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しおりを挟む緻密な計画が功を奏し、我が騎士軍の長である団長の奪還に成功した。往路に敵の痕跡が確認された為、復路は少数精鋭の隊を更に分け、領地より踏み出た後に合流することとなった。ディエゴは騎士団長と二人、行商人に扮して町に潜んでいた。
「レオネル様、おっしゃってください」
街角の古びた宿屋。ベッドに腰を下ろす団長の前に、ディエゴは跪いていた。頭を下げた男の表情は伺えない。しかし彼の様子は、救出時よりどこかおかしかった。二ヵ月に及ぶ拘禁生活。憔悴は予想の内であったが、明らかにそれだけではない様子に、一体どんな扱いを受けたのか。考えるだけで腸が煮えるようだった。
「……レオネル様」
敵陣より遠ざかるほどに不調は顕著となり、街に踏み入ってすぐ、その膝が地を突いた。
「足ですか」
そっと手をおくと、熱いものにでも触れられたかのように膝が跳ねた。やはり、と察するも首を振られ、
「……悪いが、ひとりにしてくれないか」
数刻前にも同じことを言われた。しばし宿を離れるも現況に変化はなく、むしろ悪化したように、ベッドの上にうずくまり、吐息を乱す彼の姿。肌を湿らす汗。紅潮を灯す頬。かすかに震える肢体は、痛々しく、弱々しい。窮地に追い詰められた時も、三日三晩寝ずに進軍した時も、活気強く皆を鼓舞し率いた、気高い男が、
「どうかおっしゃってください。日の高い内なら薬も用意できます。街を出た後は、また道なき道を進まねばなりません。懸念材料は捨て置かねば」
団員と落ち合うまでに、追っ手がこないとも限らない。レオネルが顔を上げた。整った眉が苦しげに歪んでいる。
「……おまえの命まで、脅かすわけにはいかないな」
「おれのことはかまいません。あなたが」
「嫌なことを頼む」
なんなりと。ディエゴは即答した。しかしレオネルが服を脱ぎはじめたのをみて、驚きに目を丸くした。しゅるりと下履きが床に落ちる。肌を晒した足に、負傷と呼ぶほどの傷はない。ではなにが……と疑問に答えるように レオネルは下着を取り去った。
まず、この場にそぐわぬ勃起に目がいく。その次に陰茎の根を縛る細縄に。それから、
「……ここ、に」
片足を上げて広げられた陰部の奥。赤く、濡れた窄まりに。
壁に背を預け、開いたレオネルの足の間にディエゴは腰を据えた。二人の男を乗せたベッドはわずかな身じろぎで軋み、つられるようにディエゴの鼓動も奇妙に高鳴った。そろりと手を伸ばし、窄まりに触れる。強張る内腿を視界の端に捉えながら、指を沈めていく。抵抗もなく、まるで女性器のように、後孔は節くれ立った中指を飲みこんでいく。
──魔改造されたスライムが、内側から臓を蝕んでいる。
俄かに信じがたい事実が、第二関節まで進んだ先で触れた、ぬるりとした感触に裏付けられる。
「これが……」
それは歪な円の形に広がり、一部の肉を食むように取りついていた。表皮は潤滑油のようなものを纏っており、そのせいで濡れるはずもない器官が濡れそぼっていた。スライムの浸食範囲をたしかめるように、周囲をなぞる。
「っ、っ……」
指がうごくたびに、筋立った腿が震えた。
「痛いですか」
レオネルは小さく首を振った。先走りを零す熱を一瞥してから、視線を戻す。盛り上がったスライムの、その頂点に指を乗せて気がついた。
「これは、動いているんですか」
指の腹に伝わる蠕動。スライムは、まるで取りついた肉をしゃぶるかのように蠢いていた。
「そっ……だ、そのせいで、っ」
びくん、とレオネルの背が丸まり、下ろした右手がシーツを握りしめた。
「自分の指では、取れないんだ」
力が入らずに、と続けて、
「たのむ……取ってくれ」
低く、掠れた声の懇願に、胸の奥がざわめいた。
「……はい」
一度指を抜き、二本揃えて挿入する。熱を帯びた肉壁が指に絡みつく。
「……っ……!」
押し進めた指を開き、取っ掛かりもないスライムを両側から挟みこむ、
「んんっ……!」
そのまま引き摺りだそうとしたと同時、
「うああ゛っ、あぁっ……!」
スライムの蠕動が激しくなった。抵抗するようにそのからだを波立たせ、覆った肉壁をいたぶっている。スライムの分泌液が淫猥な水音を立て、その音に呼応するように、レオネルの下腹部がビクビクと震えた。
「あっ、っ、……ッ!」
背が壁をずり落ちていく。指を的からはなすと、スライムの抵抗は徐々に落ちついていったが、
「はあ、っ……っふ、ふ」
みだれた呼吸に合わせて、汗ばんだ胸元が上下する。震える肌を見下ろしていると、彼ははっとした様子で身を起こした。すまない、と小さく述べられた謝罪を再開の合図として、スライムへ指を伸ばす。その弾力を敵と学習したのか、今度は触れただけで激しくその身を揺さぶりはじめた。
「うあっ、ッ」
レオネルは自らの両手で口を塞ぎ、
「んんっ、ぐぅ……う……っ」
まぶたを強く閉じ、きつく眉を寄せた。ふとその表情が視界を掠めると、目を離せられなくなった。彼を見つめながら、スライムの上に指を置く。抵抗を抑えつけるように深く指を沈めると、敵意を悟ったスライムが強烈な振動を繰りだした。
「ッッ゛!!!? ッ、ッ、ッ────!!!」
指先が痺れそうなほど細かく、激しい振動。レオネルの目が見開く。全身の筋を突っ張らせたかとおもえば、次の瞬間には封を切ったように激しく痙攣しはじめた。ディエゴは男の膝を抱え込み、さっきよりも強い力でそれをひき摺りだそうと試みる。しかし反発するスライムは余計に肉にへばりつき、震えたまま、ぢゅうっとそこに吸いついた。
「ッ、んん゛ッ─────!!!」
レオネルが激しく身をよじる。上半身はベッドにずり落ち、足をばたつかせたせいで、指が秘部から抜けおちた。
「っふ、~~~~っふぅ゛、ッ、ッ、」
口元を押さえながら、シーツの上で丸く縮こまる。震える肌の上を汗がつたい落ちていく。びく、びくっ……と余韻に浸るように断続的に跳ねる身体を見下ろしながら、ディエゴは数時間前のことを思った。
……ひとりで、これをしていたのか、彼は。自分がいない間、ベッドに伏し、足を開き、……みずからの指で。
「レオネル様。そのように身をかわされると、うまく的を掴めません」
レオネルは緩慢に首を上げた。乱れた前髪が落ち、色素の薄い瞳がディエゴを見た。
「……おれを、縛ってくれないか」
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