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第十四章 過酷な現実

話す事が余りにも少ない現実に、それだけ、俺は静香を放って置いたってことか

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翔太は泣き疲れて眠ってしまった。

静香の意識が戻った時、もし、俺や翔太の記憶が無ければ、そんな静香と翔太を会わせることは、
翔太にとって過酷な現実だろう。

俺だって「誰?」なんて言われたらと思うだけで、背筋が凍るほど怖い。

五歳の翔太には耐えられないことだろう。

俺は毎日静香に会いに病院へ通った。

二人の思い出を話そうとしても、話す事が余りにも少ない現実に、
驚きを隠す事が出来ずにいた。

それだけ、俺は静香を放って置いたってことか。

そんな俺の事を信じて、翔太を育ててくれた静香に感謝しか無い。

今度は俺が静香の為に尽くす番だと自分に言い聞かせた。

俺は仕事をする気分では無かったが、俺の為にアメリカ支社に行ってくれた横溝と、
仕事の打ち合わせをしなければいけなかった。

「社長、大丈夫ですか」

「ああ、大丈夫だ」

「よろしく頼む」

「かしこまりました」

仕事の打ち合わせが終わり、電話を切った。

そこに俺のスマホが鳴った。

静香の病院からだった。

「真壁さんの携帯でよろしいでしょうか、こちら小坂部総合病院の外科医小坂部です」

「真壁です、静香が目覚めたんでしょうか」

「はい、病院へお越し頂けますでしょうか」

「わかりました、これから伺います」

俺は病院へ向かった。
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