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37. ミリカ・ローウェン暗殺未遂事件②
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その日、ユリアンナとミリカはとある場所を訪れていた。
それは王都の外れにある孤児院。
今日は学園の慈善活動の一環で、生徒たちは自分で選んだ活動場所で奉仕作業を行う日だ。
他の生徒たちはもっと楽な奉仕場所を選ぶが、心優しく子供好きなミリカは最も大変だと言われる孤児院での慈善活動を選んだ。
………というのは、ゲームでの設定。
その設定に倣って、ミリカはこの孤児院を活動場所に選んだ。
本来ならばこの場にユリアンナはいない。
が、「一人で孤児院行くのはヤダ!」というミリカの一言で、ユリアンナもこの孤児院に来ることになった。
ちなみに〝認識阻害〟魔法をかけているため、ここにユリアンナがいることを周囲の人は認識していない。
孤児院には100名ほどの子供がいるのだが、この奉仕活動では孤児院の掃除洗濯炊事の手伝いや子供たちと一緒に遊んであげたりしなければならない。
体力的にキツい現場なので、人気がないのだ。
とある目的のために気もそぞろなミリカの代わりにあくせく働くユリアンナ。
「ミリー!こっちだよ、早く早く~!」
子供たちに手を引かれ、ユリアンナは大きな木の下にドレスが汚れるのも構わずに腰を下ろす。
今日はユリアンナはここに来ていないことになっているため、子供たちには「ミリー」と呼ばせている。
後から確認された時に、子供たちと遊んでいたのはミリカだったと思わせるためだ。
当のミリカはというと、〝新たな攻略対象者〟と登場を今か今かと待っている。
「あっ……来たっ!」
孤児院の入り口の様子を窺っていたミリカは、ある人物の姿を視界に入れるや否や、丸いボールを抱えて走り出した。
ユリアンナはそれを横目で見ながら、木の下で子供たちに絵本を読んで聞かせている。
「あら。今日も来てくれたのね、ルキエル」
孤児院の院長は来訪者を温かい笑顔で迎える。
「ああ。みんな変わりはないか?」
「おかげさまで、みんな元気いっぱいよ。ルキエルはどうなの?お仕事頑張っている?」
久々に向けられる母親のような心配に、ルキエルは少し照れくさそうに顔を背けた。
その時、どこからともなく丸いボールがコロコロと2人の足元に転がってくる。
「ああ~っ!こっちに投げちゃダメって言ったのに!………すみません、お邪魔して」
そのボールを追いかけて走ってきたのはミリカだ。
ミリカは急いでボールを拾うと、驚いて自分を見下ろしている2人の視線に気づかないようにペコリとお辞儀をして、クルッと踵を返して走って行った。
「………あれは?」
ミリカの背中を見送った後、ルキエルは院長に問いかける。
「ああ。ゴールドローズ学園の生徒さんよ。名前はミリカ・ローウェン嬢。わざわざこんな辺鄙な孤児院に奉仕活動に来てくれるなんて、奇特なお嬢様よね」
ミリカの後ろ姿を見つめながら、院長は優しく目を細める。
「ミリカ・ローウェン………」
ルキエルはミリカの名を呟きながら、その背が見えなくなるまで見送った。
こうして、ミリカは《イケパー》のシーズンイベントの攻略対象者『ルキエル』との出会いを果たした。
『ミリカ・ローウェン暗殺未遂事件』を成功させるためにも、ミリカにはルキエルを攻略してもらわなければならない。
それこそが、ユリアンナが思いついた作戦なのだから。
◇
ルキエルは生まれてすぐに親から捨てられ、この孤児院で育った。
孤児院は非常に貧しく子供にとってはとても良い生育環境とは言えないが、院長は愛情をもって子供たちを育てている。
そしてルキエルも院長にたっぷり愛情をもらって育った。
13歳になったルキエルは国の規定により孤児院から出て一人で生きていくことになった。
しかし身寄りのない13歳の子供を雇ってくれるところは少ない。
孤児院から出てしばらくはスリや万引きをして食い繋ぐ日々。
そんなある日、露店で食べ物をくすねて逃げたところを怪しい男に捕まってしまう。
「お前、なかなか良い盗みの腕を持っているな。俺の前でなければ失敗しなかったはずだ」
男はそう言って、ルキエルに選択肢を与えた。
「俺の下で働くなら今日のことは不問にしよう。それを拒否するならすぐに騎士団に突き出す。さあ、どうする?」
そう迫られたルキエルは、男の下で働くことを選ぶ。
男の名はガリバー・ウィンター。
王都の闇社会を牛耳る人物だった。
ガリバーに引き取られたルキエルは、特殊な訓練を受けて特別な才能を開花させる。
───それは『暗殺』の才能であった。
その後ルキエルは様々な依頼を遂行していくうちに、腕利きの暗殺者として裏社会で名を馳せていくことになる。
《イケパー》シーズンイベントの中で、ルキエルは自分が育った孤児院でミリカと出会い、生まれて初めて恋愛感情を抱く。
他のルートと同じく2人の間に起こる様々なイベントを乗り越えて好感度を上げ、最終イベントである聖夜の夜にルキエルから告白を受ければ攻略完了となる。
