3 / 8
剣士ルート
1-2
しおりを挟む「大丈夫か?」
酒場の喧騒の中。背筋を正して座る男の隣に腰掛けた。散らかった机の上。空のジョッキが目に留まる。
「ユリアに飲まされたんだろ」
当の本人は舞台の上で知らないだれかと踊っていた。剣士が顔をあげる。完全に据わった目。ともすれば睨んでいるようにもみえる鋭い視線に、勇者は小さくほほ笑み返した。顔色にこそ変化がなくわかりにくいが、この男がこれで泥酔していると知っていた。
「ほら。水」
透明のグラスを彼の前に置く。
「無理に付き合わなくていい。いつでも宿に戻って休んでいいからな」
剣士の目は何も答えず、まっすぐ向いたまま。執拗な視線に、後ろになにか、と振りかえると、その先には給仕の女性がいた。
「なんだ。気になるのか?」
いたずらっぽく笑うと、剣士の眉根がゆがんだ。
「ちがう」
「いいんだぜ。ダラスだって、もっと好きに振舞って」
イサークはやりすぎだけど、ととっくの昔にだれかと消えていった男に苦笑する。
「……すきに、振る舞う」
「そう。気になったんなら口説けばいい」
「……口説く」
オウム返しの男に、ほんとうに大丈夫か?と心配になるも「どうすれば」と尋ねられて些か面食らう。
口説く、といっても、
「まず、まっすぐに相手を見つめて」
彼が口下手なことも勇者はよく知っていた。
「長く見つめても相手が目をはなさなければ、腰を引き寄せて、手の甲にキスをする。ダラスならそれだけで十分な口説き文句になるだろ」
ガタリと剣士が立ち上がる。つられて視線を上向けると、両脇に手を掴まれて引っ張りあげられた。
「うわっ」
足が宙に浮く。向こうの方から、何してんだと笑う声が聞こえた。高さを調整されて足裏が地に突く。どうした、と顔を上げるとバチリと目が合った。
「ダラス?」
剣士の腕が腰元に回る。ぐいと引き寄せられて、互いの顔が近づいた。酔いに濡れた瞳に至近距離で見つめられて、不意に心臓が跳ねる。剣士はからだを前方に傾けるようにして、更にぐぐ、と近づいてきて、そして、そのまま倒れ込んだ。
「だっ──ダラス!」
剣士の目は、あの時と同じ瞳の色をしていた。それに気づいた瞬間、ぶわっとからだが熱くなる。
「っ、っ」
「どうした」
「あ、その、ちが、」
鼓動が早まる。顔が見てられず、壁を向いた勇者に剣士は訝しげに眉を寄せた。ダラスが?おれを?いつから?いや、それよりも、ほんとうにそうだとしたら……おれは、なんてことを。
「ちがう、ちがうんだ、おれ、知らなくて」
「……なにを」
一寸置いて、剣士の瞳が僅かに揺らぎ「思いだしたのか」と呟いた。勇者は頷くことも、首を振ることもできなかった。
「いい」
「え?」
「なにも考えなくていい」
勇者が二の句を発する前に、剣士は律動を開始した。滾る肉棒をギリギリまで引き抜いて、
「えっ……あ゛ッ!?」
ずんっと一息に奥までを貫く。
「───っ、っっ~~~~♡♡」
二人の腹の間に潰れたペニスがとぷりと精を漏らす。しかしそれを意に返さず、同じ動きが繰り返される。太い竿でみっちりと広げられた内壁を引きずる勢いで抜かれて、その衝撃が飲みこめない内から奥まで貫かれる。
「あんっ、んんんん゛……!! だっ……ダラスッ、だらす、まて、待……って、あっ♡ あぁ゛っ、ま、またイ、い、くっ、ぅ゛ッッ、ッ………!!!」
身構える余裕も、落ちつく間もなく、激しいピストンに繰り返し強烈な快感を打ちこまれる。敏感な場所を突き上げる剛直にまた絶頂に落とされて、それでも止まらない刺激に逃げを打つように、ペニスを包む媚肉がびくびくと激しく収縮する。
「ひぅ、っ、ッ、ッぅ゛~~……! んぅ、んんん゛……♡♡」
目蓋をかたく閉じ、奥歯を噛みしめて快感の荒波に揺さぶられる。これ以上惨めな姿を見せまいとする意思を砕くように、ばちゅんっと深く腰を打ちつけられて、濁った悲鳴が喉を駆けぬけた。
「あぁあア゛ッ……!! い゛っ……も、もう、イった、イってるっ、ダラス、待って、おかひ、っからだ、あぁあ゛っ、ああ゛ぁあ゛っ♡♡」
これ以上の快楽は受け止めきれない。そう思うのに浅ましい媚肉はペニスにしゃぶりつくように絡み、離さまいと食いしめる。滾る肉棒に甘い快感をもたらす淫靡な動き。ぽたりと、自分を犯す男の肌から汗が滴った。
「はっ……ひ、ぁ゛っ……」
不意に顎を持ちあげられる。濡れた瞳に見つめられて、とくん、と鼓動が高鳴った。
「だ、ダラス……んっ」
