月詠嗣苑

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隠れ場所

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 6月の雨がシトシトと静かに降る朝。

 コンコン…とドアを軽く叩き、いつものように……

「おはよ、ママ」

「え? あ、おはよう!」

 ドアを開けて入ろうとするママより先に、ドアから顔を出した私。

「今日は…」

「わかってるって。学校終わったら、真っ直ぐピアノの先生の処に行く日でしょ?」

 鳩が豆鉄砲でも食らったように目を見開き、口をだらしなくポカンと開けてるママを尻目に、私はスタスタと階段を降り、洗面台で朝の支度を整える。

「おはよ。珍しいな、お前がゆっくりくるなんて……」

 そう言ったのは、私のパパ。

 チラッと見ると鼻歌でも歌いそうな感じで、髭を剃っていた。

 こんな感じじゃ、ママはまだ気付いてないんだ。バカなママ。可哀想……。

 クスッ……。

「ん? なんだ。なんか、いいことでもあったのか?」


「ううん。ないよ……。さ、朝ご飯食ーべよっと!」

 危ない、危ない。バレたら、たーいへん!!


 ダイニングに向かうと、いつものように、私はトーストにハムエッグ、ホットミルク。パパは、焼き魚に納豆、お味噌汁が、ホカホカの状態で待ち構えていた。

 パパは、このご飯でないと朝から機嫌が悪くなるし、私はお米が食べられないから……。ママは、大変だろうけど。

「いただきます!」

 トーストは、いつものお気に入りのパン屋さんのパン。ここのパンは、天然酵母を使ってるとかで、時間が経っても柔らかい作り方をしていて、家族皆んなが好きなパン屋さん。

 ホットミルクにハチミツを入れて飲むのもお気に入り。

「んー、おいし! パパ、食事中に携帯だめだよ!」

 うっかり携帯を弄っていたパパは、ソッとテーブルに置き、朝ごはんを食べ始めた。ママは、パパより少ないけど同じ和食のご飯。

 食事中もだけど、普段のママは無口な感じ……。

 なんだよね。


 でも、あの時のママは……。

 派手なメイクに派手な服を着て、パパじゃないおじさんの横にいて、大きな声で笑って喋っていた。

 はぁっ。ほんと、バカな親……。

 呑気にお互い違う人と浮気してる2人。

 しかも、自分の娘に見られていたなんて、気付いてもいない。

 ほんと、バカ……。


「─るから」

「え? なに?」

 ママが、何かを言ってたけど、考えごとしてたからよく聞こえなかった。

「今日ね、パパのおばあちゃんがくるから。だから、ピアノ終わったら……」

「え?」

 うっそ!!マジ?

 どうしよ!!今日の約束……。連絡つくかな?

「ごちそうさま。行ってくる」

「あ、はい。待って……」

 ママが慌ててパパの後を追う。

 それは、どうでもいい。おばあちゃん、くるの?!

 むしろ、おばあちゃんがくることよりも、今日の約束をどうしようか?と悩んでそれどころではなかった。


「ごちそうさま……」

 さっきと違って、急に落ち込んだ態度にママはオロオロし始めた。

「大丈夫だから。行ってきます」

「そう? 雨だから、気をつけるのよ?」

「うん。わかった」

 赤いランドセルを背負い、薄いピンクの傘に同じ色のレインシューズを履いた私は、トボトボと小学校へ向かう。

 途中、何人かの友達と合流したり、いつも私を揶揄ってる男の子に追い越されたりしたけど、話なんか頭に入ってこなかった。


 学校に着いたら着いたで……。

「また、あんたは……」

 クラスメイトの小沼が、私の席でふんぞり返って、こっちを見て笑っていた。

「いいじゃん! あっためてやったんだから!」

 じゃねーし!

「汚い……」

 座ってた椅子を軽く手で払って、腰掛ける。

 小沼のバカ!きらい!

「なんだよ、ちょっとあっためてやっただけだろが! ばーか」

 あー、もぉっ!イラつく!

「なんか、杏奈ちゃんと小沼くん。よく喧嘩するよねぇ」

「カッコいいのに……」

「は? どこが……」

 アイツのどこが、カッコいいのよ!変なことばっかして……。

 1時間目、2時間目と過ぎて、やっと午前の授業が終わって、昼休み。

「じゃ、先生んとこ行ってくる」

「じゃ、これもよろしく!」

 小沼がまた……。

「はぁっ、ムカつく」

 集めたアンケートを担任の先生に渡して、私は……。


 カラカラと軽い音を立て、その引き戸は空いた。

「ね、いる?」

「いる……」

 中からは、私の彼氏が、先に来て待っていたようだった。

「遅いな……」

「だって、先生の話が…あっ」

 サワサワと登り始める彼の手が……。

「脱ぐ?」

「脱がしてくれる?」

 彼は何も言わず、私が着ていた服を全て脱がし始めた。

「可愛い…」

 あっ…

 彼の唇が、少し突き出た胸に当たるだけで、身体が熱くなる。

 チュパチュパと吸われ、空いた手が一番敏感な部分にあたる。

 クチュッとした小さな音……。

「すごいな、もう濡れてる」

 耳元で囁かれる声にまた……。

「ゆう……挿れて?」

「やだ……もう少し待って」

 んはっ……やっ……

 モゾモゾとした足に彼の足があたり……。

 触ると彼が一瞬止まって、また……。

「おねっ……がい」

 バサッと彼がズボンを下ろす音がし、私は彼を受け挿れた。

 あんっ……んっ……

 ヌチュヌチュとしたその部分……彼の激しい息遣い。

「杏奈……」

 粘膜を擦りながら繰り返し呼ばれる私の名前……。

 パチンッパチンッと肌同士がぶつかる音が……。

「杏奈ァ……」

「ゆうっ……」

 大好きな彼の身体を抱きしめ、私の中で彼のが波打つ……。

 まだ、生理きてないからいいよね?

 暫くそのままでいたら、彼が身体を離した。

 お互いなんか照れて、反対側を向きながら着替えて、時間差で資料室から出て、教室へと向かった。

「遅かったねぇ。先生にまたなんか手伝えって言われた?」

「ちょっとね……」


 カラカラカラと静まり返った廊下に乾いた音が響いた。

 何をしていたんだ?あいつらは……。

 あの声は……

「あんな、ね」

 静かに資料室を出た俺は、小さく笑ったが、5時間目のチャイムが鳴り終わり、慌てて教室へと戻った。

「本宮ーっ! お前は、また遅刻か!」

「すみませんでした! 気をつけます!」

「へ?」

 突然のことに固まる担任を背に、俺は自席へと戻る。

「先生ー、授業はー?」

 ハッとし、慌てて授業をしだす担任。

 なーんか、面白いオモチャ見つかったな。

「な、お前の知ってる可愛い女の子で、あんなって、知らん?」

 隣の奴に声を掛けると、そいつは4年から6年のあんなという名前の女を教えてくれた。

 どっちだろ?いっちょ、探してみるか。

 抵抗したら、脅せばいいし。


「じゃぁねぇ」

「また、明日ね」

 学校の帰り道、ピアノの先生の近くまで友達と帰った。

 ここで、1時間みっちり習って、自宅へ。

「ほんとは、あの教室辞めたいんだけどなぁ」

 インターフォン鳴らすと、ママより先におばあちゃんが出た。

 ママとおばあちゃんは、別に仲が悪い訳じゃないけど、おばあちゃんはママを毛嫌いしてる。裏で悪口言ってるのを何度か聞いたし、パパにも言ってるのを知っている。

 でも、あの2人浮気してるのに、なんで別れないのか私にはわからない。

 おばあちゃんは、みんなでご飯食べて、私にお小遣いくれて、パパに送られた。

 そんな嫌いなら、言えばいいのに、と私は、部屋中に除菌スプレーしまくってるママを見て思う。

「お風呂入ったら、寝るからー。おやすみー」

「はーい。おやすみなさい」

 ママもパパもバカだ。大バカだ。

 自慢の娘が、もう処女じゃなく、男を咥えてるだなんて知らない。

「ほんと、ばーか」


「宇崎杏奈、ね。ふーん。可愛いじゃん」

 連れの連絡で、昼間資料室でヤッてた女がわかった。

「な、コイツどうよ」

 塾の授業が終わって、連れと帰り支度を始めた俺は、ソイツに声をかけてみた。

「可愛いけど、大丈夫か? 身体小さくね?」

「大丈夫だ。コイツは、非だ」

 ソイツの背中を軽く叩いて、いつものメンバーに声を掛けてみた。
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