上 下
87 / 184
第二十六章 西沢守の告白

葉月への想い

しおりを挟む
血も涙もない、西沢守は葉月と出会って、人間らしい感情が目覚めていったのである。

妹と重ね合わせていた葉月の存在は、西沢の中で変化していった。

『車の中で西沢は一言も言葉を発しなかった。
西沢さん、怒ってるのかな。
マンションに到着すると、車を停めてエレベーターへ向かった。
いつもはエスコートしてくれるのに、西沢はスタスタと先を歩く。
葉月は必死に西沢の後を追いかけた。
部屋に入ると、西沢は葉月の腕を掴み、廊下の壁に押し付けた。
いつもは優しい西沢が極道の表情を見せていた。
「西沢さん、痛いです、離してください」
「葉月、俺の女になれ」
西沢は葉月にキスをした。
腕を押さえつけてる手は乱暴なのに、葉月の唇を啄む西沢のキスは優しかった。
唇が一瞬離れて、押さえつけていた手も離れた。
「葉月、寝てるのか、飯を作ったから一緒に食べよう」
しかし、葉月の答えはなかった。
「葉月、入るぞ」
西沢は葉月の部屋に入った。
葉月はベッドで眠っていた。
頬には涙の跡があり、手に握られたスマホの画面には冨樫が写っていた。
葉月、お前は冨樫が好きなんだな。
俺は何を血迷ったんだ、断れない、でも答えることが出来ない葉月の気持ちを、
わかっていて、あんなことを言ってしまうなんて……
冨樫も葉月との別れは本心ではないな。
あの目は愛おしさに溢れていた。
今、葉月を手放すことは出来ない。
そのためには、俺は兄貴の立場に徹するしか方法はないな。
理性が持つか自信はないが、葉月を守るためなら、俺はやり通してみせると誓った。』


「葉月、お前の気持ちは痛いほどわかっているつもりだ、冨樫を忘れられない気持ちも」

「西沢さん」

「でも、冨樫はお前が危険を顧みず、自分の元に来ることを願ってはいない、わかるよな」

西沢は葉月の腕を引き寄せ抱きしめた。

「俺の側にいろ、俺が冨樫を忘れさせてやる」

冨樫は葉月に優しいキスを落とした。

葉月はそのキスを受けた。

わかっている、冨樫さんを追えば私は危険な目に遭う。

冨樫さんは極道の世界の頂点に君臨しており、全組員を束ねていかなければいけない。

その側には由子さんがいる。

私じゃない。

私の存在は由子さんの怒りを買ってしまう。

それはそうだろう。

今もなお、愛している女と密会すれば、嫉妬するのは当たり前のこと。

私のわがままは冨樫さんを苦しめることになる。

「西沢さん、私を抱いてください」

「葉月」

ベッドに押し倒されて、首筋に熱い息がかかる。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

貧乏庶民に転生!?将来楽しみな子を見つけたので私が守ります!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:85pt お気に入り:668

夜の帝王の一途な愛

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,100pt お気に入り:85

はじまりの恋

BL / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:168

運命の番を見つけることがわかっている婚約者に尽くした結果

恋愛 / 完結 24h.ポイント:16,393pt お気に入り:262

いつから魔力がないと錯覚していた!?

BL / 連載中 24h.ポイント:16,699pt お気に入り:10,472

【新章突入】ショタたちがいろんなものに襲われる話

BL / 連載中 24h.ポイント:631pt お気に入り:328

おかしくなったのは、彼女が我が家にやってきてからでした。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,882pt お気に入り:3,851

【R18】はにかみ赤ずきんは意地悪狼にトロトロにとかされる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:461pt お気に入り:160

処理中です...