婚約破棄から始まる物語【完】

mako

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風向き

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そうしていると、王家の風当たりも次第に弱まってきていた。

『殿下、このところの動きをどうみます?』

レイモンドがアレクセイに声を掛けた。

『さあね。風向きは風に聞いてくれ』

アレクセイは執務に追われいた。
レイモンドの目の前のアレクセイは間違いなく変わった。

変な女に溺れていた頃とは違う。現に今もアナスタージアの元へ会いに行くこともしていない。

今の状態を静観している。が何もしていない訳ではないとレイモンドは知っている。


ヴィラ候爵夫妻も証拠不十分で早々に解放されていた。


この静観こそが敵陣には誤算であり焦りを引き出したのであろう。


突如、王太子妃の懐妊がもたらされたのである。



『アレク!』


執務室に飛び込むとアレクセイは黙って頷く。

『まさか?』

恐る恐る問うレイモンドに

『馬鹿を言うな!』


『だよね?だったらガセ?』


『いや、そんなすぐにバレる嘘を付くとは思えん』


『でもアレだよ?』


『‥』


『どうする?』


王太子妃懐妊で湧く街中を、まさか王太子は王太子妃と事を為しておりませんとは言えず困り果てていると、突然ご本人様の登場に二人は固まる。


『アレク!私懐妊したそうなのです!』

見るからに嬉しそうに、また嘘をついているようにも見えない。


『‥』

『何とか言って下さい!貴方の子どもよ!あれほどまでに望んでたじゃない?』


目を見開くアレクセイに


『まあ、嬉しくて声も出ないのですか?』


レイモンドは

『ヴィクトリア様、それはその、殿下のお子でお間違いないと?』

『何て無礼な!貴方不敬罪でぶち込むわよ!』

本性丸出しのヴィクトリアに


『いえ、そうではなくて、殿下はこのところお忙しくされておりましたので。そのお渡りする暇も無かったといいますか‥』


シドロモドロになるレイモンドに


『全く無知ね。やってすぐに出来るものではないのよ!』


ここまでくると、もはや令嬢の言葉とは思えないが‥



『ヴィクトリア』

アレクセイが口を開く。

『アレク?どうしたの?改まって。ヴィーでいいのよ?』


『いや、ヴィクトリア。先ずはおめでとう。そして安静にし元気な赤子を産んでくれ。産まれて来る子は我々と同じ金髪碧眼の可愛らしい子であろうな。』

そう、アレクセイとヴィクトリアは共に金髪碧眼の容姿をしている。

ヴィクトリアは一瞬固まり、

『ありがとうアレク!これからは忙しくても顔を出してね?この子は後継者になるかもしれないわ!』


メープル王国では、何を置いても正妃の産んだ王子が継承権が高くなるのだ。

ヴィクトリアは上機嫌で出て行った。しかしその手が震えていたことを2人は見逃さなかったのである。






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