口づけが落とされる。ちゅ、と触れるだけのキスの後、深く重ねられた。開いた唇の隙間から舌が入りこむ。熱い吐息。熱い舌にかき回されて勇者の表情が蕩けていく。咥内を塞がれたまま、肉筒を掻き回される。触れる舌の甘さとは真反対の荒々しい腰つきで、長く、太いペニスがごちゅごちゅと敏感な肉を扱き立てる。
「ふぅう゛っ♡♡ んん゛っ……ぐ、んんッー!!」
剣士の手が勇者の後頭部に回る。肌の隙間がなくなるほどに抱きしめられて、満足な身じろぎひとつもできないまま犯される。
「ん゛っ、っ─────♡♡♡♡」
ぐり、とカリ首に敏感なしこりを穿たれて、瞑った目蓋の裏に閃光が散った。
「っ~~~は、はぁ゛っ♡ ふぁっ、あっ、あぅ、う……っ♡」
唇が解放されて、だらしなく開いた口端からどちらともつかない唾液が伝いおちる。焦点の合わない瞳。赤く染まった頬。
「はっ……ぁ、っは、だ、ダラス」
きっと、心底情けない顔を晒しているだろうに。剣士は愛しさに満ちたような瞳で勇者を見つめていた。
「どういう理由であっても、お前がおれのところに来てくれて嬉しかった」
汗で額に貼りつく前髪を指先で梳き、
「この状況を利用して悪かった。お前が言ったとおりに」
頬を包みこむ厚い皮膚、硬い手のひらに彼を感じた。
「明日には、すべてを忘れてくれ」
ただこの一晩だけは、と呟く声はそこで途切れて、ダラス、と勇者が剣士の名前を呼ぶ前に律動が再開した。不意に最奥でペニスが止まり、吐きだされる熱を感じた。肉体を蝕む疼きが消えていく。忌々しい呪いは解かれた。しかし彼の腕のなかにいる間、高鳴る鼓動がやむことはなかった。
──翌朝。
「いつまで寝てんだよ」
ノックの音に起こされて扉をひらいた先。勇者の部屋の前には、魔導士が立っていた。
「……おはよう」
そう、勇者の部屋の前。シーツのよれもない、なんの痕跡もない自室に一人。まさか夢かともおもったが、
「ダラスは」
魔導士が、ん、と指差す。窓の外。一つの型をなぞるように延々と剣を振るう男の姿。
「いつからか知らないけど。少なくともおれが起きたときから、ずっとアレ」
「……イサーク。呼んできてくれないか」
「え、やだよ。なんでおれが」
頼む、とうつむく。その奇妙さに逆に断ることにわずらわしさを覚えたのか。魔導士は剣士を呼びにいった。そのあいだに身支度を済ませ、宿の入り口に集まった仲間たちに声を掛ける。
「昨日はすまなかったな。今日からはまた長旅になるだろうから、あらためて物資を調達してから出よう」
さあ、と一歩踏みだしたところで、あらぬところに走ったあらぬ違和感に勇者は盛大によろけた。その肩を剣士が支える。
「あ、ありがとう」
昨日とおなじだ。自分を支えるその腕も、その恰好も、昨日となんら変わらないはずなのに。その瞬間まで二人意識して逸らしていた視線が交わされる。その瞳の奥に揺らめく熱を、見てみぬふりはできても、気づいていないふりはもうできなかった。
その一歩後ろ。賢者は匂わせんなっつっただろ……と虚空を見つめていた。
135
あなたにおすすめの小説
お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)
神官、触手育成の神託を受ける
彩月野生
BL
神官ルネリクスはある時、神託を受け、密かに触手と交わり快楽を貪るようになるが、傭兵上がりの屈強な将軍アロルフに見つかり、弱味を握られてしまい、彼と肉体関係を持つようになり、苦悩と悦楽の日々を過ごすようになる。
(誤字脱字報告不要)
ナイショな家庭訪問
石月煤子
BL
■美形先生×平凡パパ■
「いい加減、おわかりになりませんか、進藤さん」
「俺、中卒なんで、キビとかカテとか、わかんないです」
「貴方が好きです」
■イケメンわんこ先生×ツンデレ美人パパ■
「前のお宅でもこんな粗相を?」
「まさか。そんなわけありませんって。知永さんだから……です」
◆我が子の担任×シングルファーザー/すけべmain◆
表紙イラストは[ジュエルセイバーFREE]様のフリーコンテンツを利用しています
http://www.jewel-s.jp/
冴えないおじさんが雌になっちゃうお話。
丸井まー(旧:まー)
BL
馴染みの居酒屋で冴えないおじさんが雌オチしちゃうお話。
イケメン青年×オッサン。
リクエストをくださった棗様に捧げます!
【リクエスト】冴えないおじさんリーマンの雌オチ。
楽しいリクエストをありがとうございました!
※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる