10 / 81
9. 意外な才能
しおりを挟む
「うん、上手くできてるな。アンタ意外と魔法の才能あるんじゃないか?」
いつものように古屋敷に尋ねてきたユリアンナを見て、オズワルドが褒める。
ユリアンナがオズワルドから初めて習った魔法が〝認識阻害〟の魔法であった。
これはその名の通り、術者を他者が認識しづらくなる魔法だ。
ユリアンナの魔法を習得する目的は『身を守ること』なので、手っ取り早く危険を回避できる術としてオズワルドが選んだ魔法だ。
ユリアンナはオズワルドに習った魔法を繰り返し家で練習して、今日古屋敷に訪問する道中で認識阻害の魔法をかけてきたのだ。
「あら。折角かけてきたのに、オズワルド様にはすぐバレてしまうのですね」
「修練を積んだ魔術師を欺くほどの認識阻害は高度だからな。アンタに教えたのは道ゆく人を欺ける程度の魔法だ」
(それでも、教えてすぐに実践できる奴は多くはないけどな)
オズワルドは内心、ユリアンナを見直していた。
王家の計らいで宮廷魔術師長直々に魔法の指導を受けている関係で、数多くの魔術師を目にしているオズワルドだが、ユリアンナはその中でも特に魔法習得のスピードが速いように思われた。
それに、ユリアンナは努力できる人間のようだ。
貴族界では『シルベスカ家のユリアンナ嬢は無能で愚かな悪女』との認識だが、噂は当てにならないものだと改めて思う。
「確かに、市井で生きていくにはその程度で十分ですわね。それで、今日は一体どんな魔法を教えていただけるのかしら?」
ユリアンナは認識阻害の程度に文句を言うこともなく、ワクワクしたような輝く瞳でオズワルドを見上げる。
今までオズワルドの瞳をこんなにも真っ直ぐ見つめる者などいなかったため、オズワルドは戸惑ってつい視線を泳がせてしまう。
「っ…………今日は防御術を教えようと……思う」
消え入りそうな声でそう言うと、オズワルドは照れくさそうにポリポリ頰を掻いた。
◇
オズワルドが言ったようにユリアンナは魔法の才があったらしく、どんどん新しい魔法を覚えた。
前世を思い出す前のユリアンナも同様に魔法の才があったのだろうが、優秀な兄と比べられ蔑まれた経験がユリアンナを学ぶことから遠ざけてしまった。
今のユリアンナはたまたま前世の記憶がきっかけで再び魔法を学ぶ気になったが、ゲームのユリアンナはそのきっかけもないままに学園に行き、〝無能で愚かな悪役令嬢〟になってしまったのだろう。
訓練を始めて半年を過ぎる頃には一通りの身を守る魔法の習得を終え、実戦形式の訓練を始めた。
「はっ……!そんな攻撃は食らわないわよっ!」
ユリアンナはオズワルドの右手から発された炎の球を両手を翳して作った魔法盾で防ぐ。
同時に踏ん張った右足で地面を蹴って体勢を立て直すと、すぐに詠唱をしてオズワルドに向けて雷撃を放つ。
オズワルドが跳躍して避けると雷撃は地面に直撃し、大きく土埃を上げユリアンナの視界を遮る。
(……!オズがいないわ……!)
土埃の隙間からオズワルドの姿を探すが、オズワルドは忽然と姿を消してしまう。
ユリアンナがオズワルドの姿を探しているうちに、首元に冷んやりした金属が触れる。
「チェックメイト。俺の勝ちだ」
姿を消したオズワルドは音もなくユリアンナの背後に回り、その首元に模造刀を突きつけていた。
「………参りました」
ユリアンナは両手を上げて膝をつくと、フーッと肩で大きく息をした。
この半年欠かさず続けてきたトレーニングのおかげで、体力もだいぶついてきた。
しかし相対するオズワルドは息一つ乱さず、汗一つかいていない。
ユリアンナと比べると大人と赤ん坊ほどの実力差に感じる。
「反応速度も速くなって来たんじゃないか?魔術師としてはまだまだだけど、悪漢から身を守るぐらいはできそうだ」
オズワルドが満足そうに口角を上げると、ユリアンナも息を切らしながらその勝気に見える眦を下げる。
「……オズの呼吸ひとつ乱せないなんて全然ダメね」
「俺は師匠の下で10年訓練してるんだ。ユリはまだ半年だろ?大したもんだよ」
魔法を通して打ち解けてきた2人はお互いを「オズ」「ユリ」と呼び合う仲になった。
「最年少魔剣士様に褒められたら調子に乗ってしまうわ」
ユリアンナの軽口にオズワルドは声を上げて笑う。
魔剣士とは、高い魔法と剣術の腕を持つ者に対して王家から与えられる称号で、特別な試験を通過した者のみに与えられる。
魔法のみ、剣術のみを極めようとする者は多くいるが、どちらも高いレベルで習得できる者は稀である。
ゲームでのオズワルドに『魔剣士』という設定はなかった気がするが、ユリアンナが関わったことで設定が変わってしまったのかもしれない。
とにかく、オズワルドはユリアンナと出会ってから剣の訓練を本格的に始め、たったの半年で史上最年少の魔剣士となったのである。
いつものように古屋敷に尋ねてきたユリアンナを見て、オズワルドが褒める。