ユリアンナは、このルキエルの身の上と《イケパー》内で起こるイベントを利用して、『ミリカ・ローウェン暗殺未遂事件』を起こす計画を立てたのであった。
それは王都の外れにある孤児院。
今日は学園の慈善活動の一環で、生徒たちは自分で選んだ活動場所で奉仕作業を行う日だ。
他の生徒たちはもっと楽な奉仕場所を選ぶが、心優しく子供好きなミリカは最も大変だと言われる孤児院での慈善活動を選んだ。
………というのは、ゲームでの設定。
その設定に倣って、ミリカはこの孤児院を活動場所に選んだ。
本来ならばこの場にユリアンナはいない。
が、「一人で孤児院行くのはヤダ!」というミリカの一言で、ユリアンナもこの孤児院に来ることになった。
ちなみに〝認識阻害〟魔法をかけているため、ここにユリアンナがいることを周囲の人は認識していない。
孤児院には100名ほどの子供がいるのだが、この奉仕活動では孤児院の掃除洗濯炊事の手伝いや子供たちと一緒に遊んであげたりしなければならない。
体力的にキツい現場なので、人気がないのだ。
とある目的のために気もそぞろなミリカの代わりにあくせく働くユリアンナ。
「ミリー!こっちだよ、早く早く~!」
子供たちに手を引かれ、ユリアンナは大きな木の下にドレスが汚れるのも構わずに腰を下ろす。
今日はユリアンナはここに来ていないことになっているため、子供たちには「ミリー」と呼ばせている。
後から確認された時に、子供たちと遊んでいたのはミリカだったと思わせるためだ。
当のミリカはというと、〝新たな攻略対象者〟と登場を今か今かと待っている。
「あっ……来たっ!」
孤児院の入り口の様子を窺っていたミリカは、ある人物の姿を視界に入れるや否や、丸いボールを抱えて走り出した。
ユリアンナはそれを横目で見ながら、木の下で子供たちに絵本を読んで聞かせている。
「あら。今日も来てくれたのね、ルキエル」
孤児院の院長は来訪者を温かい笑顔で迎える。
「ああ。みんな変わりはないか?」
「おかげさまで、みんな元気いっぱいよ。ルキエルはどうなの?お仕事頑張っている?」
久々に向けられる母親のような心配に、ルキエルは少し照れくさそうに顔を背けた。
その時、どこからともなく丸いボールがコロコロと2人の足元に転がってくる。
「ああ~っ!こっちに投げちゃダメって言ったのに!………すみません、お邪魔して」
そのボールを追いかけて走ってきたのはミリカだ。
ミリカは急いでボールを拾うと、驚いて自分を見下ろしている2人の視線に気づかないようにペコリとお辞儀をして、クルッと踵を返して走って行った。
「………あれは?」
ミリカの背中を見送った後、ルキエルは院長に問いかける。
「ああ。ゴールドローズ学園の生徒さんよ。名前はミリカ・ローウェン嬢。わざわざこんな辺鄙な孤児院に奉仕活動に来てくれるなんて、奇特なお嬢様よね」
ミリカの後ろ姿を見つめながら、院長は優しく目を細める。
「ミリカ・ローウェン………」
ルキエルはミリカの名を呟きながら、その背が見えなくなるまで見送った。
こうして、ミリカは《イケパー》のシーズンイベントの攻略対象者『ルキエル』との出会いを果たした。
『ミリカ・ローウェン暗殺未遂事件』を成功させるためにも、ミリカにはルキエルを攻略してもらわなければならない。
それこそが、ユリアンナが思いついた作戦なのだから。
◇
ルキエルは生まれてすぐに親から捨てられ、この孤児院で育った。
孤児院は非常に貧しく子供にとってはとても良い生育環境とは言えないが、院長は愛情をもって子供たちを育てている。
そしてルキエルも院長にたっぷり愛情をもらって育った。
13歳になったルキエルは国の規定により孤児院から出て一人で生きていくことになった。
しかし身寄りのない13歳の子供を雇ってくれるところは少ない。
孤児院から出てしばらくはスリや万引きをして食い繋ぐ日々。
そんなある日、露店で食べ物をくすねて逃げたところを怪しい男に捕まってしまう。
「お前、なかなか良い盗みの腕を持っているな。俺の前でなければ失敗しなかったはずだ」
男はそう言って、ルキエルに選択肢を与えた。
「俺の下で働くなら今日のことは不問にしよう。それを拒否するならすぐに騎士団に突き出す。さあ、どうする?」
そう迫られたルキエルは、男の下で働くことを選ぶ。
男の名はガリバー・ウィンター。
王都の闇社会を牛耳る人物だった。
ガリバーに引き取られたルキエルは、特殊な訓練を受けて特別な才能を開花させる。
───それは『暗殺』の才能であった。
その後ルキエルは様々な依頼を遂行していくうちに、腕利きの暗殺者として裏社会で名を馳せていくことになる。
《イケパー》シーズンイベントの中で、ルキエルは自分が育った孤児院でミリカと出会い、生まれて初めて恋愛感情を抱く。
他のルートと同じく2人の間に起こる様々なイベントを乗り越えて好感度を上げ、最終イベントである聖夜の夜にルキエルから告白を受ければ攻略完了となる。
ユリアンナは、このルキエルの身の上と《イケパー》内で起こるイベントを利用して、『ミリカ・ローウェン暗殺未遂事件』を起こす計画を立てたのであった。
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