極道と財閥令嬢の許されない愛

ラヴ KAZU

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第十六章 衝撃の告白

衝撃の告白

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そこへ柚木が圭一郎の目の前に現れた。

柚木はどうしてもすずかを自分のものにしたくて堪らなかった。

小さい頃からすずかのことを父親から聞いており、妄想は大きくなる一方だった。

そして実際にすずかを目の前にして想像以上の美しさ、癒される笑顔、柚木は一気に気持ちを持って行かれたのだ。

まさか、すずかを狙っているのが藤倉圭一郎だとは夢にも思わず、すずかの護衛をさせてほしいと訴えた。

「自分は元荒瀬組若頭柚木の息子、柚木幹也と申します、ご存知かと思いますが、すずかさんは荒瀬組長の大切なお嬢です、俺にすずかさんの護衛につけて頂けないでしょうか」

圭一郎は口角を上げてニヤッと笑った。

(すずかから竜崎を引き離すのに、こいつは使えるな)

「そうか、立派な息子さんを持って父上も安心だな、実は南財閥のSPが護衛につかないのは、南拓郎には今回のことは秘密なんだ、すずかの願いなんだ」

「すずかさんから聞きました、竜崎さんに護衛を頼んだのは、すずかさんの願いだと言うことも……」

「すずかは俺と結婚したにも関わらず、竜崎と関係を持った、あいつの腹にいる子供は奴の子供だ」

「えっ、そうなんですか」

「お前は今堅気なんだよな」

「はい、極道の血が身体に流れていますが、自分は生まれた時から、現在も堅気です」

「すずかは大切な人なんだろう」

柚木は頷いた。

「すずかも極道の血が身体に流れているが、堅気の生活を送ってきた、
これから先も南財閥を継いで生きて行かなければならない、それなのに、
極道の子供を生ませるわけには行かないだろう」

柚木は冬夜に対して、大切なお嬢を汚したと嫉妬の炎を燃やした。

「俺がすずかの父親に護衛の話をする、竜崎を引き摺り下ろし、お前を後押しする、すずかを頼んだぞ」

「はい」

そして、圭一郎は南拓郎を訪ねた。

「圭一郎君、すずかとうまくやっているかな」

「はい、おかげさまで、実は今日お伺いしたのは、最近すずかが危険な目に遭ってまして」

圭一郎の言葉に拓郎は驚きを露わにした。

「どういうことだね、すずかは何も言っていないが……」

「きっとお父さんに心配させまいと、すずかの配慮でしょう」

「早速SPをすずかの護衛につかせよう」

そして、スマホを手にした。

「実は、すでに竜崎冬夜が、すずかの依頼で護衛についています」

「竜崎さんが……」

「私は反対したんですが……」

「では、竜崎さんにはすずかの護衛をやめてもらい、SPを手配しよう」

圭一郎はすかさず言葉を発した。

「私の推薦する男がおります、その男にすずかの護衛を頼みたいのですが、いかがでしょうか」

「圭一郎君が推薦する男なら間違いないだろう、よろしく頼むよ」

圭一郎は口角を上げてニヤッと笑った。

「早速、明日、すずかとその男を連れて参ります、お父さんからすずかに話して頂けますか」

「わかった、そうしよう」

そして、この夜、圭一郎はすずかに話をした。

「すずか、お前の護衛は柚木に頼むことになった」

「えっ、どう言うことでしょうか」

「お父さんにお前が狙われていることを話した」

すずかは驚きの表情を見せた。

「どうして?」

「お前が竜崎冬夜といつまでも一緒にいるからだ」

すずかは圭一郎の言葉を理解出来ずにいた。

(まるで、冬夜さんに嫉妬しているかのような言葉だわ、まさかね、ありえない)

「圭一郎さんが私のお腹の子供を流産させようとしているんではありませんか」

「当たり前だろう、俺との子供なら許せるが、なんであの竜崎の子供なんだ」

圭一郎はすずかの腕を引き寄せ、無理矢理キスをした。

「ん~ん、やめてください」

圭一郎はすずかを押し倒し、下着を脱がせて秘所に指を入れた。

「やめて、赤ちゃんが」

「すずか、お前は俺の妻だ」

「違います」

圭一郎はすずかの言葉に驚きを隠せなかった。

「何が違うんだ」

「私はあなたの妻ではありません」

「何を言い出すんだ」

「婚姻届は未提出です、私は南すずかです、藤倉すずかではありません」

衝撃の告白だった。

すずかは自分の部屋に閉じこもった。
圭一郎は我に返り、すずかの部屋の前で叫んだ。

「これから婚姻届は提出すれば済むことだ、そして、明日お父さんの元に一緒に行ってもらう、竜崎冬夜の護衛は断るんだ、あいつは結婚を迫られている、竜崎組長を就任がもうまじからしいからな」

(そうなんだ)

すずかは考えていた。

(お父様の言いつけは守らなくちゃダメかも)

冬夜の側にはいたい、お腹の子供も絶対に生みたい、でも冬夜の生きる世界にはついていけないと思っていた。

(もう、これ以上、冬夜さんを巻き込んじゃダメだよね)

次の日、すずかは拓郎の元を訪ねた。

「よく、来たね」

「お父様、心配をかけてごめんなさい」

「竜崎さんにこれ以上迷惑かけるんじゃないよ」

「はい」

すずかは父親の言うとおり、冬夜の護衛は断ることにした。

この日の夜、冬夜は明日の護衛はトモに頼む旨を伝えるため、すずかに電話した。

「すずか、大丈夫か」

「はい」

「明日なんだが、俺は組の用事ですずかの護衛が出来ない、だからトモを向かわせる」

すずかは黙ったままだった。

いつもの様子と違うすずかに気づいた冬夜は「どうかしたのか」と聞いてみた。

「冬夜さん、これから先の護衛は柚木さんに頼むことになりました」

「はあ?どう言うことだ」

「圭一郎さんがお父様に危険な目に遭っていること、冬夜さんに護衛を頼んで入ることを話してしまったんです、それで心配して……」
「それならS Pに護衛をさせるはずだろう」

