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第三章 彼の溺愛

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「美希が心配で迎えに来た、これから朝毎日迎えに来る、それで帰りもここまで送る」

彼は何を考えているのだろうと予想がつかなかった。

「社長、秘書の送り迎えをする社長なんて聞いたことありませんよ」

「じゃあ、俺のマンションに引っ越してこい」

「社長と秘書が一緒に住むなんて聞いたことありませんよ、夫婦じゃあるまいし」

「だから俺は結婚しようって言ってる」

「社長のこと全然知らないですし、いきなり結婚なんて出来ません」

「わかった、今度の休みに出かけるぞ、空けておけよ」

彼は私の意見は聞かず、いつも勝手に決めてしまう、そんな事を考えていると、急に彼は私の手を引き寄せキスしてきた。

ドキドキする、意識が遠のきそう、彼の舌が私の舌に絡んでそのままベッドに倒れ込んだ。彼の唇が私の首筋に触れる、私は思わず声が出てしまった。

「美希、感じた?、このまま一気に最後まで行くぞ」

彼の手が私の太腿へ滑り込んだ。

「駄目、社長駄目です、これから仕事ですよ」


私は慌てて彼から離れようとした。

「じゃあ、続きは夜な」

彼は嬉しそうに言って、支度をして会社に向かった。

会社に着き車から降りると、彼は私と手を繋ぎ社長室へ向かった。

彼の行動は理解出来ない、いきなり抱きしめてキスしたり、我慢出来なかったと押し倒したり、心配だと勝手に迎えに来たり、いい加減な気持ちはないとプロポーズしたり、社内なのに恋人同士みたいに手を繋いだり、私の気持ちはいつも置き去り状態である。

でもそんな彼の私に対する気持ちは嫌ではなかった。でも……

「社長、手を離してください、社内ではまずいですよ」

「なんでだよ」

そこへ東條さんがやって来た。彼は社長の右腕の存在で、この会社を回していると言っても過言ではない。

「社長、お話があります」

「なんだ」

「藤城さんは我が社の社員です、一人の社員にだけ特別扱いはやめていただきたいのですが……」

「特別扱いってなんだよ」


「社用車で一社員の迎えは困ります、また、社内で手を繋ぐ行為もやめていただけないでしょうか」

「わかった、俺これから自分の車で出社するからそれなら誰を乗せようと文句ないだろう」

東條さんは呆れて、これ以上言っても聞かないだろうと察し、社長への忠告をやめた。
私は秘書室に行き、東條さんが私に、付きっきりで仕事を教えてくれた。
彼は社長室と秘書室をうろうろしながら、私を見つめていた。

「藤城、ちょっといいかな」

彼は私を社長室へ呼んだ。

「美希、東條と近すぎだよ、秘書ならずっと一緒かと思っていたのに、全然一緒にいられねえじゃないか」

私にそんなこと言われても……
その時東條さんがドアをノックした。

「失礼いたします、社長、藤城さんへのお話はお済みですか」

彼は思いがけないことを言い出した。

「これから藤城と出かける」

彼は東條さんにそう告げて、社長室を出ようとした。

「どちらにお出かけですか」

「会長に藤城を紹介する」
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