調教済み騎士団長さまのご帰還

ミツミチ

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 折りたたんだ状態の足を縛り、膝に通した縄を寝台の上部の柵へと結びつけた。頭上に重ねて縛りあげた手も同様に柵へと結ぶ。固く縛りあげたことで、満足な身じろぎもできない不自由な恰好。天井に向かって急所をさらけ出す、無防備な恰好だった。
「……すまない、こんなことをさせて」
 恥じ入った表情で彼が言った。ディエゴは、いえ、と短く返し、後孔に指を宛がう。両手を戒められたレオネルは、代わりに唇を噛みしめた。
「……っ」
 蕩けた肉壁が二本の指を受け入れる。咄嗟に閉じかけた膝が、無駄に縄を軋ませた。
「……んっ、ッ、ぅ……っ」
 再度触れてみて気がついた。指先に感じる盛り上がりは、スライムの厚みのせいだけでない。これが取りついた場所自体に、膨らみがあることに。
 ……男の内側に、いいところがあるのだと、酒場で酒の肴にしたような下世話な話を思いだす。
「ッ……んん゛っ!!?」
 スライムの上から、その膨らみの形、脈動を確かめるように撫でる。そうして確実に指先に捉えてから、ぎゅうっと圧迫するように指を押しこんだ。
「っ、っ~~~~~~♡♡!!?」
 レオネルの首が反り、肉壁がきつく狭まった。
「っ……ぅ゛……っア゛、あぁ゛あ……っ!」
 締めつけにより、余計に指がそこに沈む。より形を鮮明にしたしこりを、押しこんだままぐにぐにと揉みしだく。ついで、異物に反応を返すスライムの蠕動も激しくなった。
「───っひ♡♡!!? あっ、あ゛ぁあっ♡♡ なっ……っぐ、んん……っ、っ゛~~~っぅ、あっ、ァア゛ッ!」
 溢れだすあられもない声。慌てて唇を噛みしめようとも、揃えた指を左右に揺さぶれば、すぐに口が開き、弾けるように嬌声が漏れた。
「あ゛っ……っ、っ、っ~~~~~♡♡!!」
 レオネルの顔が真っ赤に染まっていく。それでも指を止めずにいると、拘束の中で激しく身を捩り始めた。しかし堅く縛りあげられた中では、ただギシギシと縄の軋む音が立つだけで、スライムはもちろん、ディエゴの指もその膨らみを離すことはなかった。僅かにうごける範囲内で極限まで背を反らせ、数秒後にがくんとシーツに落ちる。
 一度、指をそこから遠ざけた。
「はっ、はー、はーっ、ぁ……っ」
「痛いですか」
 首を横に倒したまま、ただ息を乱す。彼にもう一度問うても、返事はなかった。
「……きもちいいんですか」
「は、っ……」
 半分落ちかけていた瞼が開く。
「感じているんですか、ここで」
「……ちが、っ」
 否定を反応が覆す。刺激が退いた今も、いまだ震える肌が彼の口より弁明にそれを語っていた。
「っ、ディエゴ、もういい、すまなかった、もう十分だ、指を抜いてくれ」
「なぜですか。まだ取れていないのに」
 スライムを摘まみ、手前へ引く。剥がされまいと貼りついたそれが、引かれる強さのぶんだけ膨らみを吸いあげる。それがどれほどの感覚をもたらすのか、レオネルは筋だった内腿をガクガクと震わせながら、顔面を更に血色よく染め上げた。腹にぽたりと落ちる、先走りの蜜。彼の体躯に見合った立派な陰茎は、根を縛られたまま充血していた。
「あ……!?」
 その熱を手のひらに包むと、焦ったように縄を軋ませた。
「ここは? なぜ縛っているんですか?」
「やっ、やめろ、離してくれ……!」
 これ見よがしにみせつけておいて、そんなことを言う。緩く竿を扱くと、ディエゴを止めようと手前に浮きかけていた頭がぼすんと枕に落ちた。
「あぁ゛……っ!」
「答えてください」
 扱く速度を上げる。レオネルは顎を反らせ、張り詰めた勃起を扱かれる刺激に打ち震えた。後孔を責める手も再開させると、反った喉から攣ったような声が漏れた。
「………ひッッ、ィ゛っ────♡♡♡」
 多重にかさなる刺激。逃げ場のない快感に、拘束のなかでレオネルの身体がバウンドする。ベッドのスプリングがひどい音を立てながら、彼の抵抗を吸収する。ディエゴは刺激に震える性器を淡々と責めたてた。その内にレオネルが口を開けた。
「……だっ、だすと、ッ、ちからが抜けて、しまう、んだっ、っ~~~から゛っ♡」
「射精すると? ということですか? それだけ?」
 身を屈め、再度問う。逃げ惑う瞳に追い打ちをかけると「に、においで、ばれる」と白状した。
 彼の、おかしな態度に合点がいった。一体いつからこの緊縛がなされたかは知らないが。彼は自分や、ひょっとするとまだ団員らがいる頃から、スライムの密かな蹂躙に晒され、射精を抑制しなければ耐えられないほどに追い詰められていた。ほほ笑みさえ浮かべて、陳謝の言葉をつらねた際も。道中に軽傷を負った自分を気遣った際も。街中でくずおれた際もずっと、その心身はただ快楽にまみれていた。だれでもない、追及するまでもない、まごうとこなく。敵に植えつけられただろう、この淫靡な魔物によって。
「なっ」
 根を縛る紐を解いていく。
「あなたの肉が指を締めつけすぎていて、うまく動かせません。いっそ射精をして、力を抜いていただいた方がよいかと」
「待てっ、だめだっ、や、やめてくれ、それは───っ」
 紐が落ちる。ディエゴは陰茎から手を離し、代わりに後孔を埋める指を鉤型に折り曲げ、敏感な場所を強く圧迫した。
「───ぅ゛あッッ、あぁあああ゛っ!!」
 びゅるりと絞りだされた精液は、彼の首元まで散った。どれだけ溜めていたのか。勢いのいい射精をもっと見ていたくて、しこりを虐める指を三本に増やして丹念にそこを刺激する。
「っ、っ~~~~あ゛ぁあッ、あっ、アァア゛ッッ♡♡!! や゛っ、やめ゛っ、そこ……ッあぁ゛ああっ……!!」
 スライムは常にぬちゅぬちゅと快楽の核をしゃぶっている。その上から揺さぶりと圧迫をかけてやると、腹に垂れた性器は簡単に精を飛ばした。
「ひぃ……ッ、イ゛っ、ッッ……♡♡」
「すごいですね。尻だけでそう何度も達せるものですか」
「っぅ゛、ッ~~~~~うぅうう゛っ♡♡」
 射精が落ちついてくると、陰茎を扱いた。上から下へ、絞るように扱きあげる。そうすると彼はまた白濁で自らの腹を汚しながら達した。手のなかの熱。その弾力。男のからだに興味はない。しかしたかだか手淫でこれほどまでに感じ入る、その態度に腰の中心が熱くなっていった。
「い゛っ……くっ♡♡ イ゛くっ、っも、いくっ、イく、ぅ゛、うぅうッ~~~~~♡♡♡」
 なにを今更。ずっとイッてるだろうに。深い訪れに堪えるように体をこわばらせたレオネルの、赤く膨らんだ亀頭を撫でまわすと、拘束された四肢が大きく跳ねた。
「───あ、ァア゛ッッ♡♡!!!」
 宙を掻く爪先がビンと突っ張って、彼のペニスから尿とも精とも違うものがぷしゅっと吹きでた。ディエゴは一瞬おどろいたが、
「はっ……あ゛、っ、っう……み、みるな……っ」
 みないでくれ、と鳴く声に、これも仕込まれたものかと知り、亀頭を嬲る手を再開する。
「ひっ……いぃい゛っ♡♡!!? や゛っ、やめ、いまっ、あ゛っ♡ あっ、ア゛っ……イッ──いぐっ、いくっ、い゛、また、っあぁあ゛……ッッ!!」
 レオネルは顎を反らせて悲鳴を上げた。また潮を吹くかとおもったが、今度は勢いのない精がとろとろと漏れでるだけだった。後孔の性感帯を揉みしだく。そうしてペニスの裏側から押しこむたびに漏らす、雄として欠陥めいた射精だった。
「……っは、……っひ、ィ゛っ!?」
 スライムを摘まみ、強く引く。指に少しの捻りを入れると、スライムは敏感な膨らみに吸いついたまま激しい振動をくりだした。レオネルは顎を反らせたまま、全身をガクガクと震わせる。後孔の痙攣が指をしゃぶる。
「あ゛っ……っが、ッ、っ─────♡♡」
 首を反らせ、舌を突きだし、その瞳は宙を舞う。亀頭をぬるりと撫でると、簡単に潮を吹いた。
「あぅ゛ッッ!!?」
 更に指を引くと、ぢゅぽんっと音を立ててスライムは腸壁を手放した。異物を後孔から抜きさる。依然として蠢く、グロテスクな塊をそこらに投げ捨てると、目標物を失った魔物はうねうねと床を這った。
「……っは、……はーっ、は、ぁ゛」
 彼を、苛むものはもうなにもないのに。レオネルの腰は今も達しつづけているかのように震えていた。
「わたしたちがあなたを探している間、そんなふうにして、肉欲に溺れていたんですか」



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