完】

mako

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『殿下⋯ 。』


ブロワ公爵は力なく膝から崩れ落ちた。

『これはセレンの葉ではない。よく似てはいるが麻薬の一種でわが国ではその使用は禁じられている。』


『リンドウ王国では合法ですわ!』


墓穴を掘るのはやはりリンドウ王女のソフィアであった。ブロワ公爵はソフィアを力なく睨みつけた。


『ご丁寧にありがとう。君がわが国に来て初めて役に立ってくれたね。そう、これはリンドウ王国で栽培されているミネルの葉だ。よく似ているが見る者が見れば分かる。わが国では流通しない代物だから誰もがセレンの葉だと思うだろうね。』



⋯。


『という事でリンドウ王国とブロワ公爵家は繋がったよね?セレンの葉とは異なり安価で手に入るミネルの葉を代用していたとなればわが国では違法となる。しかもそれをセレンの葉と偽っていたのだからこれも違法だよね?そしてそれを虚偽の記載をしていた帳簿もアウト。ここまで来たらもう真っ黒だ。私が分かる事はここまで。これでいい?兄上。』


サイモンはアルベルトに視線を流すとアルベルトは満足気に一つ大きく頷いた。


『で、ここからが本題だが。』


アルベルトの言葉にブロワ公爵は放心しながら首を横に振ると


『もう何も、何もありませんよ。』 





『いやここからでしょう。』


脱力したブロワ公爵の周りを取り囲む人集りをかき分けて入ってきたのは、昨晩から大活躍のオルコック公爵とグラディウス公爵である。2人仲良く現れるとその後ろから国王夫妻までもがやって来たのである。


一同はサッと前を開け頭を垂れると、国王と公爵2人はブロワ公爵の前へと歩みを進めた。



混乱するブロワ公爵は


『違うのです。これは⋯その⋯』


『何が違う?貴方の屋敷で山積みになっていたミネルの葉と、用心深くしまってある裏帳簿は我々も確認したが?』


オルコック公爵は兄である国王にミネルの葉を手渡した。国王はミネルの葉を手に取ると注意深く観察し小さく頷き甥っ子でもあるアンドレへと手渡した。



『本当にもう何も⋯』


力なく呟く公爵にもはや威厳など無くこのまま消えてしまいそうなまでだ。




『そうはいかないよ!』


颯爽と、人集りに飛び入り参加するのはまさかのラインハルト。


⋯!お兄様


イングリットは驚き瞬きを繰り返し


⋯帰ったんじゃなかったの?おにいちゃんよ⋯


アレクセイは相変わらずである。



ラインハルトは国王に最上級の礼を取るとブロワ公爵の前で


『待たせたね。』


不敵な笑みを浮かべた。


『私はね、やり残しが1番嫌いなんだ。今日はお前の為に手土産持参で参ったから喜ぶがよい。』


イングリットによく似ているラインハルトは王子様ではあるがどちらかと言えば騎士のような強さがある。シーズン最後の夜会に集まる令嬢らは目を輝かせ更に集まってきていた。




『まずあのレグルスと名乗る男だが、国の名誉の為王国名は伏せるが大陸でも小国の騎士であった。私はね一度見た顔は忘れないんだ。あの男は先の戦いで連合国として参加していたがわが国に恐れ慄きすぐに逃げ出した。そして逃げ延びる為にバイエルンの紋章を掲げ争いながら逃げた訳だね。だけど故郷を裏切ったんだから1人ノコノコ帰る訳にもいかず放浪しながらソアラ公国に辿り着いたんだろうね。そこで公爵に見出されたというわけだ。どう?間違ってないよね?』


『お兄様!あの者をご存知だったのですか?』


イングリットは心の声を吐き出した。



ラインハルトは妹からの問いかけに普通に頷くと


『もちろん。だけどあの時はそれだけでは足りなかったから、だから持ち帰ったのさ。』



悪びれる事無く言い放つと更に


『公爵は使える男を探していたんだろうね。リンドウ王国との取り引きの為に。』


『取り引き?』


『そう、セレンの葉の紛い物を安価で手に入れているくせに、欲に塗れ更に値切りたくなったのか、その見返りに能無し王女を王太子妃にする事を目論んだ。もちろんそれはオマケで1番の目的はサイモン殿下を王太子に担ぎ上げたかったのが本命だろうけど?そうしたらブロワ公爵家は安泰だもんね?』



見てきたかのように語るラインハルトにブロワ公爵は目を泳がせガタガタと震えている。


『能無し王女とは無礼千万!たかだかバイエルン王太子如きが何様のおつもり!』


湿った空気に風を通したのはまさかのソフィア王女であった。アルベルトは怪訝そうに見つめ、サイモンはまるで汚物を見るかのような眼差しを向けるもソフィアは臆する事無くラインハルトの前までお付きをゾロリと引き連れやって来た。



『あれ?能無し王女って口走ってた?』


⋯しっかり言ってたよ、おにいちゃんよ。

アレクセイは心の中で突っ込んだ。


『それは失礼。』


ラインハルトは王子様スマイルを奥の引き出しから見つけてきたのか公の前で、いや生涯で初めてであろうスマイルで王女を見つめるとソフィアの手を取りキスを落とした。


⋯お兄様?


目の前に居るのは兄のようで兄ではないのか?イングリットは目を見開いた。


ソフィアはラインハルトの振る舞いに気を良くしたのか怒りの矛先をブロワ公爵へと変えると


『貴方、国のルールは守りなさい。』


ソフィアの言葉に会場は呆気に取られ少しの静寂が訪れたも、すぐに通常の夜会の騒がしさを取り戻したのである。

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