「それが、柚木さんが圭一郎さんに私を護衛させてほしいと懇願したらしく、圭一郎さんが推薦したんです」

冬夜は圭一郎の企みがわからなかった。

(あいつは何を企んでいるんだ、柚木がすずかの命を狙うはずがない)

冬夜はハッと気づいた。

(藤倉も柚木も思いは同じだ、狙っているのはすずかの腹の子供の命と言うことか)

「すずか、柚木もお前の腹の子供の命を狙っている」

「そんな……」

「すずか、本当のことを話してくれないか、お前の腹の子供の父親は誰なんだ」

すずかは黙ったまま、沈黙が流れた。

すずかは冬夜に本当のことを話すのに躊躇っていた。

これからの竜崎組の組長就任に向けて、冬夜に余計な負担はかけられないと考えた。
「ごめんなさい、冬夜さんには関係ないことです、私が一人で解決します、冬夜さんは竜崎組のこれからを考えて、あなたに相応しい女性と家庭を築いてください、さようなら」

スマホは切れた。

「すずか、すずか」

冬夜は再度すずかの番号をタップしたが、電源が切られた状態だった。

(すずか、俺の子供なんだな)

冬夜はすずかの態度から確信を得た。

その頃、柚木はすずかの言葉を思い返していた。

(すずかさんは竜崎冬夜を大切な人だと言っていた、まさかすずかさんの好きな人は竜崎冬夜なのか)

柚木は次の日、産婦人科に行くすずかの護衛をしていた。

「すずかさん、だいぶお腹が目立ってきましたね、足元を充分に気をつけてください」

「ありがとう、柚木さん」

にっこり微笑むすずかの表情は幸せそのものだった。

「南すずかさん、診察室にお入りください」

「柚木さん、ここで待っていてくださいね」

「はい」

この時柚木は違和感を感じていた。

(今、南すずかって呼ばれたよな、藤倉じゃないのか)

柚木は圭一郎にお腹の子供を亡き者にしろとの指示を受けていた。

『すずかは極道竜崎冬夜の子供を宿している、堅気の世界に極道の子供は生まれてきては不幸になるだけだ』と……

しかし、すずかはとても幸せな表情を見せる。

(子供には罪はないだろう)

この時、柚木は父親の言葉を思い返していた。

『どんなことがあっても、お嬢の幸せが俺達組員の役目だ』と……

(俺はすずかさんの幸せを守るために護衛するんだ)

柚木はすずかの護衛に徹した。

すずかは妊娠を父親拓郎に話すことにした。

この先お腹がもっと目立ってくれば、隠し通すことは難しい。

そして、実家に帰ると言って圭一郎から離れられる。

これを機に婚姻届を未提出だと話そう。

シングルマザーでこの子を育てることも……

「圭一郎さん、私は出産に向けて、実家に帰らせていただきます」

「婚姻届は提出したのか」

「いいえ、まだです」

「さっさとしろ」

すずかはその気はなかったため、黙ったままマンションを後にした。

マンション前で、柚木が待機してくれていた。
「柚木さん、ありがとうございます」

「いいえ、ご実家に向かえばよろしいですね」

柚木はすずかから荷物を受け取り、トランクに入れた。

そして後部座席のドアを開けてエスコートしてくれた。

この時、柚木は自分の気持ちを反省していた。

(俺は間違っていたんじゃないだろうか、すずかさんのお腹の中の子供を亡き者にしようとしていたなんて……)

柚木は確かに圭一郎にすずかの護衛を頼まれたが、それは表向きですずかのお腹の子供を亡き者にしろとの指示だった。

(もし、そんなことをしたら、すずかさんはショックを受けて、この世から消える選択をしかねない)

柚木はそれほどすずかのお腹の子供への愛情を感じていた。

すずかの実家に到着すると、荷物を持ってすずかと共に実家に入った。

「すずか、どうしたのだ」

「お父様、私、妊娠しています、しばらくの間、こちらにいさせてください」
「なんと、本当か、それはめでたい」

「お父様、違うんです、この子は圭一郎さんの子供ではありません」

拓郎は言葉を失った。

「もう一つご報告があります」

拓郎は息を呑んだ。

「私は圭一郎さんとの婚姻届は提出していません」

「どう言うことだ」

すずかの言葉に柚木は不思議だったことに納得がいった。

「私はこの子をシングルマザーとして育てます、そして私の危険な目に遭っていることは圭一郎さんがこの子を亡き者にしようとしているからです」

衝撃の言葉に拓郎は立っていられず、その場にへたり込んだ。

「お父様、大丈夫ですか、こんな私を許してください」

「いや、大体の察しはついていたよ、その子は竜崎さんの子供なんだね」

「お父様」

拓郎はすずかの後ろで待機している柚木の存在に気づいた。

「柚木くん、すずかの護衛は今日限りにしてくれ、あとはこちらでSPをつける」

「あのう、俺は確かに藤倉氏から、すずかさんのお腹の子供を亡き者にしろと指示されましたが、俺はすずかさんを守ることが俺の役目なんです、だから……」

「すまん、君を信用しろと言うのは無理だ」

「柚木さん、ごめんなさい、今までありがとうございました」

柚木は仕方なくその場を後にした。


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