ユリアンナがオズワルドから初めて習った魔法が〝認識阻害〟の魔法であった。
これはその名の通り、術者を他者が認識しづらくなる魔法だ。
ユリアンナの魔法を習得する目的は『身を守ること』なので、手っ取り早く危険を回避できる術としてオズワルドが選んだ魔法だ。
ユリアンナはオズワルドに習った魔法を繰り返し家で練習して、今日古屋敷に訪問する道中で認識阻害の魔法をかけてきたのだ。
「あら。折角かけてきたのに、オズワルド様にはすぐバレてしまうのですね」
「修練を積んだ魔術師を欺くほどの認識阻害は高度だからな。アンタに教えたのは道ゆく人を欺ける程度の魔法だ」
(それでも、教えてすぐに実践できる奴は多くはないけどな)
オズワルドは内心、ユリアンナを見直していた。
王家の計らいで宮廷魔術師長直々に魔法の指導を受けている関係で、数多くの魔術師を目にしているオズワルドだが、ユリアンナはその中でも特に魔法習得のスピードが速いように思われた。
それに、ユリアンナは努力できる人間のようだ。
貴族界では『シルベスカ家のユリアンナ嬢は無能で愚かな悪女』との認識だが、噂は当てにならないものだと改めて思う。
「確かに、市井で生きていくにはその程度で十分ですわね。それで、今日は一体どんな魔法を教えていただけるのかしら?」
ユリアンナは認識阻害の程度に文句を言うこともなく、ワクワクしたような輝く瞳でオズワルドを見上げる。
今までオズワルドの瞳をこんなにも真っ直ぐ見つめる者などいなかったため、オズワルドは戸惑ってつい視線を泳がせてしまう。
「っ…………今日は防御術を教えようと……思う」
消え入りそうな声でそう言うと、オズワルドは照れくさそうにポリポリ頰を掻いた。
◇
オズワルドが言ったようにユリアンナは魔法の才があったらしく、どんどん新しい魔法を覚えた。
前世を思い出す前のユリアンナも同様に魔法の才があったのだろうが、優秀な兄と比べられ蔑まれた経験がユリアンナを学ぶことから遠ざけてしまった。
今のユリアンナはたまたま前世の記憶がきっかけで再び魔法を学ぶ気になったが、ゲームのユリアンナはそのきっかけもないままに学園に行き、〝無能で愚かな悪役令嬢〟になってしまったのだろう。
訓練を始めて半年を過ぎる頃には一通りの身を守る魔法の習得を終え、実戦形式の訓練を始めた。
「はっ……!そんな攻撃は食らわないわよっ!」
ユリアンナはオズワルドの右手から発された炎の球を両手を翳して作った魔法盾で防ぐ。
同時に踏ん張った右足で地面を蹴って体勢を立て直すと、すぐに詠唱をしてオズワルドに向けて雷撃を放つ。
オズワルドが跳躍して避けると雷撃は地面に直撃し、大きく土埃を上げユリアンナの視界を遮る。
(……!オズがいないわ……!)
土埃の隙間からオズワルドの姿を探すが、オズワルドは忽然と姿を消してしまう。
ユリアンナがオズワルドの姿を探しているうちに、首元に冷んやりした金属が触れる。
「チェックメイト。俺の勝ちだ」
姿を消したオズワルドは音もなくユリアンナの背後に回り、その首元に模造刀を突きつけていた。
「………参りました」
ユリアンナは両手を上げて膝をつくと、フーッと肩で大きく息をした。
この半年欠かさず続けてきたトレーニングのおかげで、体力もだいぶついてきた。
しかし相対するオズワルドは息一つ乱さず、汗一つかいていない。
ユリアンナと比べると大人と赤ん坊ほどの実力差に感じる。
「反応速度も速くなって来たんじゃないか?魔術師としてはまだまだだけど、悪漢から身を守るぐらいはできそうだ」
オズワルドが満足そうに口角を上げると、ユリアンナも息を切らしながらその勝気に見える眦を下げる。
「……オズの呼吸ひとつ乱せないなんて全然ダメね」
「俺は師匠の下で10年訓練してるんだ。ユリはまだ半年だろ?大したもんだよ」
魔法を通して打ち解けてきた2人はお互いを「オズ」「ユリ」と呼び合う仲になった。
「最年少魔剣士様に褒められたら調子に乗ってしまうわ」
ユリアンナの軽口にオズワルドは声を上げて笑う。
魔剣士とは、高い魔法と剣術の腕を持つ者に対して王家から与えられる称号で、特別な試験を通過した者のみに与えられる。
魔法のみ、剣術のみを極めようとする者は多くいるが、どちらも高いレベルで習得できる者は稀である。
ゲームでのオズワルドに『魔剣士』という設定はなかった気がするが、ユリアンナが関わったことで設定が変わってしまったのかもしれない。
とにかく、オズワルドはユリアンナと出会ってから剣の訓練を本格的に始め、たったの半年で史上最年少の魔剣士となったのである。
21
あなたにおすすめの小説
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
乙女ゲームに転生したので、推しの悲恋EDを回避します〜愛され令嬢は逆ハーはお断りです!
神城葵
恋愛
気づいたら、やり込んだ乙女ゲームのサブキャラに転生していました。
体調不良を治そうとしてくれた神様の手違いだそうです。迷惑です。
でも、スチル一枚のサブキャラのまま終わりたくないので、最萌えだった神竜王を攻略させていただきます。
※ヒロインは親友に溺愛されます。GLではないですが、お嫌いな方はご注意下さい。
※完結しました。ありがとうございました!
※改題しましたが、改稿はしていません。誤字は気づいたら直します。
表紙イラストはのの様に依頼しました。
❲完結❳乙女ゲームの世界に憑依しました! ~死ぬ運命の悪女はゲーム開始前から逆ハールートに突入しました~
四つ葉菫
恋愛
橘花蓮は、乙女ゲーム『煌めきのレイマリート学園物語』の悪役令嬢カレン・ドロノアに憑依してしまった。カレン・ドロノアは他のライバル令嬢を操って、ヒロインを貶める悪役中の悪役!
「婚約者のイリアスから殺されないように頑張ってるだけなのに、なんでみんな、次々と告白してくるのよ!?」
これはそんな頭を抱えるカレンの学園物語。
おまけに他のライバル令嬢から命を狙われる始末ときた。
ヒロインはどこいった!?
私、無事、学園を卒業できるの?!
恋愛と命の危険にハラハラドキドキするカレンをお楽しみください。
乙女ゲームの世界がもとなので、恋愛が軸になってます。ストーリー性より恋愛重視です! バトル一部あります。ついでに魔法も最後にちょっと出てきます。
裏の副題は「当て馬(♂)にも愛を!!」です。
2023年2月11日バレンタイン特別企画番外編アップしました。
2024年3月21日番外編アップしました。
***************
この小説はハーレム系です。
ゲームの世界に入り込んだように楽しく読んでもらえたら幸いです。
お好きな攻略対象者を見つけてください(^^)
*****************
その破滅エンド、ボツにします!~転生ヒロインはやり直し令嬢をハッピーエンドにしたい~
福留しゅん
恋愛
自分がシナリオを書いた乙女ゲームの世界に転生したメインヒロインはゲーム開始直後に前世を思い出す。一方の悪役令嬢は何度も断罪と破滅を繰り返しては人生をやり直していた。そうして創造主の知識を持つヒロインと強くてニューゲームな悪役令嬢の奇妙な交友が始まる――。
※小説家になろう様にも投稿しています。
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
【完結】転生者のお姉様は自分を悪役令嬢と言い張るのですが…どう考えても悪役は私です
白キツネ
恋愛
主人公、アリシアにとって、母とたまに帰ってくる父の三人での生活は裕福ではないが、それだけで十分なほど幸せに感じていた。
が、ある日、父が帰ってきた時の一言に、それに対する母の反応に、アリシアは自分が大好きだった両親が別人に見えてしまう。
父に連れられた家は市民が暮らすような家ではなく、貴族の屋敷であり、そこにはアリシアと同年代ぐらいの少女がこちらをずっと見ていた。
その少女は転生者であり、この世界での自分がどうなってしまうのかを話される。自分の名前を当てられたことで、その話を信じるが、その内容はとてもひどいものだった。
お姉様…それは私の方が悪役なのでは…
私はお姉様の敵にはなりません。私がお姉様に全てをお返しします!
お姉様!もう少し自分のことを大切にしてください!
お姉様!今ですか!?
お姉様!そういうことはもっと早く言ってください!
賢いのに少し空気が読めない姉と、翻弄されながらも姉を守ろうとする妹の物語
カクヨムにも掲載しております。
婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました
宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。
しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。
断罪まであと一年と少し。
だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。
と意気込んだはいいけど
あれ?
婚約者様の様子がおかしいのだけど…
※ 4/26
内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。
【完】チェンジリングなヒロインゲーム ~よくある悪役令嬢に転生したお話~
えとう蜜夏
恋愛
私は気がついてしまった……。ここがとある乙女ゲームの世界に似ていて、私がヒロインとライバル的な立場の侯爵令嬢だったことに。その上、ヒロインと取り違えられていたことが判明し、最終的には侯爵家を放逐されて元の家に戻される。但し、ヒロインの家は商業ギルドの元締めで新興であるけど大富豪なので、とりあえず私としては目指せ、放逐エンド! ……貴族より成金うはうはエンドだもんね。
(他サイトにも掲載しております。表示素材は忠藤いずる:三日月アルペジオ様より)
Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.
ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる