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「霊体さん、何で邪魔するんですか」

何でじゃないだろう、車に引かれるところだったんだぞ。

琴葉は俺がいるであろう方向を睨んでいた。

琴葉はいきなり立ち上がり、大通りに飛び出した。

俺はまたしても琴葉を抱き抱えて歩道に下ろした。

何やってるんだ、自殺じゃ黄泉の国へはいけないんだぞ、魂は地獄で彷徨い続ける。

いくら叫んでも、琴葉には聞こえない。

琴葉は泣きながら、「邪魔しないで」と叫んでいた。

俺は苦肉の策で、琴葉の身体に入り込んだ。

この身体をアパートに運ばないと、そう思って、俺は琴葉のアパートへ向かった。

琴葉は部屋に戻った。

そして俺を呼んだ。

「霊体さん、いるんですよね」

俺は琴葉の手を握った、感触はない。

「暖かいです」

琴葉は俺を感じてくれたみたいに呟いた。

「教えてください、霊体さんは驍なの?」

俺は正体を明かすことは出来ない。




「霊体さんも黄泉の国へ行くんですよね、いつですか」

期限はあと二ヶ月くらいしかないな。

「それまで、霊体の状態で構わないので、一緒にいてください」

琴葉!

琴葉はまるで俺の言葉が聞こえるかのような会話をしてくる。

俺は琴葉の頬に触れた。

そして、琴葉の唇にキスをした。
全く感触はない、しかし、胸の高鳴りは加速して行く。

グッと腰を引き寄せ密着させる。

琴葉も感じていてくれるのだろう、目を閉じて頬がピンクに染まる。

琴葉、許されるならこのまま、琴葉を黄泉の国へ連れて行きたい。

しかし、それは許されない事だ。

琴葉、俺はお前だけを愛してる、感じてくれ、俺の気持ちを。

しばらく琴葉を抱きしめたまま、時間だけがいたずらに過ぎて行った。

琴葉は俺の腕の中ですやすやと眠りについた。

俺は琴葉のアパートをあとにした。
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