月詠嗣苑

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少女が消えた日③

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「おかしいわよ! やっぱり!」

「うるさい! 俺は、会社に行ってくる」

 たった1日?2日?

 ピアノ教室の日は、金曜日だったから、もう3日?

「杏奈ちゃん……」

 テレビドラマとか実際に起こった誘拐事件でも、その日の内に犯人側から、金銭についての連絡はあった筈なのに。

 どういう事か、その電話は一向になく、義母はとうとう体調を崩し寝込んでしまった。義父が迎えにきて、帰って行ったが……。

「何故? どうして?」

 彼は、俺には関係ないから!と冷たく言い放って私の元を去って行った。

「杏奈ちゃん……」

 明日には、学校が始まる。最初は、病欠でいいとしても……。

 お金……。

 もし、それが一千万だとしたら、なんとか夫の会社の株を売ったり、生命保険を解約したとしてもなんとか間に合うが。その金額が、それ以上だったら?家を打っても足らなかったらどうしよう。


「おい、どうした?」

「あ? なんでもない」

 変だな。全然あの杏奈って子と連絡つかねえな。バレたのか?

 俺は、上から降る雨を睨んだ。


「ねぇ、お兄ちゃん!! 聞いてる?」

「へ? なに? なんか言った?」

「パパがね、この夏にオランダから帰ってくるから、みんなで夏休みにバーベキューしようって! ママがパパに言ってくれたの! って言ったの!!」

 花梨の宿題を見てやると言ったのに、頭の中は、杏奈の事でいっぱいだった。

「おかしい」

「またー?」

「あ、ちがっ! あ、ほんとにおかしい」

「どっちなん!! ママー、お兄ちゃんバカになったー!」

 花梨は、プンプン怒って母さんの元へ。

「わかんねーなー。俺、なんか嫌われる事でもしたかな?」

 とない頭で考えてみたものの、サッパリわからなかった。

 もしかして、俺とのセ○クスが嫌になったんだろうか?


「ふふ、起きたね。杏奈……」

 もう疲れたよ…先生。

 目は開いたものの、起き上がる気力もなく、私は先生に抱き上げられ、また薄暗い部屋のテーブルについた。

 ここには、テレビもラジオもなかった。

 小さな棚の上に置かれた置き時計だけが、冷たく時間を回っていたが、朝なのか?昼なのか?夜なのか?わからない。

「今日は……何日?」

「知らなくてもいいよ。さ、食べなさい」

 そう言われても、手は手錠で繋がれたままだし、スプーンすら持ち上げる力もなかった。

「お水…下さい」

 持たされた水の入った冷たいコップですら、うまく持つ事ができず、床に落としてしまい、また頬を叩かれた。

 もういや。死にたい……。

「さぁ、お飲み……」

 コップではなかったが、先生はうまく水を飲ませてくれた。

「杏奈は、コパンのスペルクが好きだったよね? さ、これを飲んで。後で、聴かせてあげよう」

 好きな曲…どうでもいい。

 ここから、出たい。

 先生は、ずっとこの部屋にいる訳ではないが、時々、部屋を短い時間に出る事がある。

「ベッドに行こうか、杏奈……」

 ベッドに横たわるとまた手錠が、ベッドの柵に繋がった。

「あの……。先生、トイレ……」

「ん? いいよ、そのまましても。オムツしてるでしょ?」

 それは、そうだが……。モソモソしていて、なんとも気持ちが悪い。

 でも、また我慢の限界に達して……。

 ほんわかと温かく感じるお尻とお股が……。

「替えて…ください」

「いいよ。ただ、ジッとしてるんだよ?」

 先生は、そういうとニコニコして、私が付けている紙オムツを剥がし始め……。

「ほら、気持ちいいだろ?」

 少し熱めのお湯が、ボトルから私のアソコへ。

 うっ……。

「ほら、ダメだよ。暴れちゃ。気持ちよくしてあげるからね」

「……。」

 先生?何をしてるの?

 綺麗に拭かれたその部分に、先生の舌がネチョネチョとあたる。

「もっと気持ちよくしてあげるからね」

 先生は、手にしたピルケースから何かを取り出し……。

「さぁ、ゆっくり数を数えて? いーち、にーい、さーん……」

 っ!!

 まただ、いや!身体が、熱い……。

「先生? 熱い……」

 あぁっ!!

 手錠に繋がれてるのに、私の中の私が……。

「さぁ、杏奈。どうしてほしい? 言ってごらん?」

 その部分が、やたら熱くてムズムズして……

 あっ!!触られる度に腰が浮く。

「凄いね、杏奈。もうこんなトロトロだよ……」

 先生は、裸になって私の上にきた。

「愛してる。僕の可愛い天使……」

 んあっ…んっ…んっ…

 先生の舌先が……

 あっ…

 気持ちいい……

「もっと…んんっ…」

 んぅっ!!

 身体を拗らせるも、戻されてしまう。

「気持ちいいんだね、杏奈」

 クチュクチュとした音や先生の息遣いが、耳に届く。

 ズンッ……

 先生のが、私の中に入ると腰が浮く。

「可愛いよ、杏奈。ほら、僕の為に啼いて……」

 腰を打ち付けられる度に、私の口から変な声が漏れ出し、先生が喜ぶ。

 もう何度、こんなことをされてるのだろうか?嫌なのに……抵抗出来ない私がいる。

「杏奈……」

 あっ…んっ…んっ…

「先生……」

 激しく腰を打ち付けられ、痛いのに……。

「可愛いよ。もっと……」

 はっ…あっ…あっ…

「愛してる……」

 んあっ…ひっ…んっ…

 ガチャガチャと手錠が鳴り、

 んんぅっ!!!

 よくわからないが、ビビビッと身体中痺れた感じになった。

「可愛い…。さっ、オムツしようね」

 荒げた息遣いの先生は、そう言って汚れたその部分を拭き、また私に紙オムツを当てた。

「さ、僕はこれから仕事があるから、これを飲んで?」

 無理矢理、口にまた錠剤を入れられ、口移しで水を飲まされた。

 身体が…重い…。

「しぇん……」


 トゥルルルと電話が鳴り思わず、

「杏奈?!」と叫んでしまったが、電話は、ピアノの神崎先生からだった。

「今週いっぱいお休み、ですか? あ、はい。わかりました。杏奈にも、そう言っておきます。お大事に…」

 あ、そっか。今日は、日曜日だったわね。明日は、月曜日か。学校、うまく話せるかしら?

「こんな時に……」

 いくら、仕事だとしても、この家の一大事に……。


「え? 何? どう言うこと?」

「実はな……」

 金曜日の夜から、杏奈が帰ってきていないことを、俺の目の前で赤ん坊に乳をやってる美嘉に話した。

 美嘉とは、俺の浮気相手ではあるが、まだ20歳の大学生だ。子供は、保育園に預けて、昼間は大学へ通っていた。

 元々、短大の就活で俺の会社へ来たのが始まりだった。

「じゃ、こんなとこにいちゃだめじゃん?」

「けどな、アイツの暗い顔をずっと見てるとな……。なぁ、美嘉」

「うん?」

「もしも、だよ? もしも、杏奈が殺されて、俺とアイツが離婚ってなったら、お前俺と再婚してくれるか? 今まで出来なかった認知もしてやれるし」

「えーっ? んー? いいよ? 私、智くんのこと好きだし! じゃ、今よりもっといい生活出来るの?」

「出来るさ」

 もう少し長くいたかったが、隆弘が泣き始めたし、会社にも戻らないといけなくなった。

「じゃ、また連絡するよ」

「うん。待ってる! 今度は、外で会おうね!」

 チュッ……

 小さなアパートの小さな部屋ではあるが、俺にとっては安らぎの場所でもあった。

「っと……」

「あ、すんません」

 曲がり角で、1人の青年とぶつかりそうになったが、悪いのはこっちなのに、ペコリと頭を下げた。

 さて、社に戻るとしても、夜は……。

 携帯を見て、ちょうど取引先から電話が入ったので、慌てて出た。


 コンコン……コンコン……

「はーい! 待っててぇ」

 寝た子供が起きないように、慌てて玄関を開けた。

「大丈夫? これ、今日のノート。隆弘は?」

「しーよ。今さっき、眠ったところだからね。入って……」

 寝た子供が起きないように、玄関を静かに閉める。

「ねね、ちょっと聞いて欲しい事があってね。これ、内緒だからね……」

「あ、うん?」
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