発情デバフをかけられた勇者が仲間と解呪にいそしむ話

ミツミチ

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剣士ルート

1-2

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「大丈夫か?」
 酒場の喧騒の中。背筋を正して座る男の隣に腰掛けた。散らかった机の上。空のジョッキが目に留まる。
「ユリアに飲まされたんだろ」
 当の本人は舞台の上で知らないだれかと踊っていた。剣士が顔をあげる。完全に据わった目。ともすれば睨んでいるようにもみえる鋭い視線に、勇者は小さくほほ笑み返した。顔色にこそ変化がなくわかりにくいが、この男がこれで泥酔していると知っていた。
「ほら。水」
 透明のグラスを彼の前に置く。
「無理に付き合わなくていい。いつでも宿に戻って休んでいいからな」
 剣士の目は何も答えず、まっすぐ向いたまま。執拗な視線に、後ろになにか、と振りかえると、その先には給仕の女性がいた。
「なんだ。気になるのか?」
 いたずらっぽく笑うと、剣士の眉根がゆがんだ。
「ちがう」
「いいんだぜ。ダラスだって、もっと好きに振舞って」
 イサークはやりすぎだけど、ととっくの昔にだれかと消えていった男に苦笑する。
「……すきに、振る舞う」
「そう。気になったんなら口説けばいい」
「……口説く」
 オウム返しの男に、ほんとうに大丈夫か?と心配になるも「どうすれば」と尋ねられて些か面食らう。
 口説く、といっても、
「まず、まっすぐに相手を見つめて」
 彼が口下手なことも勇者はよく知っていた。
「長く見つめても相手が目をはなさなければ、腰を引き寄せて、手の甲にキスをする。ダラスならそれだけで十分な口説き文句になるだろ」
 ガタリと剣士が立ち上がる。つられて視線を上向けると、両脇に手を掴まれて引っ張りあげられた。
「うわっ」
 足が宙に浮く。向こうの方から、何してんだと笑う声が聞こえた。高さを調整されて足裏が地に突く。どうした、と顔を上げるとバチリと目が合った。
「ダラス?」
 剣士の腕が腰元に回る。ぐいと引き寄せられて、互いの顔が近づいた。酔いに濡れた瞳に至近距離で見つめられて、不意に心臓が跳ねる。剣士はからだを前方に傾けるようにして、更にぐぐ、と近づいてきて、そして、そのまま倒れ込んだ。
「だっ──ダラス!」




 剣士の目は、あの時と同じ瞳の色をしていた。それに気づいた瞬間、ぶわっとからだが熱くなる。
「っ、っ」
「どうした」
「あ、その、ちが、」
 鼓動が早まる。顔が見てられず、壁を向いた勇者に剣士は訝しげに眉を寄せた。ダラスが?おれを?いつから?いや、それよりも、ほんとうにそうだとしたら……おれは、なんてことを。
「ちがう、ちがうんだ、おれ、知らなくて」
「……なにを」
 一寸置いて、剣士の瞳が僅かに揺らぎ「思いだしたのか」と呟いた。勇者は頷くことも、首を振ることもできなかった。
「いい」
「え?」
「なにも考えなくていい」
 勇者が二の句を発する前に、剣士は律動を開始した。滾る肉棒をギリギリまで引き抜いて、
「えっ……あ゛ッ!?」
 ずんっと一息に奥までを貫く。
「───っ、っっ~~~~♡♡」
 二人の腹の間に潰れたペニスがとぷりと精を漏らす。しかしそれを意に返さず、同じ動きが繰り返される。太い竿でみっちりと広げられた内壁を引きずる勢いで抜かれて、その衝撃が飲みこめない内から奥まで貫かれる。
「あんっ、んんんん゛……!! だっ……ダラスッ、だらす、まて、待……って、あっ♡ あぁ゛っ、ま、またイ、い、くっ、ぅ゛ッッ、ッ………!!!」
 身構える余裕も、落ちつく間もなく、激しいピストンに繰り返し強烈な快感を打ちこまれる。敏感な場所を突き上げる剛直にまた絶頂に落とされて、それでも止まらない刺激に逃げを打つように、ペニスを包む媚肉がびくびくと激しく収縮する。
「ひぅ、っ、ッ、ッぅ゛~~……! んぅ、んんん゛……♡♡」
 目蓋をかたく閉じ、奥歯を噛みしめて快感の荒波に揺さぶられる。これ以上惨めな姿を見せまいとする意思を砕くように、ばちゅんっと深く腰を打ちつけられて、濁った悲鳴が喉を駆けぬけた。
「あぁあア゛ッ……!! い゛っ……も、もう、イった、イってるっ、ダラス、待って、おかひ、っからだ、あぁあ゛っ、ああ゛ぁあ゛っ♡♡」
 これ以上の快楽は受け止めきれない。そう思うのに浅ましい媚肉はペニスにしゃぶりつくように絡み、離さまいと食いしめる。滾る肉棒に甘い快感をもたらす淫靡な動き。ぽたりと、自分を犯す男の肌から汗が滴った。
「はっ……ひ、ぁ゛っ……」
 不意に顎を持ちあげられる。濡れた瞳に見つめられて、とくん、と鼓動が高鳴った。
「だ、ダラス……んっ」
 口づけが落とされる。ちゅ、と触れるだけのキスの後、深く重ねられた。開いた唇の隙間から舌が入りこむ。熱い吐息。熱い舌にかき回されて勇者の表情が蕩けていく。咥内を塞がれたまま、肉筒を掻き回される。触れる舌の甘さとは真反対の荒々しい腰つきで、長く、太いペニスがごちゅごちゅと敏感な肉を扱き立てる。
「ふぅう゛っ♡♡ んん゛っ……ぐ、んんッー!!」
 剣士の手が勇者の後頭部に回る。肌の隙間がなくなるほどに抱きしめられて、満足な身じろぎひとつもできないまま犯される。
「ん゛っ、っ─────♡♡♡♡」
 ぐり、とカリ首に敏感なしこりを穿たれて、瞑った目蓋の裏に閃光が散った。
「っ~~~は、はぁ゛っ♡ ふぁっ、あっ、あぅ、う……っ♡」
 唇が解放されて、だらしなく開いた口端からどちらともつかない唾液が伝いおちる。焦点の合わない瞳。赤く染まった頬。
「はっ……ぁ、っは、だ、ダラス」
 きっと、心底情けない顔を晒しているだろうに。剣士は愛しさに満ちたような瞳で勇者を見つめていた。
「どういう理由であっても、お前がおれのところに来てくれて嬉しかった」
 汗で額に貼りつく前髪を指先で梳き、
「この状況を利用して悪かった。お前が言ったとおりに」
 頬を包みこむ厚い皮膚、硬い手のひらに彼を感じた。
「明日には、すべてを忘れてくれ」
 ただこの一晩だけは、と呟く声はそこで途切れて、ダラス、と勇者が剣士の名前を呼ぶ前に律動が再開した。不意に最奥でペニスが止まり、吐きだされる熱を感じた。肉体を蝕む疼きが消えていく。忌々しい呪いは解かれた。しかし彼の腕のなかにいる間、高鳴る鼓動がやむことはなかった。







 ──翌朝。
「いつまで寝てんだよ」
 ノックの音に起こされて扉をひらいた先。勇者の部屋の前には、魔導士が立っていた。
「……おはよう」
 そう、勇者の部屋の前。シーツのよれもない、なんの痕跡もない自室に一人。まさか夢かともおもったが、
「ダラスは」
 魔導士が、ん、と指差す。窓の外。一つの型をなぞるように延々と剣を振るう男の姿。
「いつからか知らないけど。少なくともおれが起きたときから、ずっとアレ」
「……イサーク。呼んできてくれないか」
「え、やだよ。なんでおれが」
 頼む、とうつむく。その奇妙さに逆に断ることにわずらわしさを覚えたのか。魔導士は剣士を呼びにいった。そのあいだに身支度を済ませ、宿の入り口に集まった仲間たちに声を掛ける。
「昨日はすまなかったな。今日からはまた長旅になるだろうから、あらためて物資を調達してから出よう」
 さあ、と一歩踏みだしたところで、あらぬところに走ったあらぬ違和感に勇者は盛大によろけた。その肩を剣士が支える。
「あ、ありがとう」
 昨日とおなじだ。自分を支えるその腕も、その恰好も、昨日となんら変わらないはずなのに。その瞬間まで二人意識して逸らしていた視線が交わされる。その瞳の奥に揺らめく熱を、見てみぬふりはできても、気づいていないふりはもうできなかった。
 その一歩後ろ。賢者は匂わせんなっつっただろ……と虚空を見つめていた。



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