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Ⅲ
あは、こんなんもキくんだ?
しおりを挟む「ぁ゛、ひ……ッ……」
ぎし、と椅子が鳴る。
絢斗は自席に縛りつけられていた。両腕は後ろ手に椅子の背に縛られて、両足はひらいた状態で椅子の前脚に繋がれていた。
「ゃ゛……あっ……」
軟膏が塗られてすぐ、強烈な痒みに襲われた。
うぞうぞと突起の表面に小虫が這い回るような掻痒は、刻一刻と増して絢人の理性を蝕んでいく。
「……ふ、……ッく、ぅ゛……」
先に塗られた媚薬と相まって、どくどくと芯から溢れる性的な疼きと、のたうち回りたいほどの痒みが入り混じり、頭のなかがぐちゃぐちゃに搔きまわされる。
はくはくと口がひらく。意味もなく腰が浮いて、落ちて、をくり返す。
かゆい、かゆい、痒いかゆいかゆい……っ!!
痒みをぬぐいたい衝動であたまがいっぱいになる。なんでもいいから搔いてほしい。だれでもいいからそこにおもいきり爪を立ててほしい。今すぐに喚き倒して、地に額をつけてでも懇願してしまいたい衝動を奥歯で噛み殺しながら、じっと疼きの根源を睨みつける。
「ん、ぅ゛……」
今度は刺激となるものがないようにと、シャツのボタンは開けられたままだった。剥きだしで放置された乳首、それから机の端が目に入る。その丸みを帯びた側面に、突起を擦りつけられたなら、どんなにきもちがいいだろう。想像するとたまらなくなって、椅子を揺らして前にせり出した。どうにか胸元が触れる位置まできたが、高さが合わない。もっと前のめりにならないと当たってくれない。絢斗は必死にからだをゆり動かして、腕の拘束を緩めようとギシギシと縄を鳴らした。
「せんせー。絢斗がうるさいです」
隣のクラスメイトが手をあげる。絢斗に視線が集中する。
「あっ……」
振り向いた教師が目を細める。
「そうだな。教科書をひらいてもいないし、板書もしていないし、授業態度に問題が見られる。授業をサボってなにをしているのか知らないが、なんにしろ参加の意思がないのなら、せめて無駄なことができないようみんなにここで見張ってもらおうか」
ここ、と言って教卓の横を差す。絢斗の顔が青ざめる。
「や、あっ……あのっ、もう静かにしてますから」
慌てて姿勢を戻すも遅かった。教師の声に従って二人の生徒が絢斗の椅子を引き摺っていく。
「やっ、やだっ、やだ……っ」
教卓の前まで移動させると、くるりと向きを変えさせられた。クラスメイトの対になった何十もの目が突き刺さる。咄嗟に頭を下げる。
それでもひしひしと感じる視線に、全身が焦げるように熱くなっていく。
「っ、ぅ゛……」
一瞬、羞恥で飛んでいった痒みが舞い戻ってくる。一秒だって耐えがたい焦燥。けれどさっきまでのように、はしたなく腰を揺らして悶えられるほど、絢斗は自分を捨てきれなかった。
「……んぅ、ぅ……ッ」
真っ赤になった乳首も、腹筋をつたう汗も、震える膝も、一挙一動を見られていると知って、懸命に身じろぎや声を抑え込む。ほんとうはおもいきり喚いて、がむしゃらにあばれたかった。そうすればすこしは発散されるはずの熱を、疼きを、じっと黙って堪えるだけの時間は精神的な苦痛を募らせていく。
「ふぅ、ぅ、ぅ゛……っ♡」
泣きたくもないのに目尻が熱くなる。まるでぐずるようなか細い泣き声が、授業のおわりまで教室に響きつづけた。
「絢斗のせいでぜんっぜん集中できなかったわ」
授業終わり。クラスメイトたちがぞろぞろと教卓の前にせり出す。
「なー、まじでえろすぎるって」
「えろいのはいいけど我慢はしろよ、授業中なんだからさ」
「赤点取ったら補習付き合えよ」
あまりに理不尽な言いぐさに、言い返そうと頭を持ちあげたのに、背後から伸びてきた手に乳首のきわをくすぐられて悲鳴に変わる。
「──ひっ!?」
「ほらほら、反省してんのかって」
「んやっ、や゛っ、やめろそれ、ッ……!」
こしょこしょと二本の指で突起を左右から挟むようにして乳輪を擽られる。肝心なところにはぎりぎり触れない。意地のわるいたわむれに絢斗はろくに動かない身体をよじった。
「っ、っ、手、どけろっ、てぇ……!」
「なんでだよ。なんも感じないんだろ」
「ひぁ──っ♡!」
別のクラスメイトが前に屈み、もう一方の乳首にふーっと息を吹きかけた。絢斗は目を見開いて、ぶるぶると肩を震わせる。
「あは、こんなんもキくんだ? どんだけ敏感になってんだよ」
「ち、ちが……っ、やめ」
窄まった唇が、さっきもよりも細く、長く息を吹きかけた。
「ん゛、っふ───♡♡」
ゾクゾクゾクッと甘い痺れが背筋を走る。まっかに膨れあがった突起を撫でつける吐息の愛撫。敏感になりすぎた表面は、そんな無形の刺激すら過敏にひろいあげてしまう。そのあからさまな感じようを笑われながら、両方の突起を別々の刺激で焦らしてあそばれる。乳輪に指を擦りつけられ、吐息に弄ばれ、耳の穴や首筋まで、発情を焚きつけるようにくすぐられ、頭の中が煮えるように熱くなっていく。胸の尖りの疼きが、かゆみが、燃えるように広がっていく。
限界だった。
「ッ……さ、わって……っ、もっ、おねがい、かゆい、痒い、からぁ……っ」
とうとう降参して口を割ったというのに、
「痒いだけ?」
きゅう、とくびりだすように乳輪をつままれて、短い悲鳴が漏れた。
「痒くて勃起すんの? 変態じゃん」
張りつめた下半身を指摘されて、なにも言えなくなった。ふうふうと目に涙を浮かべながら膝を内側に寄せる。ぐっぐっと縛られた足を浮かせて閉じようとする。
「ふっ、ふふ、いやもう隠せねーって」
絢斗が格闘している間に、また小瓶の蓋があけられた。軟膏を乗せた筆先が迫ってきているのを捉えた瞬間、絶望感に突き崩された。
「きっ、きもちい……! ちっ、……ちくび……きもちいい、からっ……さわって……っ」
これ以上抗ったって、苦しい時間が長引くだけだ。
これは打算的な敗北だった。ほんとに屈服したわけじゃない。そう自分に言い聞かせながら、絢斗は彼らが喜びそうなことばを選んで懇願した。
くしゃりと頭を撫でられる。よくできました、いうような手つきに顔をあげると、おだやかな笑みを向けられた。
「あんな生意気言っていて、お咎めなしとかあるとおもう?」
ぐちゅりと筆先が突起に押しつけられた。
「ひ、────!!」
「だから暴れんなって。変なとこについたらそこまで痒くなるぞ」
素早く両胸に痒み剤を塗りつけると、筆先はすぐに離れていった。次の瞬間、ぶわっと新鮮な痒みに襲われる。
「あ゛ああぁ゛……っ!!!」
ぎちりと縄が軋む。
「かいてっ、かいてぇ゛っ、おねがいっ」
「だーめ。もうおしまい。おれたちもはやく絢斗の乳首いじくりたいの我慢してんだから、絢斗も我慢な」
「や゛だぁっ!! やだやだやだッ、もうむりっ、ほんとにむりなんだってばぁ゛……っ!」
チャイムが鳴る。次の授業がはじまる。
最初の十分間はさっきまでのように、からだをできるだけ縮こまらせてこらえていたが、すぐに我慢できなくなって、恥も外聞もなく腰を揺らし、声をあげて刺激をねだった。搔いて、搔いて、と泣き啜る声を無視される。それでも喚いてないと頭が変になりそうで、絢斗は泣き叫びながら何度も懇願を口にした。
授業が終わると、ごめんなさいと叫んだ。
「ご、めんなさ……っ、も、なまいき言わないからぁ゛……っ」
プライドをかなぐり捨てて、無様な謝罪を繰り返したのに、今度は媚薬をたっぷりと塗りつけられた。性的な疼きが倍増する。その時にはもう痒みとも疼きともしれない微弱な電流めいた快感が常に纏わりつくようになってて、なにもされていないのに、まるで性器をしごかれているかのような腰元のビク、ビク、とした断続的な震えが止まらなくなっていた。絢斗は胸を突きだして刺激をねだったが、次は移動教室だからとひとり教室に取り残された。
地獄のような時間だった。
わざと時計が見えない位置に向けさせられて、いまが何時かわからない、あと何分、何秒、耐えつづければいいのかわからない。先行きが見えず、ただただ猛烈な痒みと疼きに向き合うことしかできない時間は、途方もなく長く感じられ、絢斗の精神をすり減らした。
大声で叫べばだれか来てくれるかもしれない。けれど来てくれたとして、たすけてくれるかはわからない。絢斗は汗ばんだ胸の上で哀れに震える突起を掻きむしる妄想で自らを慰めながら、刻一刻と増していく苦悶に啜り泣きつづけた